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レベル0の雷帝  作者: ゆき
崩壊と再生

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10/30

9 あんでっど


-------------------------------------------


― XXX年前


 街へと続く夜道を、ダナフォルト、ガードグ、ドルゴール、エレナが歩いていた。


『俺は巨乳派だ』

『俺もどちらかと言えば巨乳だな。でも、細かく言えば大きさよりも、形を大事にするほうだね。こう手で揉んだときにあふれるくらいが理想だ』


『だよな。やっぱり気が合うよ。ドルゴール。種族なんて関係ないな!』

『そうそう、ドラゴン族は基本的にスタイルがいい女がいいぞ』

『そうなのか! いいなぁ』

 ドルゴールとガードグが笑いながら肩を組んでいた。


『ちょっと!!!』

『ん?』


『か、可愛い美少女の前でなんてこと言うの!?』

 エレナが顔を真っ赤にして、むきになって怒る。


『可愛い美少女ってなんだよ』

『頭痛が痛いみたいな?』

『エレナは頭が弱いんだよ』


『突然のセクハラにびっくりしたの! 今度言ったら、凍らせるからね!』

 エレナが耳まで真っ赤になっていた。


『ほら! まだ14歳のダナフォルトの前なんだよ! 低俗な下ネタにドン引きしてるでしょ?』

 エレナがダナフォルトを突き出す。


『・・・・・』

 ダナフォルトは瞳を赤くしたまま、エレナたちを睨みつける。


『どうして俺を仲間に誘ったんだ? しかもリーダー? 何考えてるんだ!?』

 低く鋭い声で言った。


 ダナフォルトは誰も信じていなかった。

 敵と味方の区別もつかなくなるほど、感情の乱れに翻弄されていた。



 バチンッ ジジジジジジ


 木と木の間に、雷が走った。


『ダナフォルト、落ち着け』


『落ち着いてるよ!』

 魔力の暴発も制御できず、唇を噛んで手を握り締める。


『大丈夫だ。ダナフォルト!』


『何が・・・』


 ポン


 ガードグがダナフォルトの頭を撫でる。


『お前は強い。そして、矢のように突き進む意志を持っている。リーダーとしてふさわしいんだ』


『嫌味だろ! 3人ともレベル99だ。俺なんか、まだ力の制御もできないし、何より俺はレベル・・・』


『もし、お前が道を切り開けない時は、俺たちが前を進んでやる。だから心配するな』


 ガードグが真剣な表情で、微かに笑みを浮かべながら言った。



-------------------------------------------


「ダナフォルト様、ダナフォルト様」

「ん?」

 ダナフォルトが庭の木の傍で寝ていると、ベルフェゴールが声をかけてきた。


「明日は学校なのですからしっかりしていただかないと。登校前夜にこんなところで寝ているなんて、全く・・・」

「アルバスといろいろ話してて疲れてたんだよ。課題は山済みでさ」

 空には満天の星が輝いていた。


 ダナフォルトが体を起こして土を払う。


「あの少女はどうされたのですか?」

「リハーナ=メルディか。ちょうど寝る前に闘技場に行って、心臓が止まっているのを確認したよ。結局一体も倒していなかったみたいだね」


「なるほど。駄目でしたか・・・」

 ベルフェゴールがダナフォルトの隣を歩いていく。


「まぁ、俺の召喚獣だ。苦しまないように、一瞬で殺してくれたよ」


「ダナフォルト様は容赦がないですね。メルディ家の者なら情けをかけると思っていましたが・・・」

「悪魔の癖に情けとか言うなよ」

 ダナフォルトが力なく笑う。


「リハーナは隠してたみたいだけど、大体レベル62くらいはあったんだよね。普通に魔法学校にいたら優秀な生徒だったのにな」

「そうでしょうね」


「ちゃんと弔ってくるよ。メルディ家の者にリハーナがどう伝えて・・・・」


 はっとして足を止める。



「は・・・? ありえない」

 瞳を赤くして転移魔法陣を展開した。


 シュッ


「おや・・・?」

 ベルフェゴールが何か聞く前に、ダナフォルトが消えていった。

 顔色の変わったダナフォルトを見て、ククククと笑いながら月を見上げていた。


「今日は星も月も綺麗ですねぇ。こうゆう夜は、眠るには惜しいです」

