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レベル0の雷帝  作者: ゆき
アステリア魔法学校

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12/30

11 魔族の足音

「ねぇ、ベルフェゴール、学校ものすごく行きたくないんだけど」

「今までちゃんと行ってたじゃないですか」


「雷帝だってバレてから、めちゃくちゃ気まずいんだよ。先生もどこかよそよそしいしさ」


 ダナフォルトがソファーで伸びをしながら、ベルフェゴールを見上げる。


「クククク、見てましたよ。面白かったですねぇ。100年前は英雄だったのに、退学嘆願書を出されるとは・・・爆笑してしまいました。この短時間であれだけの署名を集める生徒たちもすごいですね」


「笑いすぎだろ」


「これだから人間と関わるのは止められないんですよね。特に子供は大人の影響を受けやすく、純粋で可愛らしいですねぇ」

 

 ベルフェゴールが楽しそうにテーブルを拭いていた。


「ガキと過ごすのは面倒なんだよな」


「ご安心を。ダナフォルト様が退学できないように手を回しておりますので」

「だろうと思った。最悪だ・・・」


 ベルフェゴールが笑いながら、テーブルにハーブティーを置いた。

 ダナフォルトが体を起こして、カップに口をつける。


「・・・でも、お前がアステリア魔法学校に拘るのは何か理由があるんだろ?」


「ダナフォルト様のさらなる成長を祈ってのことですよ。ダナフォルト様は多くの人々と関わってこそ、英雄としての輝きが増すのですよ。私は、ダナフォルト様の光を見たいのです」


「ったく・・・話を逸らすのが上手いよな」


「悪魔ですから」

 ダナフォルトが体を起こして、ハーブティーに口をつける。


「あ、弟子を取ったようじゃないですか。あれだけ、頑なに弟子を取ることを拒絶していたのに、意外でしたね。そもそも、心臓が止まっていることを確認したんじゃないんですか?」


