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僕と彼女の猟奇的な日常 ――怪物が現れるようになった日常で、歪んだ俺の性格が武器になる? なぜか海外からも依頼が来るようになった――  作者: nnnkkk
第一章 僕と彼女の猟奇的な日常

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第1話 それは動物だった

最初は動物だった。


そう呼ぶのが一番早い。


誰かがそう言うと、全員がそれに乗れる。

だから最初の動画のコメント欄は、動物で埋まった。


「熊」


「鹿だろ」


「ゴリラみたいだった」


「猪だって」


「いや角あった」


「二足で立ったの見えた」


言葉だけが増える。


映像は短く距離がありブレている。

駅前には倒れた人間と血と距離を取る声だけがあった。


次の動画は高速道路だった。

止まった車列の間を、四つ脚が走る。


次は住宅地の公園。次は線路脇。場所だけが増えていく。


次の動画が来る。

角のあるもの、前脚が妙に長いもの、群れで走るもの。

もう同じ「動物」では括れなかった。


しかも出る場所が読めない。住宅地でも山でも関係なく出る。


すぐにもうどこで起きたかを追えなくなった。

同時に起きすぎた。

通報と救急要請だけで、警察無線が埋まる。


それでも社会はいつも通りの顔をしようとして、いつも通りの時間に出勤しようとして――途中で折れた。


昼過ぎ会見が開かれた。


首相の顔は固く、官房長官の声は乾いている。

質問が飛び記者は叫んだ。


だが答えは増えなかった。


『現在、確認中です』


『関係機関と連携し、調査中です』


『危険な動物の目撃情報があるため、不要不急の外出は控えてください』


政府は断定しない。


動物という言葉は、現実逃避に近い整理だった。


同じ日のうちに世界中から似た映像が流れてきた。


映像はある。痕跡も死体もある。だが出てきた瞬間だけがどこにもない。

監視カメラの死角でも、偶然でも済まない量だった。


ただ現れる。減らない。出入り口だけが映らない。

それを人は、ゲートと呼び始めた。



正体不明の生物と書けば社会が割れる。

だから国は理解できる囲いを作った。


害獣。


熊やイノシシや鹿と同じ、法律が扱える名前。

ゲートから出た獣は、害獣にされた。

その瞬間から、死は災害ではなく、帳簿の上では事故に並べられた。


軍や警察を国内で動かしやすい国は、初動が違った。


人員、予算、制度。

足りない国から、生活の方が削れていった。


一か月も経つと、差ははっきり出た。

同じ現象を受けても、立て直せる国と、削れていく国に分かれる。


日本は、削れていく側に寄った。


自衛隊は動く。災害対応として当然だ。


だが、臨時出動と恒常的な増強は違う。

一時的に動かすことはできる。だが、増やし続けることはできない。


守れない場所が増えれば、次に生まれるのは自衛だった。


道路も線路も、止まれば社会の方が死ぬ。


だが全ての地点に、警官も隊員も置けない。

国は危険区域と警戒区域を増やし、あとは自己責任にした。


責任の形を作ったあとで、ようやく道具を出す。


銃ではない。代わりに、銃以外を緩める。護身具と防護具を、害獣駆除の文脈で認める。


現役のハンターと猟友会が、最初に現場へ出た。

だが数が足りない。

都市は広く、獣は多すぎた。


こうして国は体裁を保ったまま、国民に刃を渡した。


――自分の命は、自分で守れ。


敗北宣言には見えない形に整えられた、最低限の生存戦略だった。


害獣として扱えるなら、行政は予算をつけられる。

緊急予算の名目は、駆除と治安維持だった。


失業者が増えていた。

輸送が止まり、店が閉じ、工場が止まり、仕事が消える。


国は、駆除を治安対策と失業者対策にした。


危険な仕事に値段をつけるため、仕組みを急いで作る。


駆除証明アプリ。

位置と時間を残し、駆除成立を記録する。


国は報奨金と危険手当を用意し、駆除する人間を制度の中へ入れた。


登録駆除従事者。

登録すれば最低限の保護がつく。代わりに義務が増える。


縛られるのが嫌な人間は必ず出る。

制度の外に流れた者たちは、自分を別の名前で呼んだ。


未登録駆除従事者。


恩恵はない。

その代わり、命令も受けない。


そしてもう一つ、現実が噛み合わなくなる。


死体だ。


駆除が増えれば、死体が増える。


回収が追いつかない。

行政が委託していた回収は、すぐ飽和した。


ここで市場が生まれた。

民間の回収業者が、害獣の死体を扱い始める。


未登録は制度上、国へ直接出せない。


未登録は死体を業者に売る。

業者は回収して、記録を揃え、案件番号に紐付けて申請する。


報奨金との差額が、業者の利益になった。


こうして駆除は国家の制度であり、同時に制度の隙間で回る民間ビジネスになった。

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