第97話 第19章 未来の財産 完 5 貧困の壁
モチオは街頭で歌いまくっていた。
一人カラオケの延長か、ストリートミュージシャン気取りか、政治演説を
完全に無視
生意気にも足元にはチップの箱。
モチオ「金を自由に使いたいなー はい! 政府機密費!!」
がり勉猫:「また始まった! コンプラソング!」
コツ勉猫:「国民的漫画はダメ! 絶対!!」
ネコロボ:「モチオさんーーー もうやめてーーーー」
社会派替え歌は、なぜか民衆の心に刺さった。
しかし、選挙の結果は
……当然の落選。
コツ勉猫:「ただ、得票率2%超えで供託金が返ってくる。これだけでも奇跡ですわ」
歌いすぎて声が潰れたモチオは「ガガガ」と掠れた音を出すのみだが、
その表情は満足げだった。(*『俺のソウルは届いたニャ!』)
だが、街の空気は変わり始めていた。
「生活保護でもこのケースは可哀想」
「お金は自力で出すって言ってるのに」という声。
同時に「食洗器(食戦機)うちも要る!」
「角の使いどころの難しさ、よく言った!」という斜め上の支持も。
中には「アカデミアのかの名言を汚すな!汚れ猫!!」という厳しい叱咤もあったが、
モチオは「ガガガ(すみません、そういう作風でして…)」と謝るしかなかった。
そんなころ
がり勉猫:「クラウドファンディングにも少し動きがあるようです」
ネコロボ:「ですが、まだ全然足りませんね」
後日、事務所にユキコを呼び出す。
がり勉猫:「すみませんユキコさん、これくらいしか集まりませんでしたが……」
ユキコはがり勉猫から遠慮しながら資金を受け取る。
がり勉猫
「子猫の保護はクラウドファンディングは集まりやすいですが、人間の進学は『バイトしろ』、『自分で何とかしろ』でなかなか集まりにくい、皮肉ですね。」
がり勉猫は下を向いた。
コツ勉猫:「やはり、ですね。基本的には親と世帯を分けないとダメみたい。大学の寮は決まった?」
ユキコ:「はい! ありがとうございます! 教えてもらった通り、世帯分けして頑張ります」
ネコロボ:「辛いことがあっても頑張ってください」
コツ勉猫:「ピンチの時は、いつでもご飯を食べにいらっしゃい」
モチオ:「ガガガ ガガ ガガ(俺の歌は聞いたか? 最高だろう?)」
がり勉猫:「モチオさんが『応援してる、歌のチップは全部お前に渡す』と言っています」
モチオ:「ガガガ!!(嘘だろ!?)」
問答無用で、歌のチップ23,800円がユキコに手渡された。
ユキコ:「モチオさんのおかげで有名人になっちゃって、食料カンパも頂いて……恥ずかしいけど、みんなの応援を背負って頑張ります! また遊びに来ます!」
コツ勉猫「これからも ずっと私の生徒だからね!たまには頼ってね!」
はい
夕暮れに去ってゆくユキコの影は一歩ずつ力強く
そして不安げに揺れる。
それを見送る猫達とロボット
ユキコの背中は語っている。
将来を夢見ても、貧困という壁が立ちふさがる現実
その現実に打ち勝てなんて言葉こそ
今の時代が最も嫌う 根性論かもしれない。
少なくとも私たちは、それでも立ち上がろうとする若者を
偏見などで阻むことは許されない。
今はまだ誰も知らない。
20年後
ユキコは
日本経済を揺るがす 大発明をすることを。
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この国の財産とは、一体何だろうか
円安になった米国通貨の為替益か
それとも、
貧困に打ち勝ち、自立しようとする若者か
この国の財産とは、一体何だろうか
第19章 未来の財産 完
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