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【3分短編オムニバス】相談を聞かないモチオ相談所 〜身勝手な人間のカルテと不適切なネコの処方箋〜  作者: モチモチオ
第 25章  HOME (15話 長編) 「未成年者略取誘拐罪」

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第131話 第25章 HOME 13 サンマのかば焼き

コツ勉猫クルミ:「……」


母親のモトミの家では、かつての「冷しゃぶ」よりも豪華な食卓が整えられていた。


けれど、クルミの心は死んだままだ。


目の前の料理は、彼女にとっては何の味もしない無機質な物質に過ぎなかった。



一方。


あれから3日が過ぎた。


離れの食卓には、また牛丼が並んでいた。


けれど、誰も愚痴ひとつ言わない。


沈黙の夕食。葬式よりも暗い時間が流れる。モチオも、モチタも、モチクロも、誰一人として言葉を発しなかった。


ただ、3日前に「3日目で食う」と言ったモチオだけが、無表情に箸を動かしていた。


そして、留置所に拘束されているタツキ(がり勉猫)は、父との会話を思い出していた。


タツキ:「父上! クルミが可哀想です! クルミにも人生があります。僕、クルミを助けたいんです! 父上!!」


父・ヨシロウは、いつになく真剣な面持ちで息子を見据えた。


ヨシロウ:「タツキ……。覚悟はできているんだろうな」


タツキ:「はい、父上!!」


ハル(母):「あなた……」


ヨシロウ:「タツキがここまで言うんだ! タツキ、じゃあ考えろ。どうすればいいか考えろ! 天才はな、こういう時に頭を使うんだ。今は感情を解放して、思いっきり考えろ。俺はそれに乗る」


タツキ:「はい! 父上!!」


:::::::::::::::::::::


その頃、モトミの歪んだ欲望は加速していた。


モトミ:「久しぶりのテレビ出演が決まったわ」


モトミの再婚相手:「おお、よかったな……」


モトミ:「『ADHDで発育障害の家出少女、帰る』って特集を組んでくれたの。



モトミの再婚相手:「あいつ、学会発表で賞をもらったってニュースになっていたし、まだ金になるわ。うふふふ」


テレビ局の楽屋に連れて行かれるクルミ。


モトミ:「しっかりね、クルミ」


クルミ:「…………」


「本番でーす!」というディレクターの声。


けれど、カメラが回る直前。


クルミは、走り出した。


ただ、ただ、走った。


もう帰る場所なんてない。


モチオたちの家にも帰れない。


裏切られた、捨てられた、そう信じ込まされている。


自分には、帰る家も、行き場所もない。


でも、彼女は走った。


外へ飛び出すと、激しい雨が降ってきた。


空からも、瞳からも、止まらない雨が彼女を濡らしていく。


激しい雨の中、クルミはかつての図書室で始まった物語を思い出していた。


タツキ(がり勉猫):「完成です!! これで起動させましょう。名付けて……!」


クルミ(コツ勉猫):「ちょっと待ってお兄様。このロボ、知識しかありませんわ。これじゃ未完成です」


タツキ:「ロボットに、知識のほかに何が……?」


クルミ:「お忘れでしょうか。人間と一緒に住むなら、知識だけじゃダメです。優しさ、愛情……もっと人間らしい『感情』を入れないと、何の役にも立ちません」


タツキ:「そうですね……そうしましょう。あ、コツ勉猫、少女漫画の知識は入れちゃダメですよ?」


クルミ:「あ、バレました? うふふ」


そんな温かな記憶の断片が、走るクルミの脳裏を駆け巡る。


離れで過ごした騒がしい日々。


モチクロ:「コツ勉猫の料理、おいしー!」


モチタ:「なんでゲームの電源消すの! 今宿題やろうと思ってたのに!」


ネコロボ:「コツ勉猫さんは、素敵な奥様になります」


モチオ:「コツ勉猫! また俺の会社の経費でコスプレの衣装買ってからに――!!」



そして、あの日。


タツキ:「クルミ、今日から俺たち兄弟だ。一生、僕が君を守ってみせる! ……あ、これ、少女漫画みたいですか?(笑)」


裏切られたと思っていた。捨てられたと思っていた。


けれど、とめどない涙があふれ、雨と一緒に頬を伝う。


「……素敵なレディーだね。こんなところで濡れてないで、俺とお茶しない?」


背後から、聞き慣れた、けれどおそろしく場違いな「キザな声」が聞こえた。


振り向いたクルミの視線の先には、土砂降りの中で、不器用そうに傘を差す男がいた。


モチオ:「……こんな感じで、合ってるか?」


クルミは、泣き出しそうな顔のまま、少しだけ笑って答えた。


クルミ:「全然……違います!!! もう、やり直しです(笑)」


モチオ:「どこがだよ!?」


クルミ:「そもそも……顔が、全然違います!!」


モチオ:「そりゃあ悪うございました。……今から整形してくるから、そこで5日待っとけ」


「……うふふ、あははは!!」


ふてくされた顔で、けれど自分の体半分が濡れるのも厭わず、彼女に傘を差し出すモチオ。


モチオ「今日の夕食は何ニャ?」


コツ勉猫「サンマのかば焼きですわ。」


コツ勉猫は少し笑った。


モチオ「だな、デザートはシュークリームだ。」



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