第58話 第12章 母親なんて大嫌いだ 2 悲痛
ネコロボ:「亡くなった母親は山本ケイコさん。ダイチ君の出産時に亡くなっています。現在は父・山本一郎さんと二人暮らしです」
がり勉猫:「そうですか……。やはり深い事情がありそうですね」
コツ勉猫:「母親への思いが、あの衝動の引き金になっていることは間違いないのですが……」
ネコロボ:「あの……。やはり、今の推測は控えておきます」
ネコロボは言いかけて、電子音を止めた。
がり勉猫:「ネコロボ。あなたの予想で構いません。何か気づいたことがあるなら言ってみてください」
ネコロボ:「はい。警察の調書には『赤ちゃんに石を投げた』とあります。しかしダイチ君は取り調べで黙秘を貫いています。……果たして、本当にそうでしょうか?」
コツ勉猫:「……? どういうこと?」
ネコロボ:「彼は赤ちゃんではなく、その『お母さん』を狙ったのではないでしょうか。コントロールが悪くて、隣の赤ちゃんに当たりかけた……という可能性です」
がり勉猫:「その線もありますね……。でも、なぜ自分の顔も知らない母親をそこまで恨むのでしょうか」
モチオ:「当然ニャ! 最低の母親だニャ!!!」
がり勉猫:「モチオさん!!!」
モチオ:「よく考えてみろニャ! 自分には母親がいない。運動会、参観日、お遊戯会……ずっと周りが羨ましくて、ずっと自分だけがいないんだニャ。そりゃ恨むに決まってるニャ!」
がり勉猫:「でもですね! 母親だって、きっと無念で仕方がなかったはずです! 悲しかったはずなんです!!」
モチオ:「はあ? それを『天国に行って聞いてきました』とでもダイチに言うのかニャ? アホらしい……。がり勉猫らしくないニャ、客観性のない話は」
がり勉猫:「…………っ」
コツ勉猫:「でも、お父さん! お父さんから当時の話は聞けるはずだわ!」
ネコロボ:「申し訳ありません、コツ勉猫さん……。父の一郎さんも、ケイコさんの死のショックから立ち直れていないようです。その悲しみから、当時の写真も動画も、すべて捨ててしまったと聞いています」
モチオ:「おいおい、科学者様が揃って『客観証拠もございません』だニャ! エセ科学者がニャ!! 科学も無力だニャ!! 笑いぐさだニャ!!!!」
がり勉猫は、怒りで全身を震わせている。
がり勉猫:「今……なんと……私を……」
モチオ:「何度でも言ってやるニャ!! エセ科学者だニャ! 『科学でUFOはありまーす』『スタップ細胞はありまーす』とでも言っとけニャ! オレンジジュース飲んで細胞分裂しとけ!」
がり勉猫:「私を侮辱するのは結構です!!! ですが、科学を侮辱することだけは……絶対に!! 絶対に許さない!!!!!」
コツ勉猫も大きくうなずき、モチオを鋭く睨みつけている。
モチオ:「はいはい、せいぜい頑張ってくださいニャ。俺は昼寝でもしますニャーーー」
モチオは背を向けて去っていった。ネコロボは慌ててモチオに駆け寄る。
ネコロボ:「モチオさん、流石に言い過ぎです。がり勉猫さんやコツ勉猫さんの科学に対する情熱まで否定するなんて、今回ばかりは酷すぎますよ」
ネコロボが肩を叩くと、モチオは振り返り、うすら笑いを浮かべた。
モチオ:「ネコロボ。この前、父親の一郎とダイチに会っただろニャ。がり勉猫が呼んでニャ」
ネコロボ:「はい……」
モチオ:「ダイチは母親を恨んでる、父親はそれを見ないふりをしている。家庭崩壊だニャ。あの父親を見たかニャ? 叱り慣れてもいない、息子をどう扱っていいのか分かってない。あれじゃダメだニャ」
ネコロボ:「しかし……父親の一郎さんも、心の痛みから回復していません」
モチオ:「さあな。どいつもこいつも、自分は被害者面かニャ……。案外、一番の被害者は、死んだ母親だったりして」
ネコロボ:「…………」
モチオ:「……ふん。牛乳眼鏡兄弟は天才だ。」
ネコロボ:「えっ……?」
モチオ:「あいつらに頼るしかねーニャ。今回は、ま、なんとかしてくれるだろニャ、、まあ しらね。」
そう言い残すと、モチオはあくびを一つして、自分の寝床へと消えていった。




