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第6話 アイテムボックス、獲得


 修羅場から一週間が経った。

 

(今のポイントは25。順調だけど、結構難しいな)

 

 まだ長文が話せないという事もあり、悪役令嬢っぷりを発揮するのは難しい。

 しかし本能的に泣いて困らせた結果などでポイントが徐々に加算されている。

 

 困らせた回数なら産まれたての頃の方が多いはずなのに2だったのは、恐らく、私がスキルの存在を意識したための変化だろう。

 罪や陰謀を意識するかしないかや、下準備があるか、事の大きさなどで、加算率がかなり変わるようだ。

 

(そろそろ、ナールさんが休憩する時間だ)

 

 離乳食を食べさせられ、しばらく食休みした後、お昼寝のためにベッドに連れてこられた。

 

 そしてナールさんが扉を閉めて出ていったところで、私は決心した。

 

(今日。アイテムボックスを、獲得しよう)

 

 ポイントが5を超えた時、すぐにやろうか一度悩んだ。

 しかしふと思ったのだ。

 

(世界によっては、アイテムボックススキルは希少な可能性がある。……徴兵とか、クソ親父によって闇売買に出されるなんてことも、もしかしたら有り得る)

 

 アイテムボックスが希少スキルの場合は、バレた時に非常に危険だ。

 

 だってアイテムボックスがあれば、検問検閲もスルーできるし、違法な物も隠し放題。

 関税も無視できる。

 ボックスの容量によっては、戦争や遠征での兵糧問題も無視できるし、もし生き物を入れられる場合はもっとヤバいことにも使える。

 

 アイテムボックスが希少ではなくありふれているなら、それ専用の法律だとか、対処する魔法なんかが発明されているかもしれない。

 それならバレても構わないだろう。

 

 そんなわけで、周囲の人がアイテムボックスを使うかどうかや、どう思うのかを観察していたのだ。

 

 その結果……。

 

 いつものお喋りメイド達の噂話から、ほとんど御伽噺のようなレアスキルであることが判明した。

 

 曰く。

 

「洗濯物重い~! あーあ、アイテムボックスがあればな~」

「おバカ、そんなもの使えたら一発で帝室魔導師になれるわよ」

「えーなりたーい」

「洗濯物を持たなくて良くなる代わりに、二度と自由に外出できなくなると思うけどね」

「なにそれやだ~」

 

 ……とのことである。

 

(バレたら絶対めんどくさい事になる……!!)

 

 なんなら、獲得するか迷うくらいには危険だ。

 悪目立ちするのは間違いないし、聖女だの攻略対象だのに接触される危険性も高まり、破滅フラグが生えまくる。

 

 が、いざと言う時の備えに、これほど必要なスキルもないだろう。

 

(いくぞ……)

 

 【悪役令嬢ポイントリスト】を表示する。

 

 その中の、悪女の懐(アイテムボックス)獲得の欄を、意思でクリックした。

 

 その瞬間。

 

 ──チャリーン、と、アプリゲームの課金のような音がした。

 

(音、やっす……)

 

 拍子抜けしつつ、恐る恐るステータス画面に戻る。

 そこにはこう書かれていた。

 

───

 

【ステータス】

 

 名前:アナスタシア・フェリーチェリス・グウィネス

 レベル:1

 種族:人間

 加護:なし

 称号:駆け出し悪役令嬢

 役職:グウィネス伯爵家 第二子

 

 状態:健康

 MP:10

 AP:20

 

【スキル】

 

 EXパッシブスキル:悪役令嬢

 パッシブスキル:悪女の懐(アイテムボックス)

 

───

 

 

 思わずズッコケそうになった。

 

(なんだよ駆け出し悪役令嬢って……。駆け出しの芸人かなにかか、私は)

 

 そう突っ込みつつ、スキルが無事に追加されているのを確認した。

 文字が青くリンク色になっているので確認する。

 

───

 

悪女の懐(アイテムボックス)

 

 悪女たるもの、胸の谷間に毒の小瓶や陰謀の手紙を隠し持つべし。

ガーターベルトにナイフとかもカッコイイよね。

 

───

 

 ブチギレそうになった。神に。

 

(容量とか使い方とか他に書くことあるでしょ!!)

 

 キレながら毒づくが、現実は変わらない。

 とりあえず使ってみるしかないか。

 

(とはいえ、部屋のものがいきなり消えたらバレるよね)

 

 そうだ、携帯食料と飲料も、今試してしまおう。

 

 思い切って、一つずつポチる。

 チャリンチャリーンと安っぽい音が脳内に響くが、現実に変化は無い。

 

(……どうやって取り出すんだ、これ)

 

 うんうん悩みつつ、私はお決まりの行動を試してみることにした。

 

 脳内で高らかに叫ぶ。

 そう、厨二病のように!

 

(悪女の懐(アイテムボックス)!!)

 

 すると、フッと意識と景色が二重になった。

 

 不思議な感覚だ。

 目の前の光景も見えるが、それと同時に白い空間も見える。

 白い空間は、畳2畳分くらいの、物置のような大きさに見える。

 その中に小さな物体がふたつ浮いていた。

 

(これがアイテムボックス……)

 

 試しに、「携帯飲料(極粗悪)をひとつ取り出す」と念じてみる。

 すると、ゲームのセレクト画面のようにスイッと携帯飲料が前に出てきて、重なっていた意識がひとつに戻った。

 

「……あ!」

 

 いつの間にか。

 手の中にチャポンと音を立てる皮袋がひとつ、鎮座していた。

 

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