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第4話 悪役令嬢ポイントってなに!?


 緊急事態ッ! 緊急事態ーッッッ!!!

 

 脳内でビービー警報が鳴り響く。

 

(待て待て待て待てなんだこれなんだこれなんだこれ!?!?!?)

 

 何度見ても、ステータス画面の追記は変わらない。

 

【EXパッシブスキル:悪役令嬢】

 

 ……そう、書いてある。

 

(よりにもよって悪役令嬢か!! てかパッシブスキルって何!?)

 

 えーとえーとと混乱する脳内をなんとか落ち着ける。

 

 確か……ゲームでよくあるのは、意図して発動するスキルはアクティブスキル、常時発動するものはパッシブスキル、という感じだったはずだ。

 

 悪役令嬢の文字がこれまた青かったので、それもクリックしてみる。

 すると……このようなふざけた文章が浮かんできた。

 

───

 

【悪役令嬢スキル】

 

 悪役令嬢を極める事で進化する固有EXスキル。

 君も周囲を引っ掻き回して大物悪役令嬢になろう!


【悪役令嬢ポイント】

 治癒や魔法スキルの獲得、追加スキルの追加、アイテム袋の実装、アイテム袋内へのアイテムの追加等に使用可能。

 世界一の大金持ちになるのもよし、逆ハーレムを狙うもよし、聖女に嫌がらせをするのも、世界を滅ぼすのもよし。使い方は無限大! 全てはアナタ次第☆

 

【悪役令嬢ポイントの獲得ルール】

 

 ①悪役令嬢たるもの、気品ある口調と態度を心がけ、然るべき時には必ず高笑いをすべし。

 ②悪役令嬢たるもの、常に周囲に嫌われるか、あるいは困らせよ。

 ③悪役令嬢たるもの、謀りごとをせよ。

 ④悪役令嬢たるもの、善行を人に気づかれてはならぬ。

 ⑤悪役令嬢たるもの、例え斬首されようとも人に許しを願ってはならぬ。

 

 ⑥以上のルールを守って行動した場合にのみ、随時、相応の悪役令嬢ポイントが加算される。

 

───

 

「ほにゃんふんへにゃー!!!!(ふざけてんのかァァアァ!!!!)」

 

 私は絶叫した。

 普通に喉を痛めて咳き込んだ。

 

「げっほ、けほ、えう……あっ」

 

 慌てて戻ってきたナールさんと目が合って慌てた。

 やばい、ステータス画面を見られる!!

 そう思ったが、ナールさんの目はステータス画面を通り越して私を見ていた。

 どうやらこれ、他人には見えないらしい。

 

 私は慌ててステータス画面に閉じろと念じると、ナールさんのあやしを受けた。

 が、混乱と悲しみでいっぱいの体は泣き出して止まらない。

 

(ううう、あぁもう、あーもうなんなんだこれ。てか説明文誰が書いてんの!? 神様!? 神様なの!? 神様って暇なの!?)

 

 なにが「大物悪役令嬢になろう!」だよ。

 なにが「全てはアナタ次第☆」だよ!!

 

 そう罵倒しながらも、次第に冷静になってきた頭がひとつの結論を導き出した。

 

(さっきAPが増えたのは、シメシメ、と思ったからか……)

 

 恐らく、悪役令嬢ルールの③「悪役令嬢たるもの謀りごとをせよ」によってポイント獲得したのだろう。

 さしずめ、「同情を引いたことをシメシメと喜び、相手を意のままにしようとする。うーん、1かな!」みたいな。

 座布団じゃねぇんだぞ。

 

(ふざけろ……!! こんな周囲に迷惑かけるのが前提のスキルが常時発動とか終わってる。てかステータスには役割とか書いてないけど、もう私が悪役令嬢なのは確定じゃん……!)

 

 せめてストーリーや登場人物に詳しければ破滅フラグを回避出来たかもしれないが、スイッターでの受動喫煙程度にしか知らない。

 強いていえば、ヤンデレとか執着系とか、わりと物騒な攻略対象が多かったことしか知らない。

 いや最悪か。

 

 ……フラグ回避しようにも、出来ない。

 

(フラグの狙い撃ちは無理か……)

 

 考える。

 なら、何が出来る?

