第29話 第5章 話さない人形 6 喧騒と静寂
あくる日、よし子は娘のモエを連れて事務所にやってきた。
ネコロボ:「モエ姫様とナナ様はこちらへ……」
ネコロボが二人を研究所へ案内すると、そこには上機嫌なナース姿のコツ勉猫が待っていた。
コツ勉猫:「さあモエちゃん。ナナちゃんの頬にお薬を塗りましょう。これからはお家でもモエちゃんがしてあげてほしいから、やり方を教えますね」
一方、相談所では。
がり勉猫:「モチオさん! モチタも! 二匹が交わればろくなことにならないと、ネコロボから聞きましたよ!! まず、モチタはゲームをしていいので席を外してください」
モチタ:「はーーーい……」
モチタがしぶしぶ自室へ消えると、よし子の怒りが爆発した。
よし子:「モチオさん! 旦那から電話があってものすごく責められました! 探偵を雇いやがってって! 浮気調査の内容も全部バレてるじゃない! なんなんですかこの相談所は! 守秘義務があるでしょうが!!!」
よし子は机を叩いて憤慨する。
モチオ:「………………」
よし子:「何か言ったらどうなんですか!!」
沈黙が流れる。
よし子:「何か言いいなさいよ!!」
やがて、
モチオが重々しく口を開いた。
モチオ:「言わない……守秘義務だ」
がり勉猫:(そこ!!??)
言葉の使いどころを完全に間違えているモチオに、がり勉猫が絶句していると、事務所のドアが勢いよく開いた。
モチオ:「太郎……来たか!」
太郎:「よし子! お前! どういうことだ!」
よし子:「あなたが他に女を作っているのが悪いんでしょうが!」
太郎:「何を根拠に言っているんだ!」
いつものように、不毛な夫婦喧嘩が幕を開ける。
がり勉猫:「………………」
がり勉猫:「………………」
がり勉猫:「………………」
がり勉猫:「うるさーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!」
がり勉猫の、いつになく腹の底から響く大声。
その一喝は、相談所の喧騒を一気に静寂へと変えた。その声は事務所全体、さらには二階の研究所にまで響き渡っていた。
コツ勉猫は一瞬で気配を察し、モエの耳をそっと手で塞いだ。




