第62話 第13章 見えてる世界 1 美学
事務所には、がり勉猫の怒号が響き渡っていた。
がり勉猫:「なんで! こんな依頼を受けたんですか!! 私が研究している間に!!」
モチオ:「それは……それは……」
コツ勉猫:「それは?」
モチオ:「なんか面白そうだったからだニャ!!」
「えええええ!!」
がり勉猫:「ネコロボ! あなたがいながら、なぜ止めなかったんですか!」
ネコロボ:「すみません。助言はしましたが、最終決断はモチオさんですので……」
モチオ:「まあ、いいじゃないかニャ。12章は俺、ほとんど出番がなくて暇だったんだニャ」
がり勉猫:「はあああ……。で? 改めて聞きます。依頼内容は何ですか?」
モチオ:「女の殴り合いだニャ キャットファイトニャ」
ネコロボ:「いえ。彼氏を取られたので、別れさせてほしいという依頼です」
コツ勉猫:「はあああ……。まさかの『別れさせ屋』ですか。この事務所も落ちるところまで落ちましたわね……」
モチタ:「面白そうじゃん!」
(がり勉猫にギロリと睨まれ、モチタは瞬時に下を向いた)
モチクロ:「でもさ、別れさせ屋ってことは、ハニートラップが必要でしょ? 依頼者のカオリさんの要望は、今の彼女の方にトラップを仕掛けることだよね。そうなると、彼女が乗り換えたくなるような『超イケメン』が必要になるけど……はあああ」
モチオ:「イケメン? ここにいるニャ」
がり勉猫:「どこに!!」
モチオ:「だから、ここだニャ!!」
がり勉猫:「だから、どこに!!!」
モチオ:「ここだニャアアアアア!!!」
がり勉猫:「……困りましたね。どこかから適当な人材を探してきましょうか」
(モチオ、全力のスルーを食らう)
モチタ:「じゃあ、彼氏の方にトラップを仕掛けるしかないよ」
モチオはスルーされた腹いせに、一気にコーヒーを飲み干した。
がり勉猫:「ですが、今度は絶世の美女が必要になりますよ……」
コツ勉猫:「ここに……いるわ……」
がり勉猫:「…………」
コツ勉猫:「ここにいるわ!!! ほら!!!」
一同:「………………」
コツ勉猫:「ムキー!! 何よ、この美の感覚もわからないダメンズたちは! わかったわ……私、この話に乗るわ!!!」
モチオ:「そうだニャ! そうだニャ! 俺たちの美をこいつらに分からせる時だニャ!!」
コツ勉猫:「そうよ! 絶対成功させましょうね、モチオさん!!」
モチオ:「おうよ!!!」
盛り上がる二匹を横目に、ネコロボががり勉猫に耳打ちした。
ネコロボ:「……あそこは『コツ勉猫さんは美人すぎるから作戦には向かない』と嘘をつくのが正解でした。逆に火をつけてしまいましたね……」
がり勉猫「まさかの悪手でした」
いつも反発しあう2匹が美の名のもとに意気投合。 もう止められない。
ネコロボ:「対象者は、女性のミナミさんと男性のリョウさんです。ともにK大学の学生で、依頼者カオリさんの同級生です。カオリさんによると、三ヶ月前からリョウさんに別れてほしいと言われていますが、関係は保留になっています」
モチオ:「捨てられた女なのに、女の逆恨みかニャ……。みじめだねーニャ」
がり勉猫:「モチオさんがそれを言いますか!? あなたが勝手に依頼を受けたんでしょうが!!」
ネコロボ:「いずれにせよ、恋人関係を破綻させる方法を考えなくてはなりません」
モチオ:「ふん、そんなの簡単だニャ! ハニートラップだニャ! それ一択だニャ!!!」
コツ勉猫:「そうよ、そうよ!!」
がり勉猫が何かを言いかけたが、ネコロボが静かに制した。
ネコロボ:「がり勉猫さん。二回も同じ流れは、読者が飽きます。ここはお二人に任せて、私たちは別の戦略を考えましょう」
そう言って、二匹は賢明にも研究室へ消えていった。
モチオ:「ふん。俺はミナミを、コツ勉猫はリョウを……波状攻撃だニャ!」
そこへ、モチタとモチクロがこっそり部屋に戻ろうとする。
モチタ:「さあ、ゲームしよっと……」
モチクロ:「僕は塾の宿題……」
モチオ:「おい!!」
ビクッ! 二匹の肩が跳ね上がる。
モチオ:「お前たちも手伝ってもらうぞニャ!!! 課金を肩代わりしたのは誰だニャ? 高級絵具を買ってやったのは誰だニャ!?」
モチタ・モチクロ:(……モチオに借りを作るんじゃなかった……)
数日後。
大学のキャンパス。
がり勉猫:「ネコロボ、やはりあなたも気になっていましたか……」
ネコロボ:「はい。……がり勉猫さんも、ですね」
大学のビルの陰に隠れて、二匹はモチオたちの様子を伺っていた。どうやら作戦を実行する瞬間のようだ。
がり勉猫:「あれは……。あれは……!? モチオと、モチタと、モチクロ……!?」
「あちゃ――――――――っ!!!!!!」
がり勉猫とネコロボは、あまりの衝撃映像に思わず手で目を覆った。




