第54話 もう一つの日常
※本話はR15に調整しています。R18版はミッドナイトノベルズに掲載しています。
【R18】僕と彼女の猟奇的な日常 R18
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アパートのドアが閉まる。
金属と木が噛み合う小さな音だけが、やけに鮮明に残った。
ユイは振り返るより早く距離を詰める。胸元を掴み、そのまま引き寄せた。
唇が重なる。
浅く触れるだけでは終わらない。呼吸ごと奪うみたいな深いキスだった。
体温が混ざる。さっきまで死と隣り合わせだった身体の熱が、ここで一気に現実へ引き戻される。
離れない。
ユイの指が迷いなくベルトへ触れた。金属がかすかに鳴る。キスは続いたままだ。
玄関の狭い空間に、互いの呼吸だけが濃く溜まっていく。
「……ほんと」
唇が離れた瞬間、ユイが笑う。隠さない目。
「今日の、ズルいって」
そのまままた口づける。今度は首筋へ。熱を確かめるみたいに、ゆっくり。
膝が床へ落ちる。
視線だけが上を向く。いたずらみたいな笑み。
指先が触れ、布越しの反応がはっきりと伝わる。
茂は視線を落としたまま、それを受け止めていた。
ユイの手が下へ滑る。
呼吸が絡む。距離が消える。
理性ではない。
衝動だった。
身体の奥に溜まっていた熱が、一気に溢れ出す。
小さな声が喉の奥で崩れる。
動きは止まらない。
玄関に押し込められたまま、熱だけが加速していく。
水音が静かに満ちている。
シャワーは止まらない。細い振動が壁の内側で淡く反響し続けていた。
ユイの背は壁へ触れている。逃げ場のない距離。
柔らかい部分だけが、圧を受けてわずかに形を変える。
そこへ茂の体温が重なる。
離れない。
押し付ける力ではない。逃がさない圧。
腰が沈むたび、壁と身体の距離がさらに消える。
冷たい感触と熱がぶつかり合い、感覚の境界だけが曖昧になる。
荒い呼吸が首筋へ落ちる。
熱を逃がす場所を探すみたいに顔が沈む。
ユイの喉で息が揺れる。
拒絶より先に身体が反応していた。
茂の手が腹部へ滑る。迷いのない位置。
そのまま強く引き寄せる。
内部へ逃げ場のない圧。
速度が上がる。
理性ではない速度。衝動だけで刻まれるリズム。
シャワーの水が髪を濡らし続ける。
止まらない。
離れない。圧力だけが加速していく。
視線は揺れない。乱れた呼吸の奥で、ユイはわずかに笑った。
「……ほ……、んと……」
掠れた声が湿った空気へ溶けていった。




