第23話 第4章 過去の忘れ物 完 5 仕返し
それは、数日前のことだった。
モチオはネコロボを連れ、とあるオンボロアパートの前に立っていた。
マモル「……何か御用ですか?」
モチオ「おい。お前、『杉田麻衣』って女を知ってるかニャ?」
マモル「……週刊誌の人? もう何年前の話ですか! 失礼!!」
マモルがドアを閉めようとした瞬間、ネコロボの金属製の腕がそれを阻んだ。
ネコロボ「……麻衣さんは生きています。そして、記憶喪失です。ビビビ」
招き入れられた室内で、モチオたちはマモルから「杉田麻衣」――本名・ショウコの真実を聞かされた。
共に児童養護施設で育ち、寄り添って生きてきた二人。だが、あのスキャンダルを境にマモルは生きる希望を失い、この部屋で死んだように暮らしていた。
マモル「……でも、ショウコは死んだと聞いています。心中したって……」
モチオ「ケッ! 俺は幽霊からの相談は受け付けてねーニャ!!」
モチオは、スマホに写った「生きているショウコ」の写真を突きつけた。
ネコロボ「……事実だけを申し上げます。ショウコさんは、あなたを裏切った罪悪感と、タケルや事務所にはめられた絶望の板挟みになり、心が壊れました。嫌な記憶を失うことでしか、自分を保てなかったのです。」
マモル「…………」
ネコロボ「彼女は、辛い記憶を消し去りました。ですが、それと同時に素晴らしい記憶も同時に失った。本能の奥底では、あなたとの日々だけを必死に手繰り寄せようとしています。消した過去の先に、あなたを思い出したいという『愛』がある。 ……それが、彼女が記憶を彷徨っている理由です。ビビビ」
マモル「……でも。でも、やはり……っ」
裏切られた傷跡は深く、マモルの声は震えていた。
モチオ「お前が許せなくても、相手は忘れてる。……そんな恨み持ってて、何の意味があるニャ? 相手が忘れてりゃ、仕返ししようもねーだろ」
モチオは、オンボロアパートの淀んだ空気を切り裂くように言い放った。
モチオ「相手も忘れてる。……だから、お前も忘れろニャ」
マモル「…………」
モチオ「過去なんて、なんとでも塗り替えられる。誰も証明できねーんだから、武勇伝の語り放題ニャ! 違うか、ネコロボ? 俺は昔 バレンタインデーには女が家の前で行列だった、 今なら誰も証明できないだろ? 嘘でも本当でも。」
ネコロボ「……現在の物理学では、タイムマシンで過去へは戻れません。行ける場所があるとすれば……」
モチオ「未来だけだニャ」
モチオ「おいマモル。俺は面倒なのは嫌いニャ。シンプルに考えろ。ショウコと未来を迎えたいか、そうじゃねーか。それだけニャ。……未来へ進むための『過去の辻褄合わせ』なら、俺が適当にやってやるニャ!! 未来に行くか、行かないか 2択ニャ。」
マモル「………………」
ネコロボ「……3日後。午後2時。ショウコさんと事務所で待っています。ビビビ」
モチオ「本来なら3秒しか待たねーが、今回だけサービスだ、3日待ってやる。……事務所に来いニャ、 あ、このリンゴ、報酬で、もらっていく。」
モチオはテーブルの上のリンゴを一個取ってほおばり去っていく
バタンッ!!
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事務所のリビング。回想を終えた仲間たちは、静かに雨上がりの空を見上げていた。
がり勉猫「……袋小路から抜け出す道は……」
コツ勉猫「……自分たちで、新しい道を作るしかない。……そういうことですわね」
モチタ「でも、マモルさんは一生、ショウコさんを騙し続けることになるよ?」
モチオ「いいんじゃねーか? ショウコも一度はマモルを裏切ったんだ。これは仕返しニャ。……『幸せになるための仕返し』なら、誰も咎めねーニャ」
がり勉猫「これから二人で寄り添って 過去を忘れるために生きる」
コツ勉猫「未来に向かうために、、、ですね。」
午後から雨は上がり、もう雨漏りの音は聞こえなかった。
だが、電話口の向こうでは、いつもの「まどろっこしい会話」が続いていた。
『ひろこ』って、いいこと言うよねー。
”自分を非難する大人数より、
応援してくれる少人数のために
私は全力を注ぎたい”
だってさ……
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過去には誰も戻れないけれど
新しい未来には、皆、必ず行ける。
――第4章「過去の忘れ物」 完――
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