第二十五話 めでたし、めでたし……?
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タッタッタッ。
視界が開けると、畳の匂いがした。
見覚えのある居間だった。縁側の向こうには、梅の木が一本。ただ、第十九話で見たときより、障子の色が少し白い。柱の傷も、まだ浅かった。
俺は、部屋の隅の大きな箪笥の陰に、身をひそめた。
居間の中央では、とんでもないことが起きていた。
「キャハハハキャハハハキャハハハ!」
赤ちゃんの梅太郎が、座布団の上で、泣き叫んでいる。
その前で、シャイニング婆とアルティメット爺が、まさに、その赤ちゃんを吹っ飛ばそうとしていた。
「うるせぇぇぇ!!」
「ちょっと待った!!」
「!?」
二人の手が、ぴたりと止まった。
シャイニング婆とアルティメット爺が、声のしたほうを振り向く。
すると、居間の棚の上から、梅太郎、シャフト、スライム大統領、そして、英雄ナカシマが、ぞろぞろと降りてきた。
「……もっと、転送先あったんじゃないか」
箪笥の陰で、呆れながらも、思わず笑った。
よりによって、この瞬間に、棚の上である。
「う、梅太郎!?」
シャイニング婆の表情が、変わった。
さっきまでの邪悪な気配が消え、理性を取り戻したように、元の姿へと戻っていく。
すると、シャイニング婆が落ち着いたのにつられたのか、アルティメット爺も、元の姿に戻った。
「どうしたんじゃ、大人の姿で!?」
おじいさんが、驚いたように、梅太郎を見つめる。
「そりゃ、そうなるよな」
小さく、つぶやいた。
梅太郎は、これまでの冒険を、説明し始めた。
「話せば長くなるけど、そこの俺を吹っ飛ばした結果、二人の喧嘩を止めに行くって冒険に出て、ここまで来たんだよ」
……。
言っていることは、ぶっ飛んでいる。
そもそも、赤ちゃんを吹っ飛ばしたことから始まった冒険なのだ。説明としては、間違っていないのが、なんとも言えない。
「それは、悪いことしたな、梅太郎」
おばあさんが、頭を下げた。
「すまんの、ばあさん」
おじいさんも、謝った。
こうして、梅太郎たちは、おじいさんとおばあさんの喧嘩を、止めることができましたとさ。
めでたし、めでたし!
――ナーハッハッハッハ! ナーハッハッハッハ!
「めでたし、めでたしじゃないわ!!」
笑い声とともに、背後の襖が、バンと開いた。
くないきゃうが、立っていた。
「行け! 最後の四天王!!」
「御意。覚悟せよ、梅太郎!!」
新たな敵が、姿を現した。
【たのおほきみが現れた!】
ついでに、もう一体。
【ワンダー超人が現れた!】
「……そりゃ、終わらないよな」
箪笥の陰で、画面を見つめた。
「超人って、やたら地獄で出てきたキャラクターだな。ワンダーって」
ここまで来て、まだ超人を出してくるらしい。
ちなみに、たのおほきみは、額田王のことだ。
「……俺、意外と古典に詳しいな」
自分で自分に、感心した。
そんなことを考えている間にも、敵は、増えていく。
【ヒドラのようなモンスターが現れた!】
【妖精のようなモンスターが現れた!】
「今度こそ、最後の戦いか……」
さすがに、最後ということもあってか、敵は、なかなか手強かった。
しかし、梅太郎たちも、黙ってはいない。
【ナカシマのカッコイイポーズ!】
【敵は、うっとりしている!】
「……そういう技なんだ」
思わず、つぶやいた。
【スライム大統領の氷系魔法!】
【全体攻撃!】
【シャフトの高速回転の軸!】
大きな手裏剣のようなエフェクトが飛び出し、敵全体を、切り裂いた。
そして――
【梅太郎のまんきんたん!】
【味方全員が、全回復した!】
「……なんか、ちゃんとしてるな」
感心した。
「スライム大統領の技、名前ないんだな」
派手な演出が続く中、そんな細かいところが、気になった。
激闘の末、二匹のモンスターは、倒れた。
「ナーハッハッハッハ! やるな、梅太郎……では、ワタシが直々に、倒してやろう」
くないきゃうが、前に出た。
その身体を、邪悪な気が、覆っていく。
ついに、最後の敵との決戦が、始まろうとしていた。
――そのとき。
編集画面の隅に、赤い文字が、灯った。
【警告:不明なアクセスを検知しました】
「……ん?」
見覚えのある警告だった。
直後、別のメッセージが、現れた。
【セーブしますか?】
はい
いいえ
「ん? 急に?」
戸惑った。
あまりにも、急なセーブ画面だった。
しかし、ここまで来て、セーブしない理由もない。
「……急すぎるけど、セーブしておくか」
「はい」を選択した。
セーブが、完了した。
「まあ、大丈夫でしょ」
深く考えないことにした。
そして――
梅太郎たちは、最後の敵へと、向き直る。
最終決戦へ。




