第43話 第8章 神の力 3 神の本領発揮
「お守り、次回入庫予定・未定。ゴメンね♡」
境内に掲げられた、およそ神社らしからぬポップな張り紙を見て、モチオとモチタは呆然と立ち尽くしていた。
モチタ:「おみくじもだけど、お守りまでバカ売れだね……」
モチオ:「もはや伝説のⅢ発売日ニャ。大忙しだニャ……」
見渡せば、境内は入りきれないほどの女子高生やカップルで溢れかえっている。
モチオ:「ここは原宿か渋谷かニャ!? なぜか出店まで出てるし……」
出店のおじさん:「お! モチオさん! あんたのアドバイス通りここで商売始めたら絶好調だよ、ありがとな!」
おじさんから差し出されたイカ焼きを頬張りながら、モチオは遠い目で人混みを見つめた。
モチオ:「神様も、この数のお願いを一気に聞くなんてブラック企業ニャ……完全なワンオペ。一人じゃ無理ニャ、だから、まあ……いろいろ『代わり』がいるんだろうニャ」
モチタ「だろうね。」
その頃、コツ勉猫による「神事の舞」が始まっていた。スマホを向ける観客に対し、彼女は一切表情を変えず、首席卒業の誇りにかけて完璧な所作を貫く。
モチタ「もはや巫女じゃなくてアイドルだよ、あれ。」
モチオ:「……あいつ、所作だけはガチニャ。だから余計に、みんな信じちゃうんだニャ。怖いニャ、本物の偽巫女は……」
真夜中の境内に、再び悩める声が響く。
参拝者A:「……先生には、母子ともに危ないと言われました。神様、どうか無事に赤ちゃんが生まれますように……!」
一方、小屋の中ではモチオとモチタがレトロなシューティングゲームに興じていた。
モチタ:「まずはステージ1からだね……」
モチオ:「ふん、こんなの朝飯前ニャ! 準備運動ニャ!! お茶の子さいさいニャ!」
参拝者A:「……! 朝飯前に準備運動(ラジオ体操)、朝食はお茶漬けのように軽く……。ネコ神様、健康管理のアドバイスをありがとうございます!!」
またある時は、不登校に悩む少年が。
参拝者B:「冬休み明け、学校に行きたくありません……」
小屋の中ではRPGの真っ最中。
モチタ:「もう僕、死にそうだよ……早く、回復を!」
モチオ:「ああああ、仕方ねーな。回復魔法だ! これで大丈夫、さあ行け!!」
参拝者B:「……えっ? 僕に魔法をかけてくれたの? 頑張って学校に行ってみるよ、ありがとうネコ神様!!」
極めつけは、失恋した男の相談だった。
モチタ:「これ強敵ドラゴンだよ。一回負けてるし、勝てるかな……」
モチオ:「ちょっと待て。俺はそれ系は苦手だから、今から攻略本を読んでやるニャ。……あ、いける! 大丈夫ニャ! 一度負けているということは、相手のパターンを熟知しているということ。ここからが勝負ニャ!!」
参拝者C:「(……僕の失恋パターンを!?)は、はい!!」
モチオ:「慎重に行け! 回避しながら少しずつだ、焦るなよ! 最後は大呪文で一気に行け! 大丈夫、事前にセーブしてある……」
参拝者C:「……! 私、プレゼントのために貯金をセーブ(蓄え)してました! じっくり攻めて、最後にドーンですね! ありがとうございます!!」
そんな毎日が続いた、ある真夜中。
モチタ:「見てよモチオ! 小屋が! 小屋が!!」
小屋の周りには、深夜とは思えないほどの大行列ができていた。
参拝者たちの会話が聞こえてくる。
「俺には出なかったわ、ネコ神様……」
「姿が見えたら『願い成就確定』だってSNSで大バズりだぜ。事業成功に逆転合格、二度目の告白成功まで……。お金じゃない、徳を積んだ人に出るらしいぞ」
行列の最後尾で、入れなくなった二匹は呆然と立ち尽くす。
モチオ:「……おいモチタ。その『ネコ神様』って、一体どこのどいつニャ?」
モチタ:「さあ……。よっぽど立派な神様なんだろうね……」




