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第18話 第3章 夢の押しつけ 完 7 二つの影

センター、大きくバック! 大きくバック!!


打球は不思議な軌道を描き、



そして――。




パシィイイッ!



センターフライ! 試合終了!!


モチオ「よっしゃああ! 勝ったニャ! 完封勝利ニャ!!」


え?


あまりに物語にふさわしくない、残酷な結末。


モチオ「さあ、ガキ! 選べ! 〇学園か! 〇塾か! それとも〇〇PIXか!! 選べ! 社会がある中学か! 英語がある中学か! 選べニャ!」



一同が絶望に沈んだ、その時だった。




ちょっとまった!!



え?




がり勉猫「ちょっと待ったああああ!! 判定! ビデオ判定をお願いします!!」


モチオ「何を! うるせーニャ! 負けは負け、認めろニャ!」


がり勉猫「おかしいですよ! 打球は完全にレフトへ飛んだのに、なぜセンターフライなんですか! インチキです!!」


モチオ「あれはだな、、、ドームの風ニャ!」


がり勉猫「そもそもドームに風なんて吹かないでしょうが! ○○ドームじゃあるまいし!」


モチオ「浜風の魔物ニャ!!!」


がり勉猫「ここ河川敷のドーム!!! 外野見せなさいよ!!」


モチオ「外野は工事中ニャ!」


がり勉猫「やっぱり!!! ほら! 何が工事中ですか!!」


モチオ「バトミントンの工事ニャ!」


がり勉猫「やっぱり変な風でしょうが! ○○でしょうが!!!」


二人が醜い言い争いを続ける中。


ネコロボは、マウンドで肩を落とす父親のもとへ、静かに歩み寄った。


ネコロボ「……お父様。なぜ、あえて見破られている『似非スプリット』を投げたのですか?」


父「…………」


ネコロボ「続けます、 ショウタ君に、打ってほしかった。……違いますか?」


父「…………」


ネコロボ「さらに言えば。ショウタ君はあなたの球を完全にとらえていました。あんなインチキな風さえなければ、文句なしの場外ホームランだったはずです。……なぜ、入らなかったか分かりますか?」


父「…………」


ネコロボ「……ショウタ君もまた、バットに迷いがあった。 ……私の演算結果は、そう告げています。ビビビ」



ネコロボ「……ショウタ君はお父さんが大好きだからです。期待に応えたい、失望させたくない。その優しさが、バットを迷わせたのです」


父「……っ」


ネコロボ「シャキッとしてください! あなたが子供に気を使わせてどうするんですか! 父親なら、息子の一番の理解者、一番のファンであるべきです!!」


電子音が、夕暮れのグラウンドに響き渡る。


ネコロボ「プロになれる保証なんてどこにもない。けれど、どんな草野球だって、誰よりも大きな旗を持って、大きな声で声援を届けてあげるのが、父親の役目じゃないんですか!? ショウタ君の人生の応援団長 それがお父さんじゃないんですか? どんな人生でもショウタ君を一番に愛して、応援するのが父親なはずです! ショウタ君の事 もっと信じてあげてください!」


父「……ありがとう。そして……ごめんなさい」


ネコロボ「……それは、ショウタ君に言ってあげてください」



一方、ベンチの裏では。


コツ勉猫「ショウタ君。……お父さんがなぜ、最後にスプリットを投げたか分か

る?」


ショウタ「…………」


コツ勉猫「あなたに、打ってほしかったのよ!」


コツ勉猫は、ショウタの目を見据えて言い放った。


コツ勉猫「なのに何? あなたの中途半端なスイングは? 人の顔色を伺ってちゃダメ! 本気で打ち返す勇気を持ってほしい。それがお父さんの最後のボールに込められたメッセージなの!」


ショウタ「……僕……」


コツ勉猫「覚えておいて。親はこれからも反対するわ。でもそれは『反対』じゃない。『心配』なの! あなたが何になろうと、どんなに成功しても!! 親は心配で、心配で仕方ないものなの!! 反対って言ってないの! 心配って言ってるの!!24時間 ずっと ずっと あなたが心配で心配で仕方ないの!」


コツ勉猫の瞳に、少しだけ湿り気が宿る。


コツ勉猫「そんな親の心配を払拭したいなら、迷っちゃダメ。……フルスイングして! そのスイングで、親の心配を場外までかっ飛ばしてあげなさい!!」


ショウタ「……わかった。僕、やるよ」


やがて


ショウタと父親は、多くを語らず、並んで帰路についた。


その背中を、猫とロボットが静かに見守る。


ネコロボ「……まだ少し、時間はかかりそうですが」


コツ勉猫「ふふっ。ま、うまくいくでしょうね」




……だが、感動の裏ではまだ「泥仕合」が続いていた。



モチオ「今のはセンターフライだニャ!! 負けは負け! !!」


がり勉猫「インチキに勝負もへったくれもありません! !早く外野のインチキ風発生装置を見せない!」


モチオ「そんなダサい名前じゃない!神風発生装置ニャ!! ああ! 」


がり勉猫「やっぱり!!! かかりましたね!!!」


遠くで言い争う二人の声を、夕食を求める猫たちが冷ややかに聞き流す。


モチタ「……ああ、めんどくさ。もう放っておいて帰ろうよ」


モチクロ「そうだね。僕、お腹空いちゃった。Kタッキー行こうよニャ」


コツ勉猫「いいわね! 私、あのサクサクのビスケットが大好物ですわ!!」


ネコロボ「了解。最新の公式クーポンを発行します。ビビビ」


一同「「「「やったーーー!!!」」」」



***

夕暮れに長く伸びる、二つの影。

父親と、子供の影。

今はまだ平行に伸びているけれど

交わるときがくる


――第3章「夢の押しつけ」 完――


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