第132話 第25章 HOME 14 エンディング?
モチオはどこかへ寄った後、静かに「離れ」のドアを開けた。
モチタ・モチクロ:「もーーーコツ勉猫!! 助けてよ!! また牛丼地獄!!! もう嫌だ!!!」
ネコロボ:「遅いお帰りでしたね。学会の方は? ……あ、順調に終わって何よりです」
二人の少年とロボットは、まるで何事もなかったかのように彼女を迎える。
そこには、三日前の阿鼻叫喚も、警察のサイレンも、裏切りの五百万円の影も、微塵も残っていない。
実験室の奥から、聞き慣れた人影が現れる。
タツキ(がり勉猫):「ああ、コツ勉猫。次の学会発表が決まりましたよ。四ヶ月後です。準備してください……」
留置所から戻ったばかりのはずのタツキも、いつもと変わらぬ知的なトーンで彼女に告げる。
コツ勉猫の瞳に、熱い涙が溢れ出した。けれど、彼女はそれを拭い、いつもの「コツ勉猫」としての仮面を被り直した。
コツ勉猫:「もう! 私がいないと何にもできないダメンズ達ですわ! さ、今日は偶然にも鮭があるから、シチューにしますね!」
「わーーーーい!!!」
弾けるような歓声。
一瞬にして、止まっていた時計の針が回り出す。
湯気を立てる温かなシチューを囲み、食卓には笑顔が戻った。
コツ勉猫は、白い湯気の向こう側に、かつて自分を「銀河系一の宝石」と呼んだ父親の幻影を見る。
(……クルミ。好きなことをしなさい。いっぱい、いっぱい、好きなことをしなさい。お父さんは、クルミが大好きだから いつでも応援している。)
その幻影と重なるように、目の前にはタツキの姿があった。
彼は何も言わなかった。
今回の逮捕によって、研究者としての名誉である学会発表を一年のあいだ停止されるという、重い処分を下されたこと。それを、彼は一言も口に出さない。
そんなことよりも、彼は今、目の前にあるシチューの味を、心底楽しそうに味わっていた。
モチオ:「おーい、お土産のシュークリームニャ!」
遅れて帰ってきたモチオが、ガサガサと袋を鳴らす。
その不器用な男の背中を見つめ、家族たちは満足そうに笑った。
完
がり勉猫:「……ちょっと待てい!!!!!!」
がり勉猫が勢いよく立ち上がり、食卓を叩いた。
がり勉猫:「……500万円は!?」
モチタ:「500万円は!!」
モチクロ:「500万円は!!!」
三人の刺すような視線が、ビールを飲もうとしていたモチオに集中する。
モチオ:「いや……その……もう、使った……かな……ニャ?」
ネコロボ:「いえ、モチオさん。引き出しの中です。正確には、奥の隠し仕切りのなかにあります」
モチオ:「ぎゃーーーー!! やめて!! ネコロボ、余計なことを言うな!! それは開かずの扉ニャーーー!!!!」
がり勉猫:「コツ勉猫。グラインダーを持ってきてください。……もう、切ります」
コツ勉猫:「はい、お兄様。火花が散りますから、皆様お下がりくださいませ」
モチオ:「やめろーーー!! 職人の道具をそんなことに使うな!!」
がり勉猫:「……デスクか、あなたか。どちらが切られたいですか!! さあ、真相を吐くのです!! あの金、本当はどうするつもりだったんですか!!」
モチオ:「ぎゃーー!! 言います! 言いますから!! グラインダーをこっちに向けるなニャ!!」
モチオが真っ青な顔で両手を挙げた。




