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第21話 第4章 過去の忘れ物 3 真相

一同の意見は一致していた。


「……なんで直接会わせないの? その方が早いでしょ」


モチオ「ダメだ、危険すぎるニャ。あんな『めるる男』にいきなり会わせてみろ! 記憶喪失+新たなトラウマのダブルパンチで、彼女の脳がショートするニャ!」


こんな時だけ、モチオの危機管理能力は異常に冴え渡っていた。


……にしても、なんだ。その格好は。


モチオ「……コツ勉猫。その、無駄に気合の入ったヒラヒラの服は何ニャ」


コツ勉猫「……えっと、アイドルに詳しい方が来るっていうから。私もスカウトされるかと思って、おしゃれしてきましたの♡ 自慢のゴスロリですわ!」



一同「「「「…………(絶句)…………」」」」


ネコロボ「コツ勉猫さんの美しさは唯一無二です。AIの演算でも、比較対象が見つかりません。ビビビ」


コツ勉猫「ネコロボ……素敵♡」


モチオ「いちゃつくのはそこまでだニャ! 来る……来るぞ! ヤツが!! 全員、衝撃に備えるニャ!!」


バタンッ!!


めるる男「いいものって何!? める〇に会えるの!? どこ!? どこなの!?」



モチタ「来た……!! ピ、、ピッコロさん…」


モチオ「ゴハン、すげー気だニャ……だ、大地が震えてやがる……!!」



ゴホンッ!!



がり勉猫の鋭い咳払いが、モチオのDBノリを瞬時に制圧した。



がり勉猫「ええと……お客様」

めるる男「……正夫です」

がり勉猫「正夫さん。こちらへ」



リビングへといざなう。コツ勉猫はキラキラした目で正夫を見つめ、渾身のアイドルスマイルを向けたが――。


正夫は一瞥いちべつもくれず、彼女の横を通り過ぎた。


「……チッ」


コツ勉猫の、はっきりと聞こえる舌打ちが室内に響く。


モチオ「おい、めるる男(正夫)! 講釈はいいから、この女を知らねーかニャ!?」


モチオは、スマホに写した「記憶喪失の美女」の写真を見せつけた。


正夫「んんん……?? どっかで見たような……そうじゃないような……。ううむ」


研究会会長のレンズが、獲物を狙う鷹のように細まった。


モチオ「さあ吐け!! 吐くニャ!! お前がやったんだろニャ!!」


ネコロボ「……モチオさん。刑事ドラマはもういいです。協力者に対してそれは失礼です。ビビビ」


静まり返ったリビング。


めるる男(正夫)は、写真の隅々まで舐めるように凝視し、口を開いた。


正夫「……だいぶ雰囲気違うけど。たぶん、だけど。『杉田マイるん』?」


モチオ「ネコロボ、調書だニャ!!」


正夫「本名、杉田麻衣すぎたまい。2001年生まれ。横浜出身。スリーサイズは……」


「「「キモッ!!!」」」


コツ勉猫の拒絶反応がリビングに響く。


殺気立ったコツ勉猫が、アイドル衣装の裾を握りしめて睨みつけた。「……キモい。キモすぎますわ!」


モチオ「おい、正夫! 聞かれたことだけ答えろニャ! さもないと、このゴスロリお嬢様から、『デレ』のない『ツン』が飛んでくるぞ!! 物理的なツンもくるぞ!」


正夫は怯えながら続けた。


正夫「たしか、3年前に突然姿を消したんだ。それっきり……」


モチオ「ほう……。情報次第では会わせてやってもいいニャ。5万で」


正夫はしばらく考え、そして吐き捨てるように言った。


正夫「……いや。興味ない。麻衣るんは『裏切り者』だもん!!」


モチオ「何ィ!? このクソ! 贅沢言うなニャ!!」


正夫「だって……麻衣るんは……っ!」


モチオはネコロボの検索が「杉田麻衣」で起動している事を確認した。


モチオ「うるせー もういい もう十分だ、用無しだ! 帰れニャ!!」


正夫を追い出した後、ネコロボの検索エンジンがヒットする。



ネコロボ「……杉田麻衣、ヒットしました。噂は本当のようです。ビビビ」


がり勉猫「……正夫さんの言う通りですね。これは、救いようがない」



【杉田麻衣のスキャンダル概要】


幼馴染の『田中守』と婚約。純愛としてファンに支持される。


だが、突如婚約破棄。2.5次元俳優の『タケル』と交際。


実はタケルんは妻子持ち。麻衣は『裏切者・不倫女』としてネットで猛バッシング。


精神的ショックにより入退院を繰り返し、表舞台から消える。


モチオ「チッ! 2.5次元俳優の分際で3次元アイドルに手出しやがって!! Z軸には100年早いニャ!!!」


コツ勉猫「……麻衣も麻衣ですわ! 何がショックよ、不倫でしょ!? 最低ですわ!!」


ネコロボ「……情報からの推測ですが。……付き合ってるというのも事務所が流した誤情報のようです。」


リビングに、ネコロボの無機質な声が響く。


ネコロボ「事務所が『(守)』との結婚を阻むため、タケルに依頼して、

麻衣を誘惑するよう仕向けた、2人の写真を週刊誌に売った形跡があります。」


コツ勉猫「麻衣は騙されたのね!? 事務所もタケルも最低ですわ! 許せませんわ!!」


モチタ「……女心の変わりようって凄いね。さっきまで『不倫女!』って言ってたのに……」


コツ勉猫が、般若のような形相でモチタを睨みつける。


モチタ「い、いえ! なんでもございません!!」


モチクロ「どうしよう。これこそ『パラドックス』だよ。真実が彼女を壊すんだから……パラドックスだよ。」


モチオ「……俺は岩盤浴には行かねーニャ!!」



一同「「「それはデトックス!!!」」」


ネコロボ「……つまり、麻衣様は過去のショックで記憶障害になっています。真実を伝えれば、それが新たな発作の引き金になり、まさにモチクロがいうパラドックスです。永遠に記憶の袋小路から抜け出せなくなります」


モチオ「オフクロ工事かフクロウ孤児か知らねーが……俺はやるニャ!!」


モチオは、不敵な笑みを浮かべてネコロボを振り返った。


モチオ「おい、ネコロボ! 成功報酬として預かってるネックレス、金は何グラムだニャ?」


ネコロボ「……40gです。現在の金相場、1gあたり2万5000円。時価で100万円相当です。ビビビ」


モチオの口角が、吊り上がる。


ガリ勉猫は思った。モチオがこの「薄ら笑い」を浮かべる時、ろくなことが起きないと。

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