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【3分短編オムニバス】相談を聞かないモチオ相談所 〜身勝手な人間のカルテと不適切なネコの処方箋〜  作者: モチモチオ
第26章 孤独の番人 「復讐と美談」

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第137話 第26章 孤独の番人 4 2度目の誓い

教会の祭壇の前で、タツオは静かに祈りを捧げている。


その横では、車椅子のアケミが穏やかに微笑んでいた。


アケミ:「本当に私でいいの? タツオさん。私、中卒だよ。あなたと釣り合わな

い……きっと両親だって反対するわ」


その言葉に、アケミの記憶は過去に戻ってる。

タツオの意識は一気に、あのかけがえのない「プロポーズの日」へと引き戻される。


タツオ:「僕は君がいいんだ。世界の誰よりも。たとえ世界の誰もが反対したって構わない。僕は君に認めてほしい。アケミ『で』いいんじゃない、アケミ『が』いいんだ」


アケミ:「本当かな? 10年後も、20年後も……同じこと言ってくれる?」


タツオ:「ああ。だから、僕と結婚してほしい」


タツオはアケミの指先から指輪を外し、もう一度、愛を込めて差し出した。


アケミ:「嬉しい、ありがとう。一緒に幸せになろうね」


*************************


モチオ:「そうか。で、アケミは?」


タツオは、静かに首を横に振った。その後の彼女の行方は、彼自身も知らない。先生はアケミに新しい名前と生活を用意しており、一切接点がないとのこと。


モチオ:「そうか……。にしても、だからお前はこの幸せを、記憶を……家を守りたくてここに居るんだな。気持ちはわかるが……。それにしても、この家、ボロすぎないか? お前も稼ぎはあっただろう。」


タツオ:「いや、ここは俺の家じゃない。もともとは都心に家があったが……流れ流れて、ここに住み着いただけだ」


モチオ:「そうか……」


モチオは短く答え、酒を煽った。


気づけば、三時間の月日が流れていた。


モチオ:「ま、そろそろ俺も帰るニャ。三時間経ったしな。適当に理由をこねて『断られた』と言えばいいだけの話だからな」


すると、タツオが唐突に切り出した。


タツオ:「俺、この家をでる。ま、もういいだろう。」


モチオ:「無理しなくていい。別に俺は、最初から成功報酬なんて望んじゃいない」


タツオ:「いや、なんか全部話したらスッキリしたわ。……というか、ゆっくり話せる相手が欲しかっただけかもしれないな、時期はもう過ぎたしな。」


モチオ:「そうか……でも……」


モチオは言葉を飲み込んだ。「どこへ行くんだ」とは、野暮で聞けなかった。


タツオ:「そうだ、モチオ。お願いがあるんだ。条件を飲んでくれれば、出ていく」


モチオ:「なんだ。飲むかどうかは、条件次第だニャ」


タツオはおもむろに、一枚の紙を差し出した。そこには二つの住所が記されている。


タツオ:「上の住所にある荷物を、下の住所に届けてほしい。下は、息子の墓がある場所だ」


モチオ:「上の住所の荷物を、下の住所へ……か。遠いな」


タツオ:「ああ。だけど、依頼金を払う金がない。まあネコ建設に、出ていく条件だとふっかければ金ぐらい出してくれるだろう。」


モチオ:「安心しろ……だが、無理に出ていけとは言わんぞ。そもそも、俺は再開発なんて、いい事だとは思ってないからな」


タツオ:「ま、俺達が反対しようがしまいが、再開発は進むさ、俺には再開発も何も興味はないけどな。」


しばらくの間、二人の間に沈黙が流れた。


タツオ:「俺は無理に出ていくなんて思ってない。むしろ、少し安心してるんだ。頼める相手が、今までいなかったからな……。俺の条件、飲んでくれるか? 俺は、ずっとそれを待っていたのかもしれん お前なら信用できる。」


モチオ:「わかった。依頼元にはそう連絡して、金を今日中に振り込ませてから向かう。安心しろ、俺は約束は守る男だ」


タツオ:「善は急げ、だな。じゃあ、俺も今日、ここを出るよ」


モチオは事務所に戻ることにした。


去り際、一度だけ振り返って言った。


モチオ:「次は、幸せになれよ」


タツオは、この日初めて、少し明るい声で言った。


タツオ:「先生もな。」

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