第141話 第27章 楽して儲けたい! 3 特許ビジネス
「俺は! 俺は!! 絶対にもう相談所なんてしない!! 楽して儲けるんだ!!」
過去の失敗にブチ切れるモチオの前で、がり勉猫はすっかりげっそりとして頭を抱えていた。
「はい……次は、一体何を企んでいるんですか……」
モチオ「特許ビジネスだ!!」
コツ勉猫が心底呆れた声を出す。
コツ勉猫「で、何? 何か画期的な発明でも考えてるの?」
モチオ「ああ! 毎年、大人気女児向けアニメの『変身ヒロイン番組』は、おもちゃの特許や商標を申請している。そして!! その新しいヒロインのモチーフを、公式が特許を出す前に先回りで考えた!!」
モチオはビシッと指を突き出し、大真面目に宣言した。
「名付けて、和菓子屋ヒロインだ!!」
がり勉猫「幼女向けの番組ですが……」
モチオ「ヒロインビジネスをなめんな! 関連おもちゃ市場は年間100億だぞ!!」コツ勉猫が腕を組んだ。
コツ勉猫「具体的には、どんなメンバーなの?」
モチオ「ピュア大福! ピュアみたらし! ピュア最中だ!」
ネコロボ「変身はどうするんですか?」
モチオ「大福はあんこを全身に身にまとう! みたらしは甘たれを頭から豪快にかぶる! そして最中は、巨大な皮にがっちり挟まれる! 以上だ!!」
がり勉猫「ベタベタして、戦いどころではないような……」
コツ勉猫「最中なんて、挟まれて身動き取れないでしょ……。ただの捕虜じゃない」
モチオ「ふはは! 変身グッズもバカ売れ、ついでに全国の和菓子屋とのコラボ商品で特許の夢が広がる! 決め台詞はこれだ! 『特許の夢、広がる! 和菓子屋ヒロイン!』」
「ですが……」ネコロボが何か言いかけたが、モチオの暴走は止まらない。
モチオ「おう分かってる!! 途中で追加戦士(仲間)が増えるお約束だろ! それも考えてる!! 『ピュアきなこもち』だ!! 一回お湯で濡らしてから、全身にきな粉をまぶして変身だ!」
がり勉猫「一回濡らすところだけ、粉を密着させるための描写として無駄に正確ですね……」
コツ勉猫「本当に無駄な知識……」
モチオはホワイトボードに、おもちゃ業界のスケジュールを書き殴っていく。
「だいたい7月初旬にニューアイテムを投入、11月中旬にパワーアップ変身グッズの販売ニャ!!」
がり勉猫「おもちゃ商戦のスケジュールだけはばっちりです……」
コツ勉猫「お盆に祖父母に買わせ、クリスマスに親にプレゼントさせるサイクルね……」
「ですが……」ネコロボが再び警告音を鳴らす。
モチオ「おう分かってる! 敵の組織は『駄菓子』だ! 洋菓子は過去の歴代シリーズと被るからな……。悪の組織『うまいぼー』だ! いろんな味の怪人が波状攻撃を仕掛けてくる。あの低コストかつコスパ最強の敵にどう立ち向かうかが鍵だ!!」
がり勉猫「むしろ『うまいぼー』は低コストで国民に愛される企業の鏡。我々の味方では……?」
がり勉猫の正論に、モチオはチッと舌打ちをして設定を変更した。
モチオ「じゃあ、敵は『農林水産省』だ!! モチ米の値段を上げて生産ラインを圧迫してくる敵!! 米の先物取引で経済的に勝負する!! これニャ!! 必殺武器はローソク足 必殺技は くらえ!ゴールデンクロス!ニャ!」
コツ勉猫「もはやターゲットが幼女じゃないですね……完全に株とかやってるオジサンです……」
「ですが……」ネコロボが三度、無機質な声を上げた。
モチオ「ネコロボ! まだ何かあるか? 俺の特許戦略は完璧ニャ!!」
胸を張るモチオに、ネコロボは無慈悲な電子音を突きつけた。
「そもそも、これらはアイデア段階であり、特許の対象になりません。また、事前に特許を回避されれば、それで終わりかと。……ビビビ」
「え?」モチオの顔からスーッと血の気が引いていく。
――こうして、和菓子屋ヒロインによるモチオの特許収入は、完全に『0円』となった。




