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レベル0の雷帝  作者: ゆき
アステリア魔法学校

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11/30

10 休み明けの学校

「きた、ダナフォルトだ」


「あいつが雷帝・・・なのか?」

「まさか・・・ありえないって。だって、生きてたら112歳だろ?」


「歴史上の英雄なんて、空想の世界の話だ」

「そうだよ。後世の者たちが自由に作った話だろうが」


「でも・・・もし、彼が雷帝だったとしても、魔法学校の先生たちも、学生も何人も何人も死んじゃったのよ。よく平然と来れるよね・・・」

「大好きだった、ハブール先生は魔族に捕らえられて・・・」

「学校来ちゃうと、思い出しちゃうもんね」

 女子生徒たちが泣きながら抱き合っていた。


 各魔法学校の再開時期については、ダナフォルトとアルバスの間でも話があった。

 ダナフォルトは修理が終わった学校に生徒たちを入れるのはまだ早いんじゃないかと言った。

 でも、アルバスは一刻も早く、生徒たちに自分たちを身を守る術を早く覚えさせなければいけないと話した。


 魔族はまた来るだろう。

 特に上位魔族が復活したとなれば・・・な。


「雷帝・・・ダナフォルト・・・?」

「つか、制服・・・どうして生徒のままでいるんだ?」

「先生だって冗談じゃないだろ。国民を見殺しにした雷帝に、学ぶことなんかないだろうが」


 ダナフォルトがアステリア魔法学校の廊下を歩いていると、当然の如く生徒たちがざわめいていた。

 時折苛立ちをぶつけてくるような声も交じっている。

 どんなに嫌味を言われても、ダナフォルトは風のざわめきくらいにしか思っていなかった。


「おはようございます。師匠様」

 リハーナがダナフォルトに駆け寄ってきた。

 ダナフォルトが顔をしかめる。


「!?」

 リハーナが「師匠」と言った瞬間、生徒たちの動揺とざわめきが一層大きくなった。


「学校で師弟関係を出すなって」

「いえ、師匠様は師匠様ですから。全校集会ですもんね。ちなみに全校集会は向こうになりますよ?」


「えっ!!」

 リハーナが反対方向の廊下を指す。


 ダナフォルトは学校のどこに何の部屋があるかわからないほどの方向音痴だった。


「・・・どおりでさっきからホールが無いと思ったんだよ。俺、どこに行こうとしてたんだ?」

「知りませんって」

 リハーナが振り返って、泣いている生徒たちのほうを見る。


「こんなところでグダグダしてないで、ここら辺の人たちも早く移動したらいいのに。煩いわね」

 周囲の生徒に聞こえるように声を大きくした。


「弱いから死んだのに、雷帝のせいにするのはどうかと思うけど」


「っ・・・・・」

 生徒たちが沈黙する。

 リハーナが容赦なく声を大きくした。


「わざわざ相手にするなって」

「はっきり言ってやらなきゃわからないのですよ」

「・・・・・」

 ダナフォルトが頭を掻いて、ため息をついた。


 ザッ


 人がぱっと避ける。


「生徒会長クラウド様・・・・」

 すっと前のほうから4人の男女のグループが歩いてくる。

 生徒会のバッチを付けた、生徒会長クラウド率いる生徒会のメンバーだった。


「やぁ、はじめまして。知ってると思うけど、俺はアステリア魔法学校の生徒会長のクラウドだ。こっちは副生徒会長のナターシャ、会計のペリオ、書記・会計補佐の・・・」

 クラウドがダナフォルトに話しかけてくる。

 突然の自己紹介に、ダナフォルトが固まった。


「あ・・・いや、俺、全校集会に」


「その必要はない!」

 クラウドが急に声を大きくした。


「君の退学嘆願書に多くの署名が集まった。これをこれから校長に届けてくるところだ。雷帝か何かわからないが、役目を果たさない雷帝を、ここに置いておくのは、他の生徒の心に悪影響だ」


