第二十二話 レフト兄弟現れる、過去に向かう(?)タイムマシン
【場所移動:北の洞窟】
移動先の欄に、その名前を入れて、保存を押した。
タッタッタッ。
視界が開けると、そこは、洞窟とは思えない光景だった。
壁や天井には、金属のようなものが張り巡らされ、青白い光が、室内を照らしている。
そして、部屋の中央には――
デーン。
培養液のような液体の入った、巨大なカプセルが、鎮座していた。
「……SFじゃないか」
思わず、つぶやいた。
洞窟とは。
俺は、壁際を這う太いパイプの陰に、身を隠した。
ほどなくして、入口から、梅太郎、シャフト、スライム大統領、ナカシマが、入ってきた。
「……SFじゃん」
梅太郎が、あんぐりと口を開けた。
「なんだ、これは?」
カプセルを見上げて、首をかしげる。
「タイムマシンに関係あるんじゃないか?」
シャフトが、適当に答えた。
そのときだった。
ファーン。
ファーン。
部屋の奥に、二つの光が、現れた。
神々しいというか、何かの登場演出というか。とにかく、やたらとありがたそうな音が、鳴り響く。
光の中から、二人の人物が、姿を現した。
見た目は、未来人に似ている。ただし、色違いだった。
「ナンダキサマラハ? ココニナンノヨウダ?」
「カッテニハイッテクルンジャナイ」
「君たちは、レフト兄弟だな?」
ナカシマが、一歩前に出た。
「過去に行きたいのだが、手を貸してくれないか?」
いきなり、本題である。
交渉というより、ほとんど用件を伝えただけだった。
「ナゼミズシラズノキサマラニテヲカサナイトイケナインダ!」
「アヤシイヤツラメ、カクゴシロ!」
レフト兄弟が、襲いかかってきた。
「いや、交渉決裂するの、早くないか?」
梅太郎が、叫んだ。
戦闘が、始まった。
……そして、あっさり勝った。
「……弱っ」
パイプの陰で、画面を見つめた。
あれだけ神々しい登場演出をしておいて、これである。もう少し、何かあってもよかったのではないか。
「ソコノタイムマシン、ツカッテイイヨ」
「いいのか!?」
梅太郎が、のけぞった。
レフト兄弟は、驚くほど素直に、態度を変えた。
……とても素直で、あっさりしている。
呆れながらも、話の続きを聞いた。
「ソウイエバ、スコシマエニモアヤシイジジイガカッテニツカッテイキヤガッタカラ、イマハヨビノタイムマシンヲツカッテイルンダ」
「何?」
シャフトが、食いついた。
「そいつは、どこに行った?」
「ワカラナイ。タブンカコジャナイカナ」
「過去……」
梅太郎は、考え込んだ。
おじいさんとおばあさんの喧嘩。そして、勝手にタイムマシンを使っていった、謎のジジイ。
無関係とは、思えない。
「よし、早速、その過去とやらに行こうぞ!」
スライム大統領は、タイムマシンを興味津々に眺めていた。
「これが、時を超える装置か! 実に興味深い!」
「お前、そういうの好きなんだな……」
梅太郎が、ぼそりとつぶやいた。
四人は、奇妙な形をしたタイムマシンに、乗り込んだ。
行き先は――十五年前。
レフト兄弟が、操作を始める。
機械がうなり、カプセルのような装置が、光を放った。
その瞬間。
【警告:不明なアクセスを検知しました】
「……またかよ!」
パイプの陰で、思わず声が出た。
久しぶりに現れた警告。しかも、こんなタイミングで。
何かが起きている。そう考えるしかなかった。
次の瞬間、強烈な光が、部屋を包み込んだ。
そして――
梅太郎たちは、タイムマシンと共に、消えた。
「…………」
部屋には、俺と、レフト兄弟だけが、残された。
幸い、兄弟は、機械の調整に夢中で、こちらに気づいていない。
編集画面を開いた。
イベントの設定を、確認する。マップの移動先。タイムマシンの起動条件。スイッチの状態。
しかし、何かがおかしいのかどうか、判断がつかなかった。
「……そもそも、この後の展開が分からないんだよな」
頭をかいた。
この先のイベントがどうなっているのか知らない以上、仮に誰かが設定を変更していたとしても、変更前の状態が分からない。直すべきものなのか、それとも、元からこういう設定なのか。
判断する材料が、なかった。
「とりあえず、梅太郎たちの後を追うか」
移動先を、確認した。
【はじまりの町(未来)】
「……未来?」
画面を、見直した。
「いや、あれ? 過去に行ったんじゃなかったっけ?」
十五年前に向かったはずなのに、表示されているのは、未来。
「……まあ、いいや」
今さら、細かいことを気にしても、仕方がない。
この世界では、柵を無視して馬が走り、犬は突然殴られ、神々しく登場した敵が、あっさり負ける。時間の設定くらい、間違っていても、不思議ではない。
「行こう」
移動先を指定した。対象は【自分】。
タッタッタッ。