「俺の召喚獣を全部倒した。あいつアンデッドなんだよ」


「なんと!」

 ベルフェゴールが大げさに驚いた。


「全部、見てたくせに。いちいちリアクションするなって」

「一応驚いてみました。プライバシーは大事なので」


「聞いた限りでは、3回死んだらしい。でも、勝ったんだ。弟子として認めざるを得ないだろ」


 ダナフォルトが、ベルフェゴールが作ったチーズケーキをナイフとフォークで切る。


「ん、これ美味しいな」

「ダナフォルト様の好きなブルーベリーを使用しております」


「・・・・なぁ、あいつってフォルティナなのか?」


 ベルフェゴールの動きが一瞬止まった。

 ダナフォルトがちらっとベルフェゴールを見る。


「さぁ、どうでしょうね?」


「・・・さすがに、それは無いか。フォルティナは・・・・まぁ、3回も死ぬような奴じゃないしな」


 自分に言い聞かせるようにして、背もたれに寄りかかった。



 トントン


「あ、あの・・・ダナフォルト様。お休みのところ失礼します」


 ドアの向こうから、戸惑うようなミュゼリアの声がした。


「どうした? 入れ」


「失礼しま・・・」

「失礼します。師匠様」

 ミュゼリアがドアを開けると、大きなトランクを持ったリハーナが入ってきた。


「すごい・・・本がたくさん。古い魔導書もたくさんあるのですね。さすが師匠様のお部屋です。こちらは魔道具ですね。ご自身で錬金されたのでしょうか」

 リハーナが部屋の中をぐるっと見渡していた。


「ごほっ・・・」

 ダナフォルトが咽そうになってハーブティーを飲み干す。


「なんで屋敷に入ってきてるんだよ」

「弟子は常に師匠様と一緒に居なくてはいけないと思いまして、ここに住まわせていただきたいと思っております。もちろん、家事も一通りできますので、お手伝いいたします」


 リハーナが満面の笑みで話す。


「ダナフォルト様、彼女がダナフォルト様の弟子になったというのは本当なのですか?」

 ベアルリアがミュゼリアよりも前に出て聞いていた。


「本当だよ」


「「えーっ!?!?!?!?」」


 ミュゼリアとベアルリアが同時に屋敷中に響くような声で叫ぶ。

 ダナフォルトとベルフェゴールが耳を塞いだ。


「そんな・・・ダナフォルト様に女性の弟子・・・」

 ミュゼリアが絶望的な表情で呟く。


「そっ」

「全て事実ですよ。リハーナ様はダナフォルト様の厳しい試験を突破し、ダナフォルト様の弟子になったとのことです」

 ベルフェゴールが、ベアルリアの言葉を遮った。


「ということですので、お部屋の用意をしなくてはいけませんね」


「別に一緒に住むことないだろ? どうせ学校で会うんだから」


「いえ、弟子であるからには、師匠様を見て学ばなければいけません。師匠様を支え、師匠様のお役に立たなければ」

「私も同感でございます。ダナフォルト様の執事をしております、ベルフェゴールというものです。よろしくお願いします」


「は、はい・・・」

 ベルフェゴールが胸に手をあてて、頭を下げる。

 リハーナもつられるように、スカートをつまんで挨拶をしていた。


「・・・・・・・」

 ダナフォルトがチーズケーキを食べながら、何か断る理由を探していた。


「み、認めません!」

「ミュゼ?」

 熱暴走したミュゼリアが杖を出す。


「いや、ちょっと・・・」

「認めません。だって、ダナフォルト様はみんなのダナフォルト様です! それに、レベルも私よりも低いのに・・・弟子になる実力があるとは思えません」


「いいわ・・・」


 リハーナがため息をついて手を前に出す。

 すっと杖が現れた。


「私の本当のレベルは62。いつもは魔力を押さえてるの。魔法学校に通いたかったからよ」


 サアァァァア


 リハーナの魔力がどんどん高くなっていく。


「!!」


 ざわっ・・・


 ベルフェゴールとダナフォルトが同時に動いた。

 ベルフェゴールが双剣を持って、ミュゼリアとベアルリアの前に立つ。


 ― Östèndè vèräm nätÅ«räm tūäm ―

  

 ダナフォルトが瞳を赤くして唱える。


「・・・!?」

 リハーナの手を掴んで袖をまくった。


「何? これ・・・」


「『魔族の刻印』だ」

「『魔族の刻印』?」


 リハーナの腕には、悪魔の文字が浮き出ていた。


 ― ディズ・ランディア ―

 

 シュウウゥウウウウウ


 ダナフォルトが手をかざしながら唱えると、瞬時にリハーナの腕から刻印が消えていく。


「な、何だったのですか? 今のは・・・」


「『魔族の刻印』は人間をじわじわと、魔族にする魔法だ」


「っ・・・!?」

 リハーナがびくっとして、自分の腕を見つめた。


「そ・・・そんな魔法あるの?」

「古の魔族しか知らない高等魔法だよ。ベアルリア」

「高等魔法・・・じゃあ・・・」


「あの刻印を残したのは、かなり強い魔族だね。ベルゼブブと同じくらいに」


 ベルフェゴールが双剣を消しながら言う。


「リハーナの状態を見るに、1日前につけられたものだろう。まだ、魔族化していなかった」


「す、すみません。私、全然気づかなくて・・・」

「いや、俺もベルフェゴールもリハーナが本来の魔力を出すまで気づかなかった」


「でも・・・・」

 リハーナが震えながら腕を押さえる。

 少し赤みを帯びて、熱くなっていた。


「刻印は消滅したから、もう危険はないよ。ベルフェゴール、ローズマリーとシナモンのハーブティーを頼む」

「承知しました」

 ダナフォルトの瞳が元に戻っていった。


「昨日か今日、誰かと会った? もしくは、ラグナディア雷帝国から出るような用事があったとか・・・」


「いえ、ずっとラグナディア雷帝国にいましたし、屋敷の者とは荷物整理を手伝ってもらいましたが・・・あとは、アステリア魔法学校に通っていただけで、特別な何かはしていません」


「ダナフォルト様・・・・」

 ミュゼリアがダナフォルトのほうを見る。


「・・・おそらくアステリア魔法学校に魔族が混じってるな」


「!!」


 ダナフォルトが腕を組んで、口に手をあてる。

 うっすらと感じ取っていたことだった。


 リハーナが何か話しかけようとすると、ベルフェゴールがカップを差し出して、ソファーに座るように促していた。

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