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第63話 第13章 見えてる世界 2 はにとら?

ネコロボ:「……何でしょうか、あの格好は」


 ターゲットのミナミに近づくモチタとモチクロ。その姿は、なぜか学ランにリーゼントという時代錯誤な「不良」スタイルだった。


モチタ:「よーよーお姉ちゃん。俺らとドラゴンでも狩りに行こうぜ!」


モチクロ:「ねーねーお姉さん。僕らと公園でスケッチしようよ……」



がり勉猫:「(頭を抱えて)あれはもしかして……不良に絡まれているところを助ける、という昭和のベタな自作自演ですか!?」


ネコロボ:「使い古されすぎて、もはや古典芸能です。しかもモチタは単なるゲームの勧誘、モチクロはスケッチの誘いになってしまっています」


 そして、二匹をけしかけた張本人は、木陰で出番を待っていた。


 全身金ピカのサンバの衣装に身を包んだモチオが。


がり勉猫:「……あれが、モチオさんの言う『イケメンヒーロー』ですか?」


ネコロボ:「モチオさんの中では……そのようです」


一方、現場では。


ミナミ:「あら! かわいい猫さんたち! 君、狩りゲーするの?」


モチタ:「うん、僕、ランキング15位だよ!」


ミナミ:「すごい!! 私、始めたばっかりなの。一緒にチーム作ってよ、先生♡」


モチタ:「いいよ。僕のいらない武器も分けてあげるね」


ミナミ:「で、そっちの君はもっと小さくてかわいいね。いくつ?」


モチクロ:「小学2年生だよ」


ミナミ:「お姉さん、美術部なんだ。あ、すごくいい絵具持ってるね、本格的!♡」


モチクロ:「うん、モチオが買ってくれたんだ。お姉さんも使っていいよ」


ミナミ:「ええっ! いいの? ありがとう♡」


ミナミ:「今日はバイトもないし……そうだ! 公園で狩りゲーしてスケッチもしよう! お菓子も買っちゃおう!」


モチタ・モチクロ:「おー!!」



 ……あれ? ミナミ、そのままついて行っちゃった。



ミナミ:「ねえねえ、お父さんとかお母さんは大丈夫? 一緒に行っていいの?」


モチクロ:「大丈夫だよ」


(モチクロが、木陰でポーズを決めているモチオを指差す)


ミナミ:「あ……。変わったお父さんだね」


 ミナミは苦笑いしながら、モチオに向かって小さく手を振った。


モチオ:「…………???」


 木陰でチャンスを待ち続ける金ピカのモチオ。通行人からケラケラ笑われ、スマホで盗撮されながらも、彼はまだ自分の出番を信じていた。


がり勉猫:「……罰ゲームですよ、あれじゃ」


ネコロボ:「あれでは、ただの拷問です」



 一方、キャンパスの別エリアでは、さらなる異変が起きていた。



がり勉猫:「あ、あの衣装……。コツ勉猫、あんなの持ってましたか?」


ネコロボ:「はい。この作戦のために連日徹夜で製作したようです」


がり勉猫:「あれじゃエリザベス女王ですよ! 完全に周囲の注目の的じゃないですか!」


 白昼堂々、中世貴族のようなドレスでターゲットのリョウに近づくコツ勉猫。


コツ勉猫:「ごきげんよう」


リョウ:「ご、ご、ご……ごきげん……よう……」


 コツ勉猫が鋭い視線で「座らせなさい!」と合図を送る。


リョウ:「は、はい! お嬢様、こちらへ……」


 リョウは気圧され、思わずベンチに自前のハンカチを広げた。


がり勉猫:「……ハニートラップというか、ただの執事にしてますね」


ネコロボ:「はい」


コツ勉猫:「リョウさん、でしたかしら。……はあ。昼なのに、月が出ていますわね」


リョウ:「あ、あ、はい……」


コツ勉猫:「昼の月はどうかしら?」


リョウ:「……え? いや、その、昼の月……。ああ、綺麗ですね」


 (コツ勉猫、勝った!というドヤ顔を浮かべる)



がり勉猫:「夏目漱石の読みすぎです! 遠回しすぎて伝わってません!」



コツ勉猫:「あら? 私だけ木陰……。リョウさんは暑くないかしら?」


リョウ:「いえ……」


コツ勉猫:「リョウさんの方が、日光の下……光が強いですわね。一方、私は? 木陰……。光が……あなたの方だけ……?」


リョウ:「……光が、あなたの方だけ……?」


コツ勉猫:「やわら……?」


リョウ:「柔らかい……?」


コツ勉猫:「もう一回、よろしいかしら」


リョウ:「? 光が……あなたの方だけ、柔らかい……?」


 (コツ勉猫、さらに「完勝!」という表情を浮かべる)



がり勉猫:「谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の自白強要ですよ、あれじゃ……」


ネコロボ:「難解すぎます。リョウさん、一ミリも誘惑されていません。混乱しています」



 その時だった。周囲の女子学生たちが一斉に集まってきた。


女子A:「あのー! この衣装、手作りですか!? すごい!! みんな見て見て、レベチなの来た!!」


女子B:「すごーい! 全部手編みだわ!」


女子C:「この宝石はジルコニア? 細かーい! 職人技、マジレベチ!!」


 あっという間にコスプレファンの女子軍団にもみくちゃにされるコツ勉猫。


コツ勉猫:「あ、あの、その……ああああ! 引っ張らないでーー!!」


 取り残される執事扱いのリョウ。


 公園へ消えたミナミと子供たち。



 そして、木陰でかの金ぴかサンバのまま登場を待ち続けるモチオ。




がり勉猫:「……地獄絵図です。これは」

ネコロボ:「はい……」

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