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第38話 第7章 眠れる森の男 3 はぐれた時の隙間

3日が経過した。


出張から戻ったがり勉猫一行は、事務所に漂う不穏な空気を感じ取っていた。


がり勉猫:「……モチオさんは? 彼の姿が見えませんが」


ソファでゲームにふけるモチタが、画面から目を離さずに答える。


モチタ:「さあ? またどっかほっつき歩いてるんじゃないの?」


続いて、モチクロに尋ねる。


モチクロ:「うん、多分だけど……。あの時、某有名バンドのサクラ井さんばりの熱唱を響かせて出かけて以来、音沙汰なしだよ……」


嫌な予感が、がり勉猫の脳裏をかすめる。


一行は、カズキの住む離れ——近所で「お化け屋敷」と噂される古びた建物へ向かった。


ドアを叩くと、中から地を這うような声が響く。


「だーーーれーーーにゃーーーーー……」


現れたのは、髪はボサボサ、髭は伸び放題。すっかり生気を失い、部屋の闇に同化したモチオだった。


がり勉猫、コツ勉猫、ネコロボの三人は、申し合わせたように同じポーズで頭を抱えた。


がり勉猫:「モチオさん! やっぱり……あなたまで引きこもりになったんですね! さあ、すぐに帰りますよ!」


モチオはがり勉猫の手を、病的な力で振りほどく。


モチオ:「嫌にゃ! 俺はここでカズキと『深海』を築くんだニャ!

     ある人はいう! 猫は滅んだのだとニャ!」


がり勉猫:「またミスチル! 何を言ってるんですか! 風呂も入らず、仕事も放り出して!」


無理やり引っ張るがり勉猫に対し、モチオはドアの縁に爪を立てて絶叫した。


モチオ:「あああ、お風呂もキャンセル、仕事もキャンセル、人間関係も、、全部キャンセル! 全部全部キャンセル!!  『人生キャンセル界隈』へようこそニャ!! 」


がり勉猫:「……重症ですね。コツ勉猫、モチオさんの足を! ネコロボ、体を押さえてください!」


モチオ:「嫌にゃ! ここは天国ニャ! 離れたくない! 飯は玄関に届くし、コーラ!と叫べばルームサービスが飛んでくる! ここはボロ屋じゃない、最高のスイートルームにゃーーー!!」


がり勉猫:「あなたにとってのスイートでも、振り回されているマサエさんは地獄です! ……仕方ありません。ネコロボ、最終手段です。尻尾を持ってください!」


ネコロボが、無慈悲な精度でモチオの尻尾をがっしりとホールドした。


モチオ「昔野球で鍛えたAIロボットに しっぽ掴まれるのも何か違ってるニャ――!!」


がり勉猫「初期ミスチルから 離れろ!!」


モチオ「ぎゃーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


断末魔のような叫びと共に、モチオは事務所へと強制送還された。


事務所の床に転がされたモチオは、抜け殻のようになっていた。


モチオ:「……なんでニャ……。引きこもり、最高だったのに……。幸せなら、それでいいじゃないかニャ……」


ブツブツと無気力につぶやく姿は、もはや再起不能に見えた。


がり勉猫:「……今のモチオさんは使い物になりませんね。ここは私が、直接引導を渡すしかありません」


コツ勉猫が不安げに尋ねる。


コツ勉猫:「お兄様、何か手立てはあるのですか? 」


がり勉猫は、眼鏡を冷たく光らせた。


がり勉猫:「やりたくはないのですが、、、方法が見つかりません。」


ネコロボは、すべて理解したように静かに頷いた。


ネコロボ:「了解。」


がり勉猫は電話をかけていた。

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