第48話 第10章 淋しい熱帯魚 2 勝ち
がり勉猫:「モチタさん、また勝手に課金して! 課金は月1000円までって言ったはずです! 3000円も!」
モチタは深く下を向いている。
モチタ:「ごめんなさい……」
そこに、悠然とモチオが帰ってきた。
モチオ:「まあまあ、そんな小銭でガタガタうるさいニャ。ほれ……」
モチオは万札の束で自分を仰ぎながら、がり勉猫に話しかける。
モチオ:「がり勉猫君。これが三ヶ月分の食費代ニャ。お釣りはいりませんニャ。あと、これがモチタの追加課金分だニャ」
モチタ:「モチオ、助かった! ありがとうニャ!」
がり勉猫:「………………」
モチオはモチクロにも、ずっしりと重い特注の高級画材セットを差し出した。
モチクロ:「モチオ、ありがとう! これ、すごく欲しかったやつだ!」
モチオ:「まあ、モチクロ君も勉強を頑張っているからニャ。これからも精進したまえニャ」
モチオはさらに万札でパタパタと仰ぎ続ける。
モチオ:「コツ勉猫さん。これは老舗の高級和菓子ですよ。プリンのお礼ニャ。期間限定の逸品だニャ!」
コツ勉猫:「これ……高いやつじゃない……」
モチオ:「いやー、そんな高くないニャ。小銭、小銭ニャ!!!」
がり勉猫:「………………!!!!!」
がり勉猫は何かを思い出した。そしてモチオではなく、背後にいるネコロボを鋭く睨む。
がり勉猫:「ネコロボ……まさか、あなた……やりましたね……?」
ビビッ……。ネコロボは違和感のある機械音を鳴らした。
それは五時間前のこと。
ネコロボ:「私がついていくのは結構ですが、なぜこんな不審な格好なんですか?」
モチオ:「うるさいニャ。お前がそのままパチンコ屋に行けば、最新型ロボだとバレるだろうがニャ。だからマスクと帽子は必須ニャ。頼みたいこともあるしなニャ……」
ネコロボ:「???? 真美さんの彼氏、マサルさんのお話を聞くだけのはずですが……」
モチオとネコロボは、マサルのいるパチンコ店に足を踏み入れた。写真を頼りにターゲットを探すと……いた!
モチオ:「おい、海迷子のマサル!」
マサル:「なんだよ! 誰だよお前!」
ネコロボ:「私たちは真美さんから依頼を受け、マサルさんにお話を伺いに参りました」
マサル:「またその話か! やめろやめろって、うるせーんだよ!」
モチオ:「アンコウの寝言だニャ! いい加減、地上に上がって酸素を吸えニャ! このポセイドンのなり損ないがッ!!」
マサルは一気にヒートアップした。
マサル:「お前誰だよ!! そもそもお前に関係ないだろうが! 俺が何をしようが!」
モチオ:「……確かに。しかし俺も仕事だニャ。真美から依頼を受けてるし……。しかし! 俺は今、猛烈に機嫌が悪いニャ! 『ハル』がいないからだニャ! がり勉猫の野郎、騙しやがってニャ!」
マサル:「何の話だよ! 今パチンコ打ってんだから、とりあえず帰ってくれよ! うっとうしい!」
モチオ:「帰らんニャ。仕事が終わらんと飯にありつけんニャ」
マサル:「ああああ、もう……うっとうしい……」
ネコロボ:「では、落ち着いたら事務所まで来ていただけますか? そこで真美さんも含めてお話を伺いたいのですが……」
マサル:「わかった! わかった! 行くから、頼むからもう帰ってくれ!!
」
モチオ:「俺は帰らんニャ。帰っても暇だからなニャ。ここで仕事を終わらせるニャ。大体、こいつは信用ならんニャ、絶対に来ないニャ!」
マサル:「あああああああ、リーチ外したじゃねえか!! だから行くって言ってるだろうが! 明日は店の定休日だから、必ず行くから!!」
モチオ:「わかったニャ。……帰ってほしくば、その海底から拾ったパチンコ玉を少しよこすニャ。俺もパチンコとやらをやって時間を潰すニャ。すぐ帰ったら、がり勉猫に仕事してないって怒られるからなニャ」
マサル:「あああああ、もういいよ! この玉、少し持っていっていいから、もう関わらないでくれ!」
モチオはマサルから玉を分けてもらい、台を探し始めた。
ネコロボ:「モチオさん、パチンコするんですか? やり方知ってます?」
モチオ:「知らんニャ」
ネコロボ:「あれだけ番組を見ていてもわからないんですね」
モチオはニヤリと笑い、ネコロボをじっと見つめた。ネコロボは瞬時に察した。
ネコロボ:「ダメです……ダメです! がり勉猫に怒られます! 絶対にダメです!」
モチオ:「ネコロボ……俺はお金がないニャ。食費の借金も山積みニャ。借金を返す分だけでいいから、お願い! 一回だけ! 一回だけニャ! あああ、ネコロボ様ーーー、お願いニャ! がり勉猫には黙っておくから、ちょっとだけ! お願いしますニャ! 神様、ネコ様、ネコロボ様!!!」
ネコロボ:「………………」
時は戻り、事務所。
がり勉猫:「ネコロボ!!! あれだけダメって言ったじゃないですか!!!!」
ネコロボはしゅんとして、モチオを見ている。
モチオ:「がり勉猫君、まあそんなにネコロボを責めてはいけませんニャ。ネコロボはちょっとパチンコのシステムをスキャンして、大当たりの台を次々と見つけてもらっただけニャ」
がり勉猫:「だから! それがダメって言ってるんでしょうが!!!!」
ネコロボはさらにしゅんとしている。
モチオ:「ネコロボは台番号を言っただけニャ。稼いだのはモチオがパチプロだからニャ! 俺の隠れた才能が目覚めたニャ!! 俺はもうパチプロとして生きていくニャ!!」
そこに、コツ勉猫が割り込んできた。
コツ勉猫:「お兄様、お電話です。何か急用のようです。システムバグかどうか見てほしいとのことです」
がり勉猫:「……わかりました。代わります」
がり勉猫がしぶしぶ席を外すと、ネコロボがモチオに詰め寄った。
ネコロボ:「モチオさん……借金を返す分だけっていうから手伝ったんです。次はもうできません。私、本当に破壊されちゃいます」
モチオ:「なーーーに、心配ないニャ。俺はパチプロだニャ! お前の力なんぞ借りんでも勝てるニャ!」
がり勉猫が電話を終えて戻ってくる。
がり勉猫:「あれ? モチオさんは?」
ネコロボ:「はい。明日のパチンコに備えて寝るそうです。『パチンコってのは心技体が揃って初めて勝つんだ』と、意味不明な言葉を残して……」
がり勉猫:「……。……パチンコメーカーからでした。『大勝したネコがいるから、システムバグがないか見てほしい』という依頼です。……ネコロボ、一体いくら儲けたんですか?」
ネコロボ:「確か、三十万です」
がり勉猫:「三十万!?」
がり勉猫の脳裏に、一瞬だけある考えがよぎった。
(ネコロボに頼めば……私の研究費も……)
しかし、ネコロボは猛省している様子。さすがに「自分も頼む」とは言い出せなかった。




