第67話 第14章 水槽の金魚 1 無茶な依頼
「ネコロボ! ロケットランチャーだ!!!」
怒号のような叫びが、相談所の重いドアを震わせる。
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ことの始まりは、いつもの昼食時。
コツ勉猫がご機嫌にオムライスを作り、ケチャップで特大のハートマークを描いていた、平和な風景だった。
だが、テーブルを囲むモチタだけは、どこか元気がない。
がり勉猫:「どうしました、モチタ?」
がり勉猫が眼鏡を指で押し上げながら尋ねる。
モチタ「うん……クラスのタケシ君、もう3か月も学校に来てないんだ。」
モチオがオムライスを口いっぱいに頬張りながら、鼻で笑った。
モチオ:「所詮、不登校だろ? 最近多いらしいな。あんなの親と学校の責任だ。放っとけ」
モチクロ:「ちょっとモチオ、またそんな決めつけを!」
たしなめるモチクロに、ネコロボが無機質な声で補足する。
がり勉猫:「いえ、モチオさんの意見も一理あります。昨今は子供の権利尊重により、学校側も無理な登校刺激を避ける傾向にありますから」
モチオ;「俺らの時代なんて、先生に首根っこ掴まれて引きずり出されたもんだがな。今じゃそれもDVか? いいご身分だニャ」
モチオは不敵に笑うと、とんでもないことを言い出した。
モチオ:「よし、俺も『働きたくないから働かない』にするわ。不登校がアリなら、俺は不労働だ!」
「「それはダメです」」
ネコロボとがり勉猫の声が重なる。
モチオ:「なんでよ!!」
コツ勉猫:「家賃と食費、3か月分」
コツ勉猫が無言でスッと手のひらを差し出した。
……チッ。
がり勉猫:「まあ、この手の相談は多いのが事実ですね」
がり勉猫がふと真面目な顔になる。「私もボランティアで教師向けに講義をしていますが……」
コツ勉猫:「でも、うちは相談、すべてお断りしていますわ」
コツ勉猫がピシャリと付け加えた。
その時だ。
ドンドンドン!
相談所のドアを激しく叩く音が響く。
モチオ:「ほっとけ、営業時間外だ。常識ねーやつだ!」
モチオが喚くが、すでにネコロボがスルスルと動いてドアを開けていた。
モチオ:「おい、営業時間外と言ってるだろうが!」
「今、13:00ですからね」と、がり勉猫が時計を見る。
「営業中ど真ん中ですわ」と、コツ勉猫が追い詰める。
モチオ:「俺が営業時間外と言えば、営業時間外だ! 俺の相談所だニャ!」
無茶苦茶な理論を振りかざすモチオに、コツ勉猫が再び手を突き出した。
コツ勉猫:「家賃と食費代、3か月分!」
……。はいはーーーい
モチオは逃げるように、オムライスの皿を片手に事務所へと向かった。
事務所からは相談者の啜り泣く声が漏れてくる。
モチオ:「それで……だから……」
「おう、それで……。あ、ウマ(モグモグ)」
「そうなって、それで……」
「そうだな……それは……。あ、これウインナー入ってる。
ウマ(モグモグ)」
「だなーーー。あああ、お腹いっぱい。で、相談は何ニャ?」
その適当すぎる応対に、壁の向こうで「えええ!」と驚愕の声が上がる。
ネコロボ、がり勉猫、コツ勉猫が慌てて事務所に駆け込もうとする。
がり勉猫:「ネコロボ、概要を聞いていましたね?」
ネコロボ:「はい。マサシ君、小学2年生。いじめで不登校。カウンセリング、親、行政、全部当たってもダメ。絶望して、こちらに来たと」
がり勉猫;「またこの手の話ですね……」
コツ勉猫:「そうですね、断りましょう」
二匹が固く決意し、離れの事務所のドアを開ける。
入り口では、かつてモチクロが縁日で取った金魚の水槽の中で、エアーポンプがシャカシャカと虚しく音を立てていた。
その前で、モチオが信じられない宣言を口にする。
モチオ;「まあよう知らんが…家賃も溜ってることだし、その依頼、任せなさい! 簡単ニャ。とりあえず学校行かせりゃいいんだな! 了解ニャ!」
「「「ええええええええええええ!」」」
三匹の絶叫が重なる中、がり勉猫は膝から崩れ落ちそうになった。
「モチオさんに……先に喋らせるんじゃなかった……」




