第74話 第15章 父親が守りたかったもの 3 理解されない美学
モチオ「確かに話し合いなど意味がないな……」
え??
え???
ええ!!!!!!!!!
モチオ「終わりだ、終わり」
コウスケ「なんなんだよ! お前はそうやって散らかしておいて、都合が悪くなったら逃げるのかよ!」
モチオ「あああ、俺は逃げる。話し合いに意味はないからな」
コウスケ「お前は本当にクズだな!!!」
モチオ「俺がクズなら、お前はおしゃべりクズだな……しょーもねぇ」
モチオは心底呆れ果て、大きくため息をついた。
「めんどいが金をもらってる。仕事してやるか……はぁ」
モチオの鋭い視線が飛ぶ。
「コウスケ、お前男だろ? オマケの……そこの物理眼鏡!! お前もだ」
がり勉猫がびくりと肩を揺らす。
モチオ「親父が何を考えてるか、言葉にしねーとわからないのか? 態度を見てもわからないのか? そりゃー『出来損ない』と言われるわ!」
「『幸せなら手をたたこう』だ! 幸せなら態度で示そうよ、だろ! お前らは『幸せならいちいち細かくわかるまで説明してくれ』か! それじゃーこの歌、100番あっても足りんわ!」
「男は背中で語る美学、男は態度で示す美学だ。お前らは男なのに、親父どころか男の美学も理解してやれねー。俺は親父に同情しかしてないね!」
コウスケ「お前に親父の何がわかって言うんだ!!」
モチオ「ほう、馬鹿の上塗りか。まあいい、馬鹿をからかうのは俺は嫌いじゃない。じゃー親父の趣味は?」
コウスケ「確か……時計のコレクションだ!」
モチオ「そうか。なら会って親父の腕時計を見てみろ。それでもわからんなら話にならん。以上だ」
「出来損ないにこれ以上話す内容はない。じゃーな。……ついでに物理眼鏡、お前もだ!」
モチオ「ネコロボ、コツ勉猫、馬鹿は放っておいて帰るぞ。飯だ、飯……」
後ろ髪を引かれるネコロボとコツ勉猫を残し、モチオは背を向けた。
コウスケとがり勉猫は何も言えず、ただその場に立ち尽くしていた。
帰り道。
ネコロボ「モチオさん、お父様の時計が何か関係でも……」
モチオ「まあ、ネコロボに美学は難しいな。あの親父、時計が趣味? 笑わせるな。見たところ、まあ2000円ぐらいだろうな」
ネコロボ「えっ……」
モチオ「身なりを見てみろ。あれでコウスケに塾や習い事、何個もさせられる経済力があると思うか? それが親父の望み? 理想の押し付け? あいつは何にもわかってねー単なるガキだ」
「親父の本当の望みは、いい時計をいっぱい欲しい、贅沢したい、だ。安物の時計、安物のスーツなんて会社で赤っ恥だ。若い女子社員に笑われる……そんなのは親父が一番知ってる」
「……だがな、あの親父は家族最優先だよ。笑われようが気にしねぇ。そういう種族の堅物だ」
ネコロボ「美学って……難しいですね……」
そんな会話が流れる通りでは。
客の女「あなたの態度が気に食わないの! 謝罪の姿勢がなんか腹立つの!! 」
店員の男はただひたすら、頭を下げ続けていた。
道を通り過ぎる中学の制服は進学校で有名である。彼らは、”カッコ悪い”と面白そうに指をさしたり、スマホで様子を撮影していた。
彼らがいくら難解な数学を解こうと
店員の男が何に頭を下げているのか、その答えがわかるまでは、
少なくとも10年はかかるかかもしれない。
【ネコロボから読者のみなさまへのお願い】
ネコロボ「ここまでお読みいただきありがとうございます!もし「続きが気になる」「おもしろい」と思っていただけましたら、画面下部にある【ブックマークに追加】や、評価の【★★★★★】をタップして応援していただけると、執筆の大きな励みになります!」




