第134話 第26章 孤独の番人 1 立ち退き
がり勉猫:「私は関わりませんよ!!!」
がり勉猫は、毛を逆立てて怒っている。
がり勉猫:「またまた、なんでそんな依頼を受けたんですか!!」
モチオ:「??? 成功報酬300万だぞ! 受けるに決まってるだろうが!!」
ブチ!!
がり勉猫:「地上げ屋って何ですか!! そこまで落ちぶれてないですよ!!私は!」
モチオ:「地上げ屋も唐揚げ屋も変わらん!!!」
一同:「ぜんぜんちゃうわーー!!」
がり勉猫:「という、ことでモチオさん一人でお願いしますね。コツ勉猫、ネコロボ、行きましょう」
三匹は実験室へと消えていく。
モチオ:「フン!てめーらの力は借りん! ヨシ、いっちょささっと行ってきますか」
モチオは依頼者から言われた場所へ向かう。5丁目の再開発エリア、タワマンの端にポツンとボロボロの一軒家があった。
モチオ:「わかりやすーいな」
モチオは「田所」という表札を見つめる。
近代的な街並みの中で、そこだけ時間が止まったようなボロ屋。立ち退き拒否の末、巡り巡ってモチオのところに話が来たのだろう。
ドンドン
返事はない。
ドンドン
やはり、いない。
モチオ:「おかしい、いつもいると聞いてるが……」
ドアノブを回すと、ガチャリと開いた。鍵はかかっていない。
モチオ:「お邪魔しまーす」
大声で挨拶しリビングへ向かうと、男がこたつで横になっていた。
タツオ:「なんのようだ」
モチオ:「お土産の酒だ。男一人、いつも居る。……つまり酒ニャ」
タツオがゆっくりと振り返る。
タツオ:「お前……」
タツオは、不思議そうにモチオを見つめている。
モチオ:「なんだ?」
タツオ:「フン! そういうことか……」
男は座り直し、言葉を続けた。
タツオ:「さあ、酒あるんだろ?」
モチオは酒を取り出し、二人で飲み始める。
タツオ:「要件はわかってる。断る」
モチオ:「そうか、そう伝える」
タツオ:「なんだ、あっさりだな、 説得に来たんじゃないのか? ネコ建設の人間だろ?」
モチオ:「違うな、俺は依頼を受けただけの相談所だ。成功報酬は惜しいが、説得なんぞ面倒くさい。今まで何人も来てるんだろう、それでも断ってるお前を、俺が説得したとて変わると思えん。俺は説得の神じゃない」
タツオ:「じゃー、なんで来た」
モチオ:「着手金が10万だ。失敗しても10万。つまりだ、行くだけの既成事実を作って確実に10万稼ぐ。ま、この酒はお前との分け前だニャ」
タツオ:「面白いな……」
タツオは無口な男だった。沈黙が続く中、モチオは部屋を見渡す。
モチオ:「この写真は、奥さんと子供か」
タツオ:「ああ。生きていれば、子供は小学校5年生かな」
モチオ:「そっか……。いやなら答えなくていいが、奥さんは?」
タツオは鼻で笑った。
タツオ:「そういうことか……成功したんだな おめでとうだな。」
モチオ:「なんだ? おめでとうって??」
タツオ:「ふん、、なんでもない。離婚だな、どこで何してるわからん。」
モチオ:「そうか……」
再開発が進む5丁目のタワマン付近。工事現場の音が遠くから響く。
閉め切ったカーテンの隙間から、暖かな日差しが差し込んでいた。
二人は時折、一言二言の会話を交わしながら酒を飲む。
タツオ:「なんでここにいる? 帰らないのか?」
モチオ:「まあな、3時間はいる予定ニャ。3時間説得したが無理だった、という報告があるからな」
タツオ:「まあ 好きにしろ。特に俺もやることがないからな」
お酒が回り、モチオは少しこたつで寝てしまう。
一時間ほど経っただろうか。
モチオは目覚めたが、タツオはただコタツで座っていた。
モチオ:「タツオ……家族の話、聞いていいか」
モチオは寝転んだまま仰向けになり、明かりのついていない天井を見つめて言った。
タツオは、ゆっくりと話し始める。




