第4話 第1章 家族の形 3 幸せな時間
がり勉猫達は、合間を縫って、連日ウメコさんの家に集まった。
がり勉猫「……左様でしたか。自害せよと薬を配られていたのですね、心痛みます。戦時中の経験、本でしか読んだことがありませんでした。大変勉強になります」
がり勉猫は、ウメコさんの昔話を聞いていた。
コツ勉猫「ええええええええええ!? 信じられませんわ!!
見たこともない人と結婚ですって!? イケメンならまだしも、
ブサメンなら死刑ものですわよ!!」
ウメコのお見合い話に、コツ勉猫がひっくり返る。
また
コツ勉猫「完成ですわ! ウメコさん、
これが最新の『攻めてるギャルメイク』ですわ!!」
ウメコ「あらあら、お迎えが来ても誰だか気づいてもらえないんじゃないかしら」
コツ勉猫「いいんですのよ! むしろ『攻めすぎてお迎えが逃げ出した』って
噂になるくらい、イケてる姿でいましょう!!」
あるときは、電子音が部屋に響いた。
モチタ「ばあちゃん! ここは右だよ、右!! ああああ、またやられたーーー!!」
ウメコ「あらあら、難しいわねえ。うふふ」
モチタは必死にコントローラーを握らせる。
「介護」ではなく、ただの「遊び相手」として。それが、今のウメコさんには一番の特効薬だった。
そして……。
モチオ「おいウメコ! お前のチャーハンが絶品だと聞いたぞ! 俺に、俺様に食わせろニャ!! 俺が味を品評してやる! モンドセレクションは俺が作ったんだニャ!」
がり勉猫「それは言いすぎです。」
全員がうなずく。
ネコロボ「モチオさん モンドセレクションって何か知ってるんでしょうか?」
モチオ「モンドさんが セレクトしたやつだ! モンドはんが、これ ええわーと思ったやつニャ!!」
一同「「「なんで関西弁…」」」」
モチオ「うるせー はよ もってこいニャ!」
モチオは遠慮も作法も知らない。だが、その図々しさが、やさしさにも聞こえる。
モチオ「……!! う、うまい! うますぎるニャ!! これは
……魂の黄金比だニャ!!俺だからこの味がわかる! 」
「わかる わかる 俺には わかる!!! ワサビじゃない! 辛くない!!
わかる!!! わかるぞーーーーーー!!!! モンドセレクションニャ!!!」
例の味漫画のように絶叫する、近所迷惑である。
そもそも モンドセレクションが何なのか わかっていない。
モチクロもモチタもほおばって食べている。
うまい うまい。。。。
がり勉猫「確かに、この塩梅は芸術の域です」
ネコロボ「……分析完了。ウメコさんの『長年の勘』は、私の最新CPUを上回る演算結果を出しています。レシピ化には……私の全メモリを使っても、一生かかりそうです。ビビビ……」
コツ勉猫「ねえねえ、ばあちゃん! その漬物の漬け方、私にも教えてくださる?」
ウメコさんは、ただ優しく、少女のように笑っていた。
ウメコの家は子供の奈津子、隆司は 月に一度ほど お金の無心にしか来ない。
30日中29日 沈黙に包まれた家は連日のように活気を取り戻す。
しかし時間の流れは、非情である。
猫である彼らは、知っていた。
いや、本人であるウメコも
命の灯火が、もう消えかけていることを。
けれど、彼らはあえてバカ騒ぎを続け、見て見ぬふりをした。
ただ、この時間が永遠に止まればいいと、願っていた。
時間の流れは、あまりに非情である。
やがて。
ウメコは、安らかな顔で最後の床についた。