 私に何ができるんだ。

 考えて、考えて。

 

 グルグルグルグルと脳内の宇宙空間を漂いながら、座禅を組み。

 エンドレスループする問題と追いかけっこをし、謎に現れるレオナルド・ダ・ヴィンチの円形の人体図とか数式とか花畑とかを通り抜け、世界の真理に到達しかけたところで。

 

(あ、そっか)

 

 私はポンと閃いた。

 

(それなら……何があっても平気なくらいに強くなり、権利を持ち、そしてお金持ちになればいいんじゃん)

 

 一周まわって無の境地に至りながら、私は宇宙猫(バカ)の顔でそう思った。

 

 だってもう、死にたくなければそうするしかない。

 

 キレた攻略対象だの魔物だのから切り掛かられても平気なくらいに強く。

 容易く処刑されないくらい、偉く権利を持ち。

 そして、万が一の時は出奔して身を隠しても幸せに生きていけるように、お金を稼げばいい。

 

 そしてどうやら……このふざけたスキルには、それができる可能性がある。

 

(それにだ。ルールをもう一度考えてみよう)

 

───

 

 【悪役令嬢ポイントの獲得ルール】

 

 ①悪役令嬢たるもの、気品ある口調と態度を心がけ、然るべき時には必ず高笑いをすべし。

 ②悪役令嬢たるもの、常に周囲に嫌われるか、あるいは困らせよ。

 ③悪役令嬢たるもの、謀りごとをせよ。

 ④悪役令嬢たるもの、善行を人に気づかれてはならぬ。

 ⑤悪役令嬢たるもの、例え斬首されようとも人に許しを願ってはならぬ。

 ⑥以上のルールを守って行動した場合にのみ、随時、相応の悪役令嬢ポイントが加算される。

 

───

 

(ほら、やっぱりそうだ)

 

 ルールには、「嫌われろ」とか「困らせろ」とは書いてある。

 でも。

 

(──他人を不幸にしろとは、ひと言も書かれていない)

 

 それなら。

 ポイントの為に何かやらかすにしても、私が嫌われるだけで済むのだ。

 

(いや、嫌だけど。嫌われるのも困らせるのも嫌だ。……でも、不幸にしないという自分のルールに従ってなら、頑張れるかもしれない)


 オマケに、この悪役令嬢ルールにはもう一つ良いところがある。

 

(ルール④、悪役令嬢たるもの、善行を人に気づかれてはならぬ。……そう、気づかれなければ、してもいいんだ)

 

 善行をしてもポイントは加算されないから、破滅フラグ回避的には役立たない。

 だが、やっては駄目だとは書いていない。

 そう、ルール③の「企みごと」は、人に気づかれなければ善行でもいいのだ。多分。

 

(そうと決まれば、ポイントをどんどん稼いでいこう。使い方は……)

 

 ナールさんにゆらゆら抱っこをされながら、その肩越しにステータス画面を念じて出す。

 案の定、スキル説明の【悪役令嬢ポイント】の文字がやや青い。

 クリックして追記を読む。

 

───

 

【ポイント交換リスト】

 

☆アイテム

 

・固形食料(極粗悪)……10ポイント

・携帯飲料(極粗悪)……10ポイント

・ポーション(粗悪)……100ポイント

 

☆スキル

 

・「パッシブスキル:悪女の懐(アイテムボックス)」の獲得……5ポイント

 

・「アクティブスキル:悪女のたしなみ(ヘルキャット・マナー)」の獲得……50ポイント

 

・「アクティブスキル:悪女の微笑みヘルキャット・スマイル」の獲得……50ポイント

 

・アイテムボックスの拡張(極小)……500ポイント


・ポイント交換リストのバージョンアップ……100ポイント

 

───

 

(いや、内容微妙! それに結構点数厳しくない!?)

 

 また感情に釣られて泣きまくりながら、私は動揺した。

 

(食料の極粗悪ってなに。どういう意味で粗悪? 怖いんだけど)

 

 だがしかし、生き延びるためには食料が必要だ。

 それがポイントでゲット出来るかもしれないのは、幽閉や追放をされがちな悪役令嬢としては僥倖かもしれない。

 

(あとスキル名にいちいち悪女(ヘルキャット)って入ってるの何? 誰が名付けたのこれ??)

 

 しかもスキル名をよく見ても、文字が青くない。

 内容を確認してからの獲得はできないようだ。

 

 ……うーん。

 せめてもの救いは、アイテムボックスの入手が容易であることと、リストにバージョンアップがあることだろう。

 

 いい加減体力の限界になり、うとうとと寝落ちしかけながら、私は思った。

 

(とにかくもうやるしかない。まずは悪女の懐(アイテムボックス)。次は携帯飲料と食料の確認、……それからリストの……)

 

 そこまで考えて、私は寝落ちした。

 

 なお翌朝、ナールさんの渾身のあやしを無視して考え事を続け、泣いて困らせたせいか、APが1増えていた。

 ……はぁ。ごめん、ナールさん。

 

◇作者からのお願い◇


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