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僕と彼女の猟奇的な日常 ――怪物が現れるようになった日常で、歪んだ俺の性格が武器になる? なぜか海外からも依頼が来るようになった――  作者: nnnkkk
第一章 僕と彼女の猟奇的な日常

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第17話 首輪の太さ

ページ内検索を開き文字を打った。


登録者 行動規範


Enter。


黄色いハイライトが点々と飛び、画面が自動でスクロールする。


[登録駆除従事者 行動規範]

[現場対応基準]


白い紙に書かれた文字が、妙に攻撃的に見える。

命令が、丁寧語を被っているだけだ。


[現場対応時の基本]

・危険区域の識別およびマーキングを優先すること

・退避誘導を優先すること

・群衆形成を抑止すること

・誤射防止のため、射線管理を徹底すること


誤射防止の四文字で一瞬だけ目を止めた。


駅前で飛んでいた矢。

跳ねていた石。

割れたガラス。


あの混乱で射線管理なんて言葉は冗談だった。


ページを少し下げる。


次の見出しが出てきた。


[警察到着前の初動対応(暫定統制)]


そこで指を止めた。


――これだ。


[※警察到着前の初動は登録駆除従事者が暫定統制を行う]

[暫定統制権は「現場安全確保」に限る]

[駆除行為の実行は各従事者の裁量とする]

[警察到着後は指揮権を警察へ移管する]


茂は息を吐いた。


昨日の駅前。

確かに最初に動いていたのは登録の連中だった。


命令されて動いていたんじゃない。

動けるから動いていた。


そして、警察が来た瞬間に空気が変わった。


あれが「移管」だった?


さらに読む。


[警察到着後の指揮系統]

・警察官(現場統制責任者)は登録者に対し、行動停止・退避・再配置を命ずることができる

・正当な理由なく命令に従わない場合、登録資格は停止または取消の対象となる


ページを少し下へ。


[携行装備]

・活動時ボディカメラ常時ON(義務)

・映像データの改変・削除は刑事罰対象

・現場での視界確保を妨げる装備は禁止


ボディカメラ。


映れば、厄介だ。

映らなければ、もっと厄介だ。


矢が刺さっていた。

石も当たっていた。


映像があれば、登録者が勝つ。フリーは切り捨てられる側だ。


茂は次の項目で目を止めた。


[登録者の責任(事故・二次被害)]

・誤射・過失による第三者負傷が発生した場合、当該登録者は即時活動停止

・調査終了まで復帰不可

・重大過失の場合、登録取消および刑事・民事の処理対象


駅前の誤射を思い出す。


あの場では、誰もが事故を起こせた。


事故は誰でも起こす。


ページを少し下げる。


[未登録者の扱い]

・未登録者は現場統制の対象外とする

・ただし危険行為が確認された場合、警察は排除・拘束を行う

・未登録者が討伐に関与した場合、貢献判定は回収ログおよび現物痕に基づき査定する


対象外。


茂はその言葉を舐めるように読んだ。


――つまり、放置。


守らない。

命令もしない。

勝手に死ね。


その代わり、勝手に動ける。


椅子の背もたれに身体を預けた。昨日の駅前をもう一度組み直す。


登録なら。

最初は自由に動ける。むしろ動けと言われる。

だが警察が来た瞬間、首輪が付く。


フリーなら。


最初から最後まで首輪はない。

守りもない。


死んでも、その場で終わりだ。

どっちが得かじゃない。


どっちが自分か。


ページを閉じた。PDFが消え、ブラウザのトップに戻る。


その瞬間、急に現実が戻ってきた。


バイト先のバックヤード。

段ボール。湿った埃。

遠くでレジの音。


調べるのは終わりじゃない。

ただ、方向が決まっただけだ。


――自分はまだ、フリーでいい。


少なくとも、今は。


登録の仕組みは分かった。

最初は自由。途中から首輪。


問題はその首輪の太さだ。


ページ内検索をもう一度開き、今度は短く打った。


停止


Enter。


黄色のハイライトが、画面の下の方へ飛ぶ。


スクロールが止まり、項目が出る。


[登録資格の停止/取消]

[違反行為一覧]


茂は目を細くした。

箇条書きが続く。


[即時停止]

・現場統制責任者の命令違反

・映像ログ(ボディカメラ)の欠落

・許可外の武器携行

・現場での暴行、脅迫、威嚇

・民間人を盾にした行動

・危険区域外への射撃行為


茂は「映像ログ欠落」の行で指を止めた。


欠落。


つまり――電池切れでもアウトだ。

通信不良でもアウトだ。


「たまたま録れてなかった」は通らない。


口の端が、わずかに上がった。


登録は「守られる」制度じゃない。

記録される制度だ。


記録されるから守られる。

だが記録できなければ、守られない。


次の項目。


[取消]

・重大過失による死亡事故

・意図的なログ改変

・虚偽申請

・反社会的勢力との関与

・登録証の貸与/譲渡


昨日の駅前の顔を思い出した。


怒鳴っていた連中。

興奮していた素人。

矢を撃って、外して、笑っていた若い男。


あいつが登録だったら、即死だ。


制度に殺される。


逆に言えば、登録に向く人間は決まっている。


真面目か。

従順か。

壊れない奴だ。


ページを閉じようとして、最後の欄が目に入った。


小さな枠で囲われた注記。


[登録者の秘密保持義務]

・制度運用上の内部情報を外部に漏洩しないこと

査定担当アジャスターとのやりとりをSNS等に掲載しないこと

・違反時は停止対象


小さく鼻で笑った。


――都合が悪いから口を塞ぐ。


そういう仕組みは、どこでも同じだ。


画面から目を離し、横に立てた黒いケースを見る。

茂は椅子から立ち上がり、ケースの持ち手に指をかけた。


重さが手に戻ってくる。


もう迷いはなかった。


登録はいつかのための制度だ。


だが今は違う。


今の自分に必要なのは保護じゃない。

自由でもない。


――勝つこと。


デスクトップの電源を落とした。

モニターが暗くなり、バックヤードの匂いが戻ってくる。


調べ物は終わった。


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