第3話 なんてもんをパッシブさせてんだ
(色ボケ親父は排除したいな。とりあえず、一回ツラを拝んでおこう)
泣く際に「パパ、パパ」と叫んでみた。
すると周囲はすぐに「親の愛が足らない」と嘆き出す。
ママと泣かないのは、忙しいであろう母を呼びつけないためだ。
それをひと月ほど繰り返していると、困り果てた乳母から執事伝手にでも話が伝わったのか、面倒そうな顔をした父親が現れた。
金髪のまぁまぁな美男だが、目付きが濁っている。
特に感慨もなさそうに見やられた。
「これは本当に私の娘か?」
「な……っ、何をおっしゃられるのです!?」
父の第一声に乳母が驚いた声を上げる。
そんな乳母やメイド達の声にも関わらず、父……ゲオルギウスは吐き捨てるように言う。
「私も、その従妹として生まれた妻も、同じグウィネス家の血が流れている。そしてグウィネス家に青い瞳は生まれない。一族全員、全て緑の瞳だ。しかしこれの瞳は鮮やかな青だぞ」
「そ、そうはおっしゃいましても、お嬢様は確かに奥様からお生まれに……」
「だからなんだ? 種など分からない」
……ドン引きだ。
ドン引きだが、これがこの男の、好き勝手するための理屈なのだろう。
クソ親父が部屋から出ていくと、乳母が珍しく私を抱っこした。
お乳を貰う時以外では初である。
「さすがに、お可哀想だわ……。まだ難しい言葉がわからない歳でよかったけれど……」
おや。
なんとなーく事務的な乳母さんだなと思っていたが、今ので同情されたらしい。
乳母になる人の就職動機というのは、育てることになる主家の子供と自分の子供を仲良くさせて、出世させることにあると聞いたことがある。
恐らく、私が明らかに冷遇されているので将来に繋がらないと感じ、接し方に迷っていたのだろう。
しかし、今ので気が引けたようだ。
ちょっと申し訳ない気もするけど、シメシメ、である。
将来は厚遇して恩返ししたいな、と思っていると。
──ピコン! と脳内で音が鳴った。
(……? ん? 今のってステータス画面が出た時と同じような感じだったな……)
耳で聞くのとは違う、脳内の音。
離乳食を取りに部屋から出ていった乳母……ナールさんの背中を確認してから、私はステータス画面を開いてみた。
───
【ステータス】
名前:アナスタシア・フェリーチェリス・グウィネス
レベル:1
種族:人間
加護:なし
称号:なし
役職:グウィネス伯爵家 第二子
状態:健康
MP:10
AP:3
───
(……ん? APが増えてる?)
なんで?
はにゃ、と首を傾げる。
年齢と共に上がるのか、時間で加算されるタイプなのか、なんなのか。
そこで私はあることに気がついた。
(んんん? なんか……APだけ、文字の色が若干違くない?)
画面自体が薄青い上に半透明のステータス画面なので見づらく、最初に見た時は気づかなかった。
APの所をじっと見つめても、指をその辺にスカスカさせてみても、変化は無い。
(ほかの文字は黒いのに、そこだけやや青い文字。……なんか見覚えあるぞ、この感じ)
そう。
例えるなら、昔のインターネットのリンクの文字だ。
クリックすると訪問済みになって紫になるやつ。
(なんか嫌な予感がする。するんだけど、ものすごく気になる)
そう思って、「クリックする」という意識でAPの文字を見た。
すると。
(……おいおいおいおいおい!?)
……ステータス画面に、こんな追記が出現したのだった。
───
【ステータス】
名前:アナスタシア・フェリーチェリス・グウィネス
レベル:1
種族:人間
加護:なし
称号:なし
役職:グウィネス伯爵家 第二子
状態:健康
MP:10
AP:3
【スキル】
EXパッシブスキル:悪役令嬢
───




