第87話 第17章 命の炎 5 完 たぎる炎
真夜中。
当直の看護師たちが動画を見ている。
看護師1:「この動画バズってるらしいよー」
看護師2:「知ってる!知ってる!!」
看護師3:「馬鹿なのに顔が可愛いから許してっていいねー。世の中不平等って、めっちゃウケる!!」
看護師4:「またこの歌に乗せるから、めっちゃ皮肉だよね。もしかして策士?」
そこへ救急患者が搬入される。ヒロシはICUに運ばれ、懸命な延命治療が施された。
なぜか必要以上に看護師が集まり、協力している。
「ほら、やっぱり……この人……動画の人だ」
「うそうそ、本当だ!……貴方の動画見ました。最高でしたよー。だから、がんばってー……」
しかし、ヒロシはとうとう天に召される。
その寸前、外からガラス越しで見ているモチオたちに、最後のサムズアップをするヒロシ。
最後は……少し照れ、笑い、そして少し誇らしげな表情をしていた。
ヒロシの遠縁の者がささやかな葬儀を行う。
モチオたちも参列するが、会場は複雑な表情に包まれていた。
遠縁者:「これしか、写真がなくて……」
遺影はバンジージャンプで絶叫し、顔が思いっきり歪んだ写真だった。
モチオ:「さいこーじゃねーか、ヒロシ……」
そこにはあのお見合い相手も参列していた。
お見合い相手:「私、実は好きな人がいる。でも無理やりお見合いさせられてたんです。親には強く言えなくて……そんな時に、ヒロシさんが背中を押してくれたんです」
「(僕は死ぬけど)君は死にましぇーん、だから貴方の好きな事を!……だったかしら」
がり勉猫:「名言ですね……でも、しぇーんって何でしょう」
コツ勉猫:「なんかのドラマで聞いたような……」
モチオ:「ちょっと違う! おしい! おしいぞ、ヒロシ!!でもちょっと違う!」
ふと見ると、動画の信者らしき見知らぬ参列者も数名来ていた。
遠縁の者からモチオに手紙が渡される。
「人生の中でこの半年が一番楽しかった。僕はきっとわからないと思うけど、僕の最後、美人看護師に囲まれて眠ったかどうか、ちゃんと見ててくださいね。あとこれ、約束の5億です」
中にはヒロシの全財産である100万円が入っていた。
モチオ:「あと4億9千900万足りんわ、バカヤロー……。ちっ、あいつ、美女に囲まれた最後を見せびらかしやがって。全く羨ましい限りニャ。何がグッドだ、自慢しやがって……」
春の日。
田舎の山奥にヒロシの墓はひっそりと立っている。
自然に溶け、淘汰されたはずのヒロシ。
しかし、そこには絶えず花が手向けられていた。
「マジでウケるな」
「俺、これあののど自慢でやる根性ねーわ」
「アンチルッキズムの鏡だな」
「地下総合格闘の戦士だったって噂だよ」
「根性が違うな、尊敬するわー」
ヒロシの死後1年、その動画はバズり続けた。
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いづれ死ぬという事実は変えられなくても
どう生きたかの事実は変えられる
そんな祈りが私たち先人たちの遺言かもしれない
モチオ相談所 題17章 命の炎 完
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