第88話 第18章 5丁目のシンデレラ 1 花よりカニ
モチオは上機嫌である。パンフレットを見てつぶやいている。
モチオ:「おお! カニもいいなー 一回でいいから生で食べてみたいニャ。テレビでやってるみたいな……ニャ――」
陰で見守るがり勉猫たち。
ネコロボ:「モチオさんご機嫌みたいです」
がり勉猫:「コツ勉猫がみんなで温泉旅行に行こうと提案してくれましたから……」
コツ勉猫:「モチオさんにプランを任せてよかったかしら……」
モチオ:「草津にしようか、別府にしようか、登別も捨てがたいニャ……」
その時……ガラガラ。
一人の女が相談に訪れた。
モチオ:「お前は目が見えないのか。表札を見ろ。『店長がうまい出汁を出せるまでしばらく休業』って書いてあるだろうが!」
女は高飛車に言った。
女:「せっかくこんな小汚いところまで来たのに、帰れですって!!」
モチオ:「お前は人の言葉を2回聞かないとわからん馬鹿か。そうだ、究極の麺づくりの邪魔だ! 帰れ!」
がり勉猫:「出汁なのか、麺なのか、どっちでしょう」
コツ勉猫:「いえ、そのどちらでもありませんわ……」
女:「私がインフルエンサーだと知ってのこと!! この事務所だって私が晒せば速攻でつぶすことになるわよ!」
モチオ:「そうか……病気なら病院へ行け。家で寝てろ。こっちまでうつすな、旅行に行けん」
ネコロボ:「モチオさん、完全にインフルエンザだと思ってますね」
がり勉猫:「ですね……」
女:「私はインフルエンサーよ!!」
モチオ:「インフルであることには変わらん。こっちは迷惑だ、1週間隔離してろ」
女:「依頼がなくて困ってると思ってきてあげたのに!」
モチオ:「お前みたいな女はコンビニよりある、いちいち探さんでもいい。増殖しまくってカニバリして自滅しとけ。俺はカニを食うけどな」
女:「フォロワーは30万人!!! どう!!」
モチオ:「不良在庫抱えて大変だな。ということで、俺はチャーシューを極めるので帰ってくれ」
女:「私の依頼を受けたら宣伝してあげる! お客さん増えるわよ!」
モチオ:「いらん。そんなことしたらますます旅行に行けん。せっかくコツ勉猫もがり勉猫も時間を空けると言ってくれてるんだ。このチャンス、逃すまい!!!」
モチオ:「とっとと帰れ! 俺は前歩きする奴に用事はねー。俺は横歩きする奴しか認めねー!! 30万だか40万だか知らんがオキアミ連れてどっかに行け。俺は一匹のカニに全身全霊を賭ける!!!」
女:「こんな汚い場所!!で、なんで偉そうに言われなきゃいけないの!」
モチオ:「じゃあ、なんでこんな汚い場所に、お前は固執する。ツボに固執するタコには用事はねー。めんどい、ネコロボ、ロケットランチャーだ!」
女は逃げていった。
モチオ:「うーん、タラバか、ズワイか、越前か……悩む……悩む……」
ネコロボ:「いや……そんな機能はありません……」
がり勉猫:「そんな機能つけたら国から認可されませんよ……」
そんな中、フォロワーから抗議の電話が鳴り響く!
A:「真由美さんのX見たけど、お前な!!」
モチオ:「ちょっと待て、オキアミA……お前の出身どこだ!」
A:「岐阜だよ!」
モチオ:「飛騨牛はうまいか? 下呂温泉の効能は? カニも出るか? なんのカニだ?」
A:「えええ!!?? しらねーよ! でも下呂温泉はいいぞ……」
モチオ:「そうか……なかなか捨てがたい。でさー」
ガチャ。
B:「真由美さんになんてひどいことを!!」
モチオ:「おおお、お前、大分出身か! 待ってたぞ! 別府温泉は……」
モチオはこの後、抗議の電話をすべて「旅行先として良いか?」という相談に切り替えた。
むしろ電話を折り返して聞いたりもした。
電話はやがて収まった。
モチオ:「うーん……悩ましい……」




