第68話 第14章 水槽の金魚 2 約束
「スキャンだ! ネコロボ!」
ネコロボ:「部屋の中にはバリケードがあります。ベッドが挟まれていて、ドアが開きません」
モチオとネコロボは、マサシ君の部屋のドアの前に立っていた。
モチオ:「おい、マサシ。学校行け! これで俺は帰って寝れる! だから学校行け! お前のためじゃない、俺のためだ!!」
反応はない。
モチオ:「そうだと思った……。今日はな、強力なロボットを連れてきている。無駄な抵抗はよせ! 人質を解放しろ!!」
ネコロボ:「……それ、引きこもりじゃなく、立てこもりです」
反応はない。ただ、ドアの向こうで何かが投げられたような「ドン」という鈍い音が響く。
モチオ「お前がそのつもりなら……こっちも仕方ないニャ!」
「ネコロボ! ロケットランチャーだ! ドアをぶっ壊せ!」
ネコロボ:「ウゴー―!!」
無駄に大きい機械音が、さも出力を上げているかのように鳴り響く。
そして、どこからか謎のナレーションがカウントダウンを開始した。
発射まで――「30秒前」……「25秒前」……「20秒前」
ドアの向こうでドタバタと慌てる音が聞こえる。
そして。
ガチャ。
ついにドアが開いた。
ネコロボ:「モチオさん……なんか騙してるみたいで、かわいそうです。何度も言いますが、ロケットランチャーなんて出ませんよ」
モチオ:「世の中、結果がすべてだ! そうだろ?」
マサシの部屋にズカズカと踏み込むモチオとネコロボ。
マサシ:「誰が来ても、何を話しても、僕は学校に行きたくないだけ! 無駄だよ! まず話をしようとか……もう、うんざりだよ!」
ネコロボ:「(まさか自分がいじめを受けている、誰から受けているなんて言うわけありません)」
ネコロボがモチオに小声で耳打ちする。
モチオ:「はあ? そもそも俺は、お前の話なんて聞きに来たつもりは一切ない!!」
「え?」と、呆気にとられるマサシ。
モチオ:「俺には作戦がある!!! その話をしにやってきたんだ!!! 作戦会議ニャ! 話し合い? 気持ち? かったりーーー!」
マサシ:「???」
モチオはマサシに、おもむろに「作戦」を伝えた。
モチオ:「とりあえず、俺の連絡を待て。それまで学校行くな! 絶対だぞ! わかったな! 絶対学校行くな!! フリじゃないからな!!」
ネコロボ:「いや……不登校解決では……」
マサシが何かを言おうとしたときには――。
バタン!
夕食。
モチオとネコロボは、そのまま帰っていった。
事務所に戻るモチオ。
玄関の水槽では、金魚たちが楽しそうに泳いでいる。
そこへ、がり勉猫の声が響いた。
「えええ! また私達ですか?? できなくないですが、お断りし――」
モチタ:「いいじゃん! がり勉猫、受けてあげなよ。面白そうじゃん!」
モチクロ:「いいと思う!」
「えええええええええええ!!」
がり勉猫:「どうします……? コツ勉猫」
コツ勉猫:「まあ……いいですが……。はて? 作戦の内容については、何も聞いておりませんけれど……」
数日後。
マサシは、ついに登校してきた。
それも、モチオ、がり勉猫、コツ勉猫、ネコロボを引き連れての大行列だ。
マサシ:「やっぱり、無理だよ……」
不安げなマサシの肩を、モチオが叩く。
モチオ:「大丈夫だ。この作戦に失敗したら、お前はもう二度と学校には行かなくていい。俺が保証してやる」
がり勉猫:「……モチオさんの保証ほど、あてにならないものはありませんがね」
案の定、校門で制止がかかる。
先生:「はい! そこのネコさん!? 止まりなさい!!」
なぜか、モチオだけがピンポイントで呼び止められた。
先生:「ネコさん、あなた! 学校にビールを持ち込むのは禁止です!」
モチオ:「おい! これはだな、給食の時間に飲むための――」
先生:「学校は居酒屋ではありません!」
モチオ:「学校給食が出る居酒屋だって、最近あちこちにできてるだろうが!」
先生:「それはそういうコンセプトの『店』です! ここは本物の学校!」
モチオ:「ちょっとぐらい、景気付けにいいだろうが!」
先生:「あなた、一箱まるごと担いできてるじゃないですか!」
モチオ:「これは他の先生への差し入れだ! 俺は優しいんだ!」
先生:「給食は宴会じゃありません!!」
モチオ:「じゃあ、なんでみんなで一緒に食べるんだ!? 将来、宴会するための社会勉強の一環だろうが!」
先生:「違います!! そのビール、こちらに貸しなさい!」
モチオ:「嫌ニャ! これは俺の『個性』ニャ! もともと俺は、ビールを抱えて生まれてきたんだ。地毛ならぬ、『地ビール』ニャ! 証明書は家に忘れてきただけだニャ!!」
その隙に、他のメンバーたちはモチオを見捨ててスルーしていく。
「先生も大変ですね……あんな馬鹿を相手に。まあ、放っておきましょう」
結局、モチオのビールは、無慈悲にもすべて没収された。




