第59話 第12章 母親なんて大嫌いだ 3 科学者の意地
「もう3日だ!! 3日連続『ケチャップ海鮮丼』だ!!!」
事務所のリビングでは、モチタとモチクロが夕食への不満を爆発させていた。
ネコロボ:「モチオさんが、がり勉猫さんとコツ勉猫さんの科学をバカにしたのが原因なんですから」
モチタ:「今すぐ謝ってきてよ、モチオ! これじゃコツ勉猫の美味しい夕食にありつけないよ……」
モチクロ:「毎日、飽きたよー……」
モチオ:「うるせーニャ! その海鮮丼だって、なんで俺のポッケから出さなきゃならんのだニャ! ネコロボ、コツ勉猫を呼んでくるニャ!」
ネコロボ:「無駄です。研究スイッチが入った二人は出てきません。ここ数日、ほとんど睡眠もとっていないようです」
一方、研究室。
がり勉猫:「うーん……。どうすれば、亡くなった母親の愛を証明できるのでしょうか。当時の映像さえあれば……」
コツ勉猫:「お兄様、ここ最近ろくにお食事もとっていませんわ。体に悪いですから、何か口に入れましょう。モチオさんが私たちの分まで海鮮丼を用意してくれているみたいです」
がり勉猫:「もう少し……もう少しなんですが、最後のひらめきが……。そうですね、一旦食事にしましょう」
一度リビングに戻る二匹。しかし、そこには不満の嵐が吹き荒れていた。
モチクロ:「モチオ!! 他の作れよ!」
モチタ:「せめてラーメンにしろよ、時々は!」
モチオ:「俺はこれが好きなんだ! 黙って食えニャ!」
モチクロ:「ネコロボ、なんか作ってよー!」
ネコロボ:「すみません。私はコツ勉猫さんの家事の役割を奪わないよう、調理プログラムだけはインストールされていません」
「えええええええええええええ!!」
がり勉猫:「……騒がしいですね」
コツ勉猫:「お兄様。私、食事の前にお風呂の準備をしてきますわね」
背後ではまだ、モチオへの追及が続いている。
モチタ:「『ケチャップ海鮮丼』……。せめて普通の海鮮丼にしろよ!」
モチオ:「うるせーニャ! 和洋折衷こそ最強、俺の最高傑作だニャ!」
モチクロ:「最悪だよ――! もーー!! 」
がり勉猫:「……何の騒ぎですか?」
がり勉猫が尋ねると、モチクロが泣きついた。
モチクロ:「モチオが毎食ケチャップ海鮮丼なんだよ! これがうまいって! もうケチャップ海鮮丼病になるよ、助けてー!」
モチタ:「そうだよ、悪夢だよ! トラウマになっちゃうよ! がり勉猫、コツ勉猫、何か作ってよー!」
がり勉猫:「……え? 悪夢? トラウマ……?」
「あああああああああああああああ!!!!」
突如、がり勉猫が叫んだ。リビングのケチャップ海鮮丼をひったくるように掴むと、慌ててコツ勉猫を呼ぶ。
がり勉猫:「コツ勉猫!! fMRI(磁気共鳴機能画像法)です! fMRIですよ!!」
お風呂を用意しようとしていたコツ勉猫も、その言葉に目を見開いた。
コツ勉猫:「あああああ!! お兄様! その手がありましたわ!!」
がり勉猫:「こうしちゃいられませんよ! コツ勉猫、戻りますよ!!」
急にあわただしく研究室へ引き返す二匹。残された一同は、呆然とその後ろ姿を見送るしかなかった。
ケチャップ海鮮丼を片手に、二匹の科学者猫が研究室へと疾走していく。その背中に、がり勉猫が鋭い指示を飛ばした。
がり勉猫:「ネコロボ! ダイチ君の父親を……」
ネコロボ:「はい。がり勉猫さんの趣旨は理解しております。お父さんには2時間後に来るように連絡します。」
がり勉猫は走りながら無言でサムズアップを送り、そのまま研究室の奥へと消えていった。
モチタ:「あれ……? 今の、何だったの?」
モチクロ:「なんか……嵐みたいにあわただしかったね……」
それから数日。
父親の一郎が頻繁に呼び出され、ダイチと共に研究室に籠もる日々が続いた。重厚な扉の向こうでは、精密機器の駆動音と、がり勉猫たちの熱を帯びた議論が漏れ聞こえてくる。
リビングで相変わらず暇を持て余していたモチオが、しびれを切らしてネコロボに詰め寄った。
モチオ:「おい、ネコロボ。中では何をやってるんだニャ。教えろニャ……」
するとネコロボは、感情の見えない電子音に精一杯の皮肉を込めて、モチオの「あの口癖」で答えた。
ネコロボ:「……しらね。」




