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第47話 第10章 淋しい熱帯魚 1 癒し

 モチオは相変わらず、暇そうにテレビを眺めている。



ネコロボ:「モチオさんって、パチンコに興味あるんですか? さっきからパチンコ番組なんて熱心に見て……」


モチオ:「バカを言うなニャ! 俺はパチンコなんてかったるいのは大嫌いニャ!」


ネコロボ:「じゃあ、なぜ画面に釘付けなんですか?」


モチオ:「俺はパチンコ番組なんて見てニャい! たまたま映ったかわいい子を見てるだけニャ! この癒しオーラ全開の子は誰ニャ!!!」


ネコロボ:「……検索完了。『秋冬ハル』さんですね。温泉街のアイドルらしいですね、実際は素人さんらしいで、町おこしで出ているらしいです。 完全素人さんなので詳細はわかりません。モチオさんは相変わらず癒し系に弱いんですね」


モチオ:「うるせーニャ! 男が女性に癒し以外の何を求めるニャ? 経済力か? 決断力か? 癒しこそが真理ニャ! あああ、また画面がパチンコ台に切り替わったニャ……早く『ハル』を映さんかいニャ!!」


ネコロボ:「一応、パチンコ番組ですので、台がメインかと……。まあ、昭和ガチガチの考え方ですが、、今回は実害はなさそうなのでスルーしておきます」




 翌日。


事務所に一人の相談者が訪れた。


ネコロボ:「モチオさん、久しぶりの依頼者ですよ。ちゃんとしてください」


 ネコロボがお茶を出しながら釘を刺すが、モチオはあくびを噛み殺している。


モチオ:「でもだニャ……そんなの本人の自由だろう。俺には関係ない話ニャ」


ネコロボ:「それを言ったら相談所の存在意義がありません。 身も蓋もないこと言わないでください」


 渋々といった様子で、モチオは相談者・真美の話を聞き始めた。


真美:「……そうなんです。彼がろくに働きもせず、毎日毎日パチンコ三昧で。どうにかやめさせたいんです」


モチオ:「いいんじゃないか? 本人が楽しいなら」


 真美が絶句し、事務所に重苦しい沈黙が流れる。モチオが「帰れ」と言わんばかりの顔をしたその時――。


「それは深刻な問題ですッ!!!」


 事務所のドアが勢いよく開き、がり勉猫とコツ勉猫が乱入してきた。モチオは「げっ」という表情で頭を抱える。


がり勉猫:「パチンコ依存、ギャンブル依存は立派な病気です! 放置していい問題じゃありません!」


モチオ:「……お前、もう関わらないんじゃなかったのかニャ?」


がり勉猫(モチオを鋭く睨みつけながら):「モチオさん。あなたは3ヶ月前から食費を一円も払っていませんが、何か私に文句がありますか?」


モチオ:「……。……でもニャッ!」


コツ勉猫:「そういえば、私が大切にとっておいたプリンが冷蔵庫から消えています。モチオさん、何か言いたいことは?」


 モチオは気まずそうに視線を泳がせ、深く下を向いた。


モチオ:「いえ……特にはニャ……」


がり勉猫:「お嬢さん、それは深刻な問題です。ギャンブル依存症の更生施設はいくつかありますが、そちらには行かれましたか?」


真美:「何度も行きましたが、結局……また施設を脱走してしまって。もう施設の人も、どうしようもないとお手上げ状態で……」


コツ勉猫:「これは深刻ですわ。プロの施設が放置しているなら、もう他に扱える場所はありません。だからここに……」


 真美は絶望したように、ただ深くうなずいた。ネコロボはその様子を見て、そっと真美のお茶を新しく取り換える。


真美:「マサルはろくに定職にもつかず、パチンコばかり。社会的に自立してほしいんです。もう三十五歳ですし、私も結婚したいし、子供も欲しい。だから真面目に働いてほしいんです」


 重苦しい沈黙が流れる中、モチオが口を開いた。


モチオ:「そもそもだニャ……本人から直接話を聞かないと話にならんだろ。何もわからん、このままじゃ」


 珍しく真っ当なことを言うモチオに、がり勉猫もコツ勉猫もうなずいた。


がり勉猫:「お嬢さん。彼氏をこちらに連れてきていただくことは可能でしょうか?」


 真美は力なく首を振った。


コツ勉猫:「それはそうね。当然、拒否するでしょうね……」


ネコロボ:「本人に話を聞くことすら難しいようです。どうでしょう? 我々がパチンコ屋へ出向くというのは」


がり勉猫:「それはいい考えです、ネコロボ!」


コツ勉猫:「でも、誰が行くのかしら……」


 全員の視線が、一斉にモチオへと向けられた。


モチオ:「俺は嫌だニャ! 俺はパチンコ屋なんて嫌いニャ! うるさいし、猫は音に敏感なんだニャ!」



 しかし、周囲の目はすでに「決定事項」としてモチオを捉えて離さない。



モチオ:「俺は行かんニャ! どんなことを言われても、絶対に行かんニャ!!」


がり勉猫:「食費一ヶ月分、免除しましょうか」


モチオ:「俺を見くびるなニャ! 俺は金では釣れんニャ! プライドが許さんニャ!!!」


 金もないくせに、プライドだけはヒマラヤ山脈より高い?


がり勉猫:「しかしですね……パチンコ屋に行けば、モチオさんお気に入りの、、、モチオさんお気に入りの『秋冬ハル』さん? に会えるかもしれませんよ?」


モチオ:「行くニャ!!! 絶対行くニャ!!!」


ネコロボ(……どんなことがあっても行かないんじゃなかったんですか? その高いプライドは、一体どこへ消えたんでしょうか……)


いや、砂場の山より低かった。

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