 独りで呟いてから、マントを翻して屋敷に戻っていった。





 転移したダナフォルトが見たのは、信じられない光景だった。

 ダナフォルトが呆然と立ち尽くす。


「どうして・・・・」


 服はぼろぼろになり、血だらけになったリハーナが杖を回す。


 ― 氷魔剣(ルシュール・リラ)―


 最後の召喚獣、2メートルはある炎を噴く獣に向かってくると同時に、巨大な氷の剣が落ちてくる。



 ズドドドドドドドドーン



 一瞬にして、召喚獣が凍った。

 魔法陣が展開されて、召喚獣が消えていく。


「え? 君は・・・だってさっき確かに・・・」

「宣言通り、全員倒したから・・・これで・・・」


「おい!」

 倒れそうになったリハーナを、ダナフォールが抱きとめる。


「どうゆうことだ!? お前、本当にリハーナか?」


「・・・もちろんです。言いましたよね? 私が勝つって。師匠様」


「師匠って・・・」

「今から私は霊帝ダナフォルト様の弟子です。約束は約束です」

 リハーナがほっとしたような顔で、言葉遣いを変えていた。


「いや、俺が見に来たとき、確かにリハーナの心臓は止まっていた」

「そうだと思います」

 リハーナの傷が急速に治癒していく。


「・・・自然治癒しているのか?」

「そうですね、私は致命傷を負えば回復魔法が発動します。今回は3回も死にました」


「死んだ?」

「はい」

 リハーナがダナフォルトから離れて、両手を広げる。


「あんでっど」


「!?」


「私の能力はアンデッドです。死んでも、何度でも蘇ることができます」


「・・・・!」

 思いがけない言葉に、ダナフォルトが絶句する。


「・・・・アンデッド・・・ってありえるのか? そんなの聞いてないって」

「師匠様も突然、私に戦闘を持ち掛けましたから、おあいこですね」


「・・・・・・」

 ダナフォルトが一歩下がる。


 リハーナが黒い髪を耳にかけて、姿勢を伸ばした。

 ダナフォルトの目を見てから、深々と頭を下げる。


「改めて、リハーナ=メルディと申します。師匠様、これからよろしくお願いします」


「・・・・マジか、何十年ぶりの弟子だろう・・・自分でも驚いたよ・・・」


 ダナフォルトが気が抜けたように笑う。


「でも、弟子っていっても、レベル0の俺から学ぶことなんて・・・・リハーナが想像しているほどないと思うよ?」

 ダナフォルトがリハーナの放った氷のかけらを拾った。

「まぁ、弟子とはいえ、別に意見してもいいし、見当違いだったなとか、違うことを学びたくなれば、いつでも離れていっていいから。そんなことで、恨んだりしないよ」


「師匠様のこと、すごく知っているわけではないのですが一つだけ言えることがあります」

 リハーナが指を回して召喚獣を倒した巨大な氷を割った。

 氷の結晶がきらきらと落ちてくる。


「ん?」

「師匠様は自分のこと過小評価しすぎです」


「違うって。歴史が俺のこと盛りすぎたんだよ」

 肩を回しながら、だるそうに言う。


「いえ、でも、もし師匠様がそう思って一歩踏み出すのを留まっているとしたら・・・・」

 涼しい風が、2人の間を通り抜けていく。


「私が道を切り開いて進みます!」

 リハーナが氷の結晶を手のひらに乗せて、ダナフォルトにほほ笑む。


「!?」


 ― お前が道を切り開けない時は、俺が進んでやる ―


「な・・・」

 ダナフォルトがガードグの言葉を思い出して、数秒固まる。


「ん? 師匠様?」

「っ・・・っハハハ、すごいこと言うね。3回死んでやっと弟子になったのに、随分大口叩くなって思ってさ」

「そこまで笑いますか?」

 リハーナが眉間にしわを寄せる。


「笑うって、ここ数十年で一番面白いよ」


「泣くほどですか?」

「泣くほどだって・・・」

 ダナフォルトが目を擦って大笑いする。


 リハーナが不機嫌そうに頬を膨らませて、腕を組んでいた。

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― 新着の感想 ―
 ダナフォルトは圧倒的な力を持ちながらも偉ぶることがなく、普段は気だるげで口も悪い。その一方で、仲間との思い出や人々を守ろうとする気持ちを胸の奥に抱えていて、その不器用な優しさがとても魅力的でした。 …
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