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僕と彼女の猟奇的な日常 ――怪物が現れるようになった日常で、歪んだ俺の性格が武器になる? なぜか海外からも依頼が来るようになった――  作者: nnnkkk
第一章 僕と彼女の猟奇的な日常

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第40話 結果だけは同じ

蛍光灯の光は均一で影を作らない。夜でも昼でも、同じ明るさになる。

シャワーを浴びた後の匂いが、まだ残っている。


ドリンクコーナーの前に立ち、缶コーヒーを一つ取る。

ブラック。

銘柄は多分有名なやつ。


次にレジ前の棚でミントタブレットを二つ掴んだ。


レジに向き直る時、スマホが震えた。

短い振動。


画面を見ないまま、会計に並ぶ。

前にいる客は一人でスマホをいじっている。


「――――円です」


店を出てから、画面を見る。

通知は一件。


差出人:K市環境回収サービス株式会社


件名:【回収精算】買取金額(確定)のご連絡


本文は短かった。

丁寧な言葉より先に、数字が出てくる。


対象:特大型級《450kg級》

買取金額:¥———


表示が途切れる。

地下に入ったわけでもない。

通信の問題だ。


再表示、数字が揃う。


茂は、缶のプルタブに指をかけたまま、動かない。

計算はしない。


ベース・補正・控除・振込予定日だけを読み取る。すべて、想定の範囲だった。


缶を開ける乾いた音。

飲む、苦い。


歩きながら、画面を見る。数字はもう見なかった。

項目だけを追う。


控除。

精算方法。

振込予定日。

早払いの選択肢。今は触らない。


画面を閉じ、ポケットに戻す。

缶はもう空だ。


頭の中で、在庫を並べる。

V-Gel。5本

刃は問題ない。槍に歪みもない。


服の袖を引く。落ちきっていない汚れがある、洗えば落ちる。

買い替えるほどじゃない。


金の使い道はいくつか浮かぶ――補充、新しい装備、ユイと――


どれも、今決める必要はない。それでも浮かんでくる。


信号待ちで足を止める。赤が長い。


新しい通知が来るかどうか、少しだけ意識する。

来ない。

そう言うことか。


青に変わる。

歩き出す。


今やることは、今決めないこと。それだけでいい。

次に動くのは、条件が揃ってからだ。







街を歩く。

腹が減った、どこで何を食うか考える。


交差点を渡る途中、視界の端で光が動いた。ビル壁面の大型ビジョンだ。

遅れて、ニュースの音声が重なる。他県の映像だった。


W県の市民公園か競技場。広い芝生と、避難線の外側に固まる人影。


画面の中央に、例外級《2000㎏級》がいる。

重心が低い。動きは鈍いが、地面を踏むたびに揺れが走る。


25式偵察警戒車の砲塔が映った。


Mk 44が動きを止め次の瞬間、砲口が火を吐く。

間隔の詰まった連射。


30ミリ弾を数発。


拳大の弾丸を受け取った超大型は、その場で崩れた。

力が抜けたように落ちる。脚が折れ、胴が傾き、動かなくなる。


歓声もアナウンスもなく、映像だけが無音で流れ続ける。


倒れた巨体の背後で、何かが走った。


小型。

影の裏から、地面を掠めるように飛び出す。

速い。

逃げる方向も、一直線だ。


砲塔がわずかに動き、角度だけを調整。間を置かず、再び砲口が火を吐いた。


乾いた音が短く重なる。

次の瞬間、画面が弾ける。


小型だったものは、その場で砕け散った。破片が散り、土が跳ねる。

爆発というより、ばらけた。


カメラが遅れて追う。だがそこにもう形は残っていない。

砲身はすぐに戻り、次を探す動きを見せた。


それだけ。


映像は切り替わる。

別の角度、別の現場。


茂は立ち止まったまま映像を見ていた。







大手カレーチェーンのカウンター席。


茂は、チキンカツカレーを前にしていた。

ダブルのライス800グラム。福神漬けをこれでもかとよそった。


スプーンで衣の端を切り、ルーを絡めて口へ運ぶ。

大きな皿の縁までソースが広がり、揚げ物の匂いが強く立ち上がる。


スマホは、音を消し立てかけたまま。動画が切り替わり、別の映像になる。


レクサスLX。


原型は分かるが、装備は別物だ。

前後に太いパイプガード。車高は上げられ、タイヤも異様に太い。


LXが画面の端から飛び込んでくる、減速する様子はない。


大型上位級の横腹に当たる。

鈍い衝突音と同時に、撮影者の足が少しだけ退き、画面がわずかに傾いた。


車両は、その場で静止した。

フロントは潰れ、ボンネットは折れ、ドアの隙間が歪んでいる。


害獣は吹き飛ばされ、数メートル転がる。


だが、死なない。呻くように身をよじり、腹が上下する。

瀕死だ。


周囲に人が集まる。ギャラリーがスマホを掲げ近づく。声を上げながら指をさしていた。


警察がいる。

GM6対物ライフルを構えた人間。

近くの車両には、KPV重機関銃が載っていた。


撃たない。

ただ、待っている。


LXのドアが開き、中から男が引きずり出された。


重傷なのか自力で立てない。


白いカンドゥーラに、同じ白のクーフィーヤ。サングラスは外れていない、手首には金無垢の時計。


白い服に血が付いているが金色は鈍らない。


周囲がざわつく。拍手する者。歓声を上げる者。

事故でも成功でもここでは同じだ。


茂は、咀嚼を止めない。視線だけが、画面と皿を行き来する。


――痛そうだな。


それだけだった。


遠い国の話だ。条件も、数も、装備も違う。


それでも倒せるという結果だけは同じだった。


スプーンが止まる、最後の一口。

そして皿になにもなくなった。

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