表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
56/100

第56話 第11章 日曜日の午後 完 5 優しい奇跡

またあの夫婦がいるな……。



夫婦は毎週、教会に現れては何時間も涙を流しながらお祈りを捧げる。


どうも牧師の話によると、夫婦は亡くなった子供(死産)へのお祈りを続けているらしい。


ある日、どこからか迷い猫が夫婦に近づき、寄り添う。



「なでてやれ」


後ろから声が聞こえる。


夫婦が振り向くと、モチオがもう一度言う。


モチオ:「撫でてやれ……」


夫婦は言われるがまま、迷い猫を撫でると、モチオが話し出す。


モチオ:「猫ってのは、泣いてる人間を見るとこうやって寄り添って撫でさせるんだ……なぜだかわかるか?」


「そう、泣き止ませるためだ。猫は人間の言葉は話せねー。だから猫なりに考えたんだろうな……人間に伝えるメッセージを」


夫婦は時に優しく声をかけながら、迷い猫を撫で続ける。


モチオはさらに話し出す。


「猫ってのは、どうも神の遣いらしいな。神様も直接は伝えられねーから、猫にでも遣いをやらせたんだろうな……」


「まあ、どこのどいつかが天国で神様に頼んだんじゃねーの? あんまりにも泣いてるから、泣き止んでくれ、笑ってくれって伝えてほしいって……」


「ま、しらんけどな……」


夫婦は涙を流し、猫を撫で続けている。


モチオ:「その猫も、暗い顔は十分だって顔してんぞ。そいつも神様からの仕事が終わって腹減ってるだろうよ……。さ、飯だ、飯」


夫婦は教会に来て初めて昼食会に参加した。牧師、シスター、モチオ達、お祈りに来た人々と食事を囲む。


夫婦の隣にはなぜか空席が用意され、パンが置かれていた。夫婦の足元で食事を食べる迷い猫。


なかなか手を付けられない夫婦を横目で見ながら、モチオは独り言。


モチオ:「泣いてても笑ってても……ババアのこのスープは格別にうまい!!」


シスター:「誰がババアですって!!!」


モチオ:「お前、歳で耳が悪かったんじゃないのかよーーー」


シスター:「私は地獄耳だ!!」


モチオ:「教会で地獄ってなんだよーーー。あああ、すみません、すみません、シスター……いや、お嬢様……あああ、お皿持っていかないで―――!」


モチオとシスターのいつものやり取りに、みんなは笑った。


夫婦も……少し笑った。


一方、



がり勉猫:「はあ、やっと修理完了です」


ネコロボ:「はい、試運転してみましょう」


優しいパイプオルガンの音が、食堂だけでなく教会全体を包んだ。


牧師さん:「直りましたね……」


シスター:「そのようです。がり勉猫さんたちもお腹が空いているでしょうね。早く昼食の準備をしなくちゃ」


シスターは急いで台所に行く。


コツ勉猫:「それにしても……優しい音……」


モチオ:「だな……」


みんなはしばらくパイプオルガンの音に聞き入った。


迷い猫は音も気にせず、食事に夢中である。


その優しい音色は……どこかにいる、誰かの幼い笑い声にも聞こえる。


暖かな春の日差しが教会のステンドグラスを通じて、祭壇にある像を七色に包んでいる。


何もない、穏やかな日曜日の午後である。


*********************

信じる事は悪いことじゃない


信じる方向次第で


私たちがどこに向かうか


それを導きというのかもしれない


第11章 日曜日の午後 完



*********************

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