「は!? バカじゃないの!?」

「リハーナ、君のような優秀で美しい生徒が、こんな得体のしれない男について残念だよ。脅されているのかい」

「そんなわけないでしょ?」

 クラウドがリハーナに触れようとすると、リハーナが手を叩いた。


「まぁ、あの混沌とした状況なら、判断力が鈍るのも当然だ」


「フン・・・会長ってば女の子を見るとすぐ優しい言葉をかけようとするんだから。勘違いしちゃうかもしれないじゃない」

 クラウドがリハーナに優しく言うと、ナターシャが腕を組んであからさまにやきもちを妬いていた。


「歴史を知らないの!? 師匠様は・・・・」

「・・・・・・」

 突っかかろうとしたリハーナを手を挙げて制止する。


「この学校に多くの魔族が入ってきた。私の友達も何人も死んだわ!信頼していた魔法薬学の先生だって・・・多くの生徒が命を落としたの!」

 ナターシャが紙の束を抱きしめながら、口を開く。


「雷帝ならそもそも魔法学校にいる必要がないだろうが。遊びでここにいるのか? とにかく、俺も、あんたを許さない」

 クラウドの後ろにいた、ニキビ肌のペリオも強い口調で言った。


「あ、そ。どうでもいいよ」

 ダナフォルトが無視をしてクラウドの横を通っていく。


 キィンッ


 クラウドが瞬時に剣を出して、ダナフォルトの首に突き付けた。


「師匠様!」


「これは、学内で禁止行為じゃないのか? リハーナ、絶対に手を出すなよ」

「っ・・・・」

 リハーナがこぶしを握り締めて、留まる。


「生徒会長だけ、生徒たちの安全を守るため許されているのよ。滅多に行使する必要が無いから、使わなかっただけ」

 ナターシャがツンとしながら言った。


「へぇ・・・」


「穏便に先生たちのところへ、連れていきたいんだ。ペリオ、縄を」

「了解」

 ペリオがダナフォルトの手首を縄で縛る。


「ほら・・・後ろがら空き、やっぱレベル0じゃないか」

 クラウドが笑いながら、額に冷や汗をにじませていた。


 黙っているように言われたリハーナは歯を食いしばって、言い返したいのを我慢していた。

  

「俺は敵以外戦わない主義なんだよ」


 バキッ


「!!!!」


 一瞬だけ瞳を赤くして、クラウドの剣をへし折る。


「ガキが・・・」

 クラウドがその場に座り込んだ。

 縄はじりじりと燃え切れて、煙を出しながら落ちていた。


「会長!」

「大丈夫か!?」


「な・・・なんだ? 今の・・・」

 ナターシャとペリオが屈んで、クラウドの背中に手をあてる。


「強さの違いくらい、見極められるようになれよ。生徒会長を名乗るんであればな」

「な・・・・・・」


「誰かを守るのはそんなに楽じゃないからな」

 静かに、クラウドだけに聞こえるような声で、吐き捨てるように言った。

 

「じゃ、全校集会だ。お前らも行くんだろ? 遅れるなよ」

 ダナフォルトが生徒たちが立ちすくむ廊下を歩いていこうとする。


「師匠様、どこに行くのですか?」

「だから、その師匠って・・・」


「ホールはあっちになります」

「え・・・」

 リハーナがダナフォルトが行こうとした方角と反対の方角を指した。


「・・・・・・」

 多くの生徒の沈黙の中、リハーナの声だけが響いていた。


「アステリア魔法学校って作りが複雑じゃない? 覚えにくいんだよ」

「いえ、普通、わかりますって。師匠様は方向音痴なんですか? もしかして、今まで移動教室に現れなかったのも・・・」

「迷ってた・・・わけじゃない。部屋が移動したんだよ」

「何言ってるんですか・・・方向音痴なら私が補佐するので大丈夫ですよ」

 リハーナの中で、疑問に思っていたことが繋がっていた。


 ダナフォルトは授業をさぼっていたわけじゃなくて、教室の方角を見失い迷っていてたどり着けなかっただけだった。


「・・・そんなことは無い。たぶん・・・」

 ダナフォルトが少し自信無さそうに言ってから反対側を歩き出していった。


「ダナフォルト・・・」

 生徒会の3人は立ち上がれずにダナフォルトたちを目で追っていた。


「よいしょよいしょよいしょ・・・と」

 一番後ろにいた、書記・会計補佐の妖精族ヌヌだけが散らばった署名の紙を一生懸命かき集めていた。

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