第42話 第8章 神の力 2 神様降臨
「……片思い成就みくじ? カップル専用・仲直りみくじ?? ……なんか、どんどん増えてるニャ」
境内に並ぶ、ピンク色のリボンやラインストーンで激しくデコられたおみくじの箱を見て、モチオは呆れ果てた。
モチオ:「もうやりたい放題ニャ。神様の寛大さに甘えすぎだニャ……」
そこへ、一人の内気な女子高生がやってきた。両目をぎゅっと閉じ、一心不乱に祈りを捧げてから、15番の棒を引き当てる。
巫女姿のコツ勉猫は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、番号など一切無視して懐から「特製ストック」の一枚を差し出した。
内容:『凶だと思ってる勘違いはダメ! ホントは大吉!』
「あなたの片思いは、実は両想いです。彼がぎこちないのは、あなたが好きすぎて悩んでいるから。奥手な彼を、あなたのハッピースマイル♡で包んであげて!」
女子高生は顔を真っ赤にし、おみくじを宝物のように抱きしめると、覚悟を決めた足取りで走り去っていった。
また、別のカップルの前では、番号が違うにもかかわらず、二人同時に同じ内容を渡す。
内容:『今だけ大吉!』
「相手は本当は謝りたいと思っています。でも好きすぎて、どうすればいいか悩んでいるだけ。あなたからそっと『ごめんね』と言えば、即座に仲直り! 今すぐしないと効果が切れます。ハッピースマイル♡で仲直りして!」
二人はおみくじを読み合わせ、一瞬見つめ合った後、照れくさそうに手をつないで去っていった。
モチタ:「……もうめちゃくちゃじゃん。これ、和尚様にバレたら破門だよ……」
しかし、モチタの呆れ顔とは裏腹に、授与所は女子高生とカップルの大行列。SNSでは「奇跡の恋愛成就神社」として大バズりしていた。
コツ勉猫:「おほほ。きっと神様が、私達の『神の演出』を認めてくださっているのね」
モチオ:「やってることは捏造なのに、所作が首席卒業レベルで完璧だから、余計に信じちゃうニャ。怖いニャ、本物の巫女は……」
そして真夜中。
二匹はまた、例の「隠れ小屋」で最新ハードを起動していた。
モチオ:「ここニャ! 裏技で隠しアイテムがあるニャ!」
モチタ:「そんなの無いよ。ガセネタだよ、モチオ」
モチオ:「いいや、ここでLRボタンとスタートを同時押しニャ! 確実に出るニャ!!」
その時、小屋の外には一人の悲壮感漂う浪人生が立っていた。
浪人生:「私はもう4年も浪人しています……。神様、今年こそ合格できますか? 私は数学が苦手なんです。特に、微分積分が……!」
小屋の中から、モチオのヒートアップした声が漏れ出す。
モチオ:「大丈夫!!!」
浪人生:「……!? いま、ネコ神様の声が聞こえた!」
モチオ:「だから大丈夫ニャ!!!
参拝者:「私は数学が苦手です、特に微分積分が……。合格するにはどうすれば……!」
小屋の中。
モチタ:「モチオ、もう時間の無駄だよ……次いこうよ」
しかし、熱くなったモチオの声が再び漏れ出す。
モチオ:「やれ!って。大丈夫だから!」
参拝者:「……微分積分を、でしょうか……」
モチオ:「やれ! 出る!!! 絶対出る!!! だから今すぐやれ!!」
参拝者:「でも……去年は出題されていなかったような……」
モチオ:「四の五の言わずに今すぐやれ!!! はよやれ!!!」
その時、液晶の明かりがモチオの耳のシルエットを巨大に映し出した。
参拝者:「あああああ! 噂は本当だったんだ……! ネコ神様! そのお姿まで拝めるなんて! これは絶対に、今すぐやらなくちゃ!!」
参拝者は取り憑かれたように山を駆け下りていった。
一方、小屋の中——。
モチタ:「ほらーーーー、やっぱりガセじゃん。もう、モチオの嘘つき」
モチオ:「え? 嘘?? そうだった?? ごめーーんニャ。てへぺろ」
隠しアイテムは結局出なかった。……しかし。
その年の入試問題には、前年出なかった「微分積分」が、これでもかと出題されたのである。




