第二十四話 四天王、登場
【場所移動:(梅太郎たちの転送先)】
移動先の欄に、梅太郎たちが飛ばされた場所を入れて、保存を押した。
タッタッタッ。
視界が開けると、足元から、ひやりとした風が吹き上げてきた。
そこは、大地に巨大な穴が空いたような、不思議な空間だった。
地面は大きく裂け、周囲には、切り立った崖がそびえている。空は、薄く曇っていた。
「……なんか、見覚えがあるような」
景色を眺めて、首をかしげた。
某有名RPGの第六作、そのオープニングで、龍が飛んでくる場所。そんな雰囲気のある空間だった。
俺は、足元の大きな岩の陰に、身をかがめた。
ほどなくして、裂け目のふちに、梅太郎たちが現れた。
四人とも、転送の余韻で、足元がふらついている。
「ここは、どこだ?」
梅太郎が、あたりを見回した。
そのとき、北の崖に向かって、怪しい影が、逃げていくのが見えた。
「おい、待て!」
シャフトが、叫んだ。
四人は、影を追いかけた。
しかし、崖の手前で、ついに影を追い詰めた。
「ナーハッハッハッハ! これで追い詰めたと思うな!」
「……くないきゃう、だったか?」
岩陰で、名前を思い出した。
たしか、アンデッドエンマを光で消し去った、謎の男だ。
「ユケ、四天王!!」
くないきゃうが叫ぶと、目の前に、三人のキャラクターが現れた。
「我が名は、徒歩」
「我が名は、りゃはく」
「我が名は、まうかうねん」
「…………」
黙った。
変なやつらが、三人現れた。
いや、名前が変なのは、今に始まったことではない。
だが、四天王と名乗っているのに、三人しかいないのは、どういうことなのか。
「ナーハッハッハッハ! さらばだ!」
くないきゃうは、そう言い残して、消えていった。
「貴様らなど、我々の足もとに及ばんわ」
徒歩が、言った。
「くないきゃう様のお手を煩わせることもない」
りゃはくが、続く。
「覚悟せよ」
まうかうねんが、構えた。
「……待て」
梅太郎が、手を挙げた。
「四天王なのに、三人しかいないぞ」
「数が合ってないな」
ナカシマが、冷静に指摘した。
三人は、顔を見合わせたまま、何も答えなかった。
岩陰で、編集画面を開いた。
「あと、名前は、何なんだ?」
気になったので、メモを確認してみる。
【メモ更新日:25年前】
『古典の教科書で、読み方が面白い人たちが、たくさん出てきたから、使おう。
四天王、作りたいな。
もうほぼ作ってしまったから、最後にねじ込むか。』
「……なるほど」
納得した。
おそらく、杜甫、李白、孟浩然。昔の仮名遣いで読むと、「まうかうねん」になる。
そして、ラスボスの名前は、宮内卿だろう。
何をした人なのかは、覚えていない。ただ、何となく、名前だけは覚えている。
「名前を考えるって、大変なんだな……」
しみじみと、思った。
確かに、ネーミングをつけるのは、大変だ。
仕事でも、同じだった。サーバーだ、ネットワークだ、ファイルだと、適当に名前をつけると、後になって、「何で、こんな名前にしたんだ?」となる。かといって、ちゃんとルールを決めて名前をつけても、いつの間にか形骸化して、誰もルールを守らなくなる。
……今、考えることじゃないか。
そんなことを考えているうちに、戦闘は、終わっていた。
やはり、レベルを上げすぎている。
「「「くっ、無念……」」」
三人は、そう言い残して、消えていった。
「……あっさり終わったな」
梅太郎が、拍子抜けした顔をした。
四天王のうち三人が登場し、ほとんど何もできずに敗北。残る一人は、最初からいない。
「さあ、ここから、どうすれば……」
シャフトが、頭を悩ませた。
そのときだった。
ファーン。
ファーン。
またしても、神々しい光が、現れた。
「ビューン!」
「ビュ、ビューン!」
「……効果音、ちょっと変わった?」
スライム大統領が、首をかしげた。
光の中から、レフト兄弟が、姿を現した。
「タ、タイヘンダー! クナイキャウ、トイウオトコガ、カコニトビタッタゾ!」
「転送してやる!」
「ちょっ……!」
梅太郎が、手を伸ばした。
しかし、間に合わなかった。
四人は、再び、転送された。
相変わらず、本人たちの意思は、関係ないらしい。
「…………」
岩陰で、ため息をついた。
「さあ、おそらく、今度こそ最終局面だな」
何度も何度も転送され、ようやく、ラスボスの手がかりが、見えてきた。
もっとも、四天王の人数すら合っていない世界だ。本当に最終局面なのかは、まだ分からない。
「……まあ、行こう」
編集画面を開いた。
移動先は、「過去」。くないきゃうが、飛んでいったという場所だ。対象は【自分】。
保存を押す。
タッタッタッ。




