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僕と彼女の猟奇的な日常 ――怪物が現れるようになった日常で、歪んだ俺の性格が武器になる? なぜか海外からも依頼が来るようになった――  作者: nnnkkk
第一章 僕と彼女の猟奇的な日常

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第4話 領収書は出ない

外はもう薄暗かった。


アパートの階段を降りる。冷えた空気を吸い込んだ。


胸の内側の束が重い。

百万円。

感触だけが強い。


スマホが震える。

坂口。


メッセージは短い。『紺のクラウンだから』それだけ。


道路に出ると、車の音が増えた。歩道に歩く人はまばらだ。

コンビニに学生がたむろっている。

パチンコからおっさんが笑顔で出てきた。

前と変わらなく見える雰囲気。


遠くでサイレンが鳴った。

一瞬皆が振り向く。


ビルの共有駐車場は建物の横に広がっていた。

車種はばらばらだ。

カローラ、プリウス、キャラバン。華奢なパイプバンパーを付けた車が多い。


エアロメーカーは害獣さまさまだな。


視線を動かして車を探す。


端の方に、地味な紺のセダンが停まっていた。

何系だっけ?あれ。アスリート?

車内に人影があって、スマホの光が一瞬だけ点いた。

怪しすぎる。


近づくと、運転席の窓が少し下りた。

さっきの男。

坂口。


「持ってきた?」


茂は頷いた。


「はい」


男は車を降り、後ろに回った。


トランクを開ける。

長物のケースが一つ、横たわっていた。


「確認させて」


茂は上着の内側に指を入れ、札の入った袋を引き抜いた。


袋の口を少しだけ開けて、端の札だけ見せる。


男はそれ以上求めず、留め具に指を掛けた。

ひとつ外し、もうひとつ外す。


ケースが開く。

一瞬だけ金属が光った。だが、すぐに黒い表面へ沈んだ。


シャフトは黒い。ドライカーボン特有のマットな質感。

迷いなく指を滑らせ、チタンジョイントに刻まれた刻印の位置まで一気に持っていく。


Vespa Systems

Interdiction-04


線は細く、精密だ。高級時計の裏蓋のような細工。


ブレードは短い。切るためじゃない。

刺すための形。


茂は刃先を見て息を吐いた。


次にクロスバーへ視線を移す。

突進を止めるための物。弾けば硬質な音がでる。


ケースの中に同じ径のシャフトがもう一本収まっている。


二分割、接合部はチタンの削り出し。

エンドミルが走った線が美しい。


男が上着のポケットから筒を三本出した。


「V-Gel、三本」


男は短く言った。


「言うの忘れてたけど、これは領収書は出ないよ」

「大丈夫だよね?」


微妙に不安そうだ。

慌てすぎだろ。店に売るときどうするつもりだったんだ?


店長嫌がるの分かる気がする。


「大丈夫です」


男はケースを閉め、留め具を噛ませた。


上着の内側から札の袋を出して渡す。

男はすぐ数え始めた。速い。

慣れてるな。


十束目で指が止まる。


「確かに」

ホッとしたような顔。


「いいです?」


坂口が頷いた。

ケースの取っ手を握った。


意外に重い。ケース分か。


V-Gelの筒を三本、ポケットに突っ込んだ。

これも重い。


三本。使ったら終わる。


「V-Gel、次も買えます?」


坂口は少しだけ考えて声を出した。


「欲しい時は連絡して」


なんとかなりそうだ。


坂口は札をまとめると上着の内ポケットに差し込んだ。

トランクを閉める。


「じゃ、また」

短く言うとそのまま運転席に戻り、エンジンを掛けた。

セダンがゆっくり動き、駐車場の出口へ流れていく。



ケースのグリップを強く握る。その感触だけが現実だった。



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