第56話 第11章 日曜日の午後 完 5 優しい奇跡
またあの夫婦がいるな……。
夫婦は毎週、教会に現れては何時間も涙を流しながらお祈りを捧げる。
どうも牧師の話によると、夫婦は亡くなった子供(死産)へのお祈りを続けているらしい。
ある日、どこからか迷い猫が夫婦に近づき、寄り添う。
「なでてやれ」
後ろから声が聞こえる。
夫婦が振り向くと、モチオがもう一度言う。
モチオ:「撫でてやれ……」
夫婦は言われるがまま、迷い猫を撫でると、モチオが話し出す。
モチオ:「猫ってのは、泣いてる人間を見るとこうやって寄り添って撫でさせるんだ……なぜだかわかるか?」
「そう、泣き止ませるためだ。猫は人間の言葉は話せねー。だから猫なりに考えたんだろうな……人間に伝えるメッセージを」
夫婦は時に優しく声をかけながら、迷い猫を撫で続ける。
モチオはさらに話し出す。
「猫ってのは、どうも神の遣いらしいな。神様も直接は伝えられねーから、猫にでも遣いをやらせたんだろうな……」
「まあ、どこのどいつかが天国で神様に頼んだんじゃねーの? あんまりにも泣いてるから、泣き止んでくれ、笑ってくれって伝えてほしいって……」
「ま、しらんけどな……」
夫婦は涙を流し、猫を撫で続けている。
モチオ:「その猫も、暗い顔は十分だって顔してんぞ。そいつも神様からの仕事が終わって腹減ってるだろうよ……。さ、飯だ、飯」
夫婦は教会に来て初めて昼食会に参加した。牧師、シスター、モチオ達、お祈りに来た人々と食事を囲む。
夫婦の隣にはなぜか空席が用意され、パンが置かれていた。夫婦の足元で食事を食べる迷い猫。
なかなか手を付けられない夫婦を横目で見ながら、モチオは独り言。
モチオ:「泣いてても笑ってても……ババアのこのスープは格別にうまい!!」
シスター:「誰がババアですって!!!」
モチオ:「お前、歳で耳が悪かったんじゃないのかよーーー」
シスター:「私は地獄耳だ!!」
モチオ:「教会で地獄ってなんだよーーー。あああ、すみません、すみません、シスター……いや、お嬢様……あああ、お皿持っていかないで―――!」
モチオとシスターのいつものやり取りに、みんなは笑った。
夫婦も……少し笑った。
一方、
がり勉猫:「はあ、やっと修理完了です」
ネコロボ:「はい、試運転してみましょう」
優しいパイプオルガンの音が、食堂だけでなく教会全体を包んだ。
牧師さん:「直りましたね……」
シスター:「そのようです。がり勉猫さんたちもお腹が空いているでしょうね。早く昼食の準備をしなくちゃ」
シスターは急いで台所に行く。
コツ勉猫:「それにしても……優しい音……」
モチオ:「だな……」
みんなはしばらくパイプオルガンの音に聞き入った。
迷い猫は音も気にせず、食事に夢中である。
その優しい音色は……どこかにいる、誰かの幼い笑い声にも聞こえる。
暖かな春の日差しが教会のステンドグラスを通じて、祭壇にある像を七色に包んでいる。
何もない、穏やかな日曜日の午後である。
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信じる事は悪いことじゃない
信じる方向次第で
私たちがどこに向かうか
それを導きというのかもしれない
第11章 日曜日の午後 完
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