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僕と彼女の猟奇的な日常 ――怪物が現れるようになった日常で、歪んだ俺の性格が武器になる? なぜか海外からも依頼が来るようになった――  作者: nnnkkk
第一章 僕と彼女の猟奇的な日常

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第55話 エピローグ

朝の光は容赦がない。

カーテンの隙間から差し込んだそれが、現実をはっきり浮かび上がらせていた。


ユイが鏡の前で止まっている。

「……ちょっと」


声は低く、わずかに不機嫌を帯びていた


首筋、鎖骨、肩口。肌のあちこちに散った赤い痕。


「多すぎ」

目を細めて言う。


ベッドの上で茂はまだ半分寝ている。視線だけが向き、状況を理解するまで数秒。


「仕事なんだけど」


鏡越しの睨み。


「隠れないんだけど」


茂は少しだけ笑った。


「そっちもだろ」


ユイの視線が動く。今度は茂の首元。同じ赤い痕。昨夜の名残。


「……あんたはいいでしょ」


即答。


「私は仕事なの」


「俺も外出るけど」


「違う」


間髪入れずに、

「茂は」


一瞬の沈黙と何かを考える仕草。


「私しか抱かないんだから平気でしょ」


空気が少しだけ止まり、茂は目を細めた。


「理屈になってない」


「なってる」


揺れない視線。


「私は困る。茂は困らない」


茂は小さく息を吐いた。


「今日休めば」


「無理」

「指名入ってる」


それでもユイは少しだけ笑う。


「……ほんとさ」


少しだけ息混じり。


「加減しなさいよ」


怒っているのか、そうでもないのか、境界が曖昧な声だった。







スマホが震えた。

短い振動音が朝の静けさをわずかに揺らす。


ベッドの上で茂が反応した。半分寝ぼけたままスマホへ手を伸ばす。画面に浮かんだ通知を見た瞬間、指の動きが止まった。


差出人。


K市環境回収サービス株式会社。


眠気が一瞬で消え、そのまま開いた。

視線が固定される。


【K市特定外来害獣管理システム:自動配信メール】


件名:【査定確定】駆除事後承認および精算金額の通知(案件:28-KSC-0533)


本メールは、K市委託アジャスターによる現場査定および検体回収に基づき自動送信されています。


■ 対象検体情報

案件番号:28-KSC-0533(特中型《150kg級》 × 2体)

最終ステータス:最終成立/回収受領済


■ 報奨金算定

基本報奨金:¥130,000 × 2体 = ¥260,000

地域危険度加重(市街地/商業施設):¥700,000 × 2体 = ¥1,400,000


報奨金総額:¥1,660,000


■ 貢献度評価《アジャスト判定》

判定スコア:93%(決定打認定)

減算理由:第三者寄与(登録駆除従事者による先行攻撃および接触誘導を確認)

適用総額:¥1,543,800(¥1,660,000 × 0.93)

※本割合はAI同期による寄与算定を基に査定担当が確定したものです


■ 諸費用差引

回収・運搬・衛生処理・行政連携手数料:▲¥144,230

(商業施設内搬出/衛生処理/破棄証明発行/照合データ連携費を含む)

※本案件は複数関与・未登録案件のため、回収・処理費用は関与者に按分されます


【精算対象額】¥1,399,570


振込予定


通常精算《週次バッチ》

毎週水曜 23:59 締め

翌週金曜に一括振込(金融機関営業日)


 [早期振込サービス]

※本サービスは、査定確定(暫定成立額または最終額確定)から24時間経過後に申請可能

※申請後、条件を満たす場合は即時(当日)振込

※市街地補正の凍結・混戦等がある案件は、条件により可否/手数料率が変動します

※振込先:「精算ID(個人照合番号)」照合済み口座

※本査定(貢献割合%)に異議がある場合は、査定確定表示から72時間以内に再査定リビジョンを申請してください。(別途事務手数料)。


K市環境回収サービス株式会社(査定管理部)

K市特定外来害獣対策局・公認アジャスターネットワーク



読み終えた瞬間、茂の表情がニチャリと崩れた。


笑っている。


昨日の現場でも見せなかった顔だった。戦闘中でも、普段でも絶対に出ない種類の笑顔。


異様なほど無防備で、ユイは違和感だけで振り返った。


「……なにその顔」


茂は答えない。

画面を見たまま、笑ったまま。


「キモ」


即答だった。迷いも遠慮もない。それでも茂の視線は動かない。喉の奥で、小さく息が漏れた。


「……やば」


「なに」


茂はゆっくり顔を上げた。

まだ笑っている。


「……ぐふふ」


沈黙のあと、ユイは深くため息を吐いた。


「ほんと分かりやすいよね、あんた」


そう言いながらも、口元だけはわずかに緩んでいた。






外の空気は冷たかった。

茂はアパートの階段を下り、いつもの道を歩いている。


急ぐ理由はない。焦る必要もない。


それでも足は店へ向かう。辞める理由がない。


制度は変わる。環境も変わる。

害獣が出なくなれば稼ぎは消える。

消える可能性がある以上、自分から席を手放す意味はなかった。

それだけの話だ。


信号待ち。ポケットからスマホを取り出す。


通帳アプリ。

¥2,9— — — — —


口元が緩む。


「……」


視線は画面のまま指が動く。


坂口(三和通商)


件名【V-Gel 追加注文】


「V-Gel 10本 お願いします。

普通のやつ」


送信。


何の感情もない操作。

だが口元だけがまだわずかに笑っていた。


アプリを閉じる。指が迷いなく動く。


検索。バラクラバ。


商品一覧。

黒い覆面が並ぶ、顔のない顔。似たような布の顔。


その一つで、指が止まる。

薄手で通気性があり、汗を含んでもすぐ乾く生地……


評価。星4.2。レビューも悪くない。

直後だった。


震動と着信表示。坂口(三和通商)


茂は一度だけ画面を見る。

表示を確認してわずかに眉が動いた。



「……今、話せます?」


いつもの声だった。三和通商の坂口。


「はい」

茂の歩調は変わらない。


「昨日のショッピングセンター、茂くんでしょ。現場にいた客の動画がSNSで広まってる」


茂は何も言わない。


信号が変わる。人の流れに合わせて歩き出す。

否定しない。肯定もしない。


「そうなんですね」


横断歩道。朝の光。いつもと同じ通り。


「Vespa Systems CEOから連絡が来て……」


坂口の声は変わらない。


「CEO……チャーリーが」


短い沈黙。


「……あの槍は、彼から貰った物で」


車の走行音。遠くの生活音。


「あのとき、少し金が必要で」


「それで、君のところに回った」


「……まぁ、そういう話なんだ」


車はそのまま走り続ける。


「一応、共有だけ。しばらく騒がしくなるかもしれない」





To be continued






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ここまで読んでいただきありがとうございました。


「僕と彼女の猟奇的な日常」第一章の完結です


面白かった、続きが気になる、と思っていただけましたら★やフォローで応援していただけると嬉しいです。


作者のやる気とランキングに効きます。

よろしくお願いします!


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