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【3分短編オムニバス】相談を聞かないモチオ相談所 〜身勝手な人間のカルテと不適切なネコの処方箋〜  作者: モチモチオ
第 25章  HOME (15話 長編) 「未成年者略取誘拐罪」

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第130話 第25章 HOME 12 法の壁

十二年前と同じ、湿った風が吹く朝だった。


離れの入り口で、タツキ(がり勉猫)の怒声が響き渡る。


タツキ:「帰れ!! どの面下げてここに来たんだ!! 帰れ!!」


目の前には、高級車から降り立ち、完璧な「悲劇の母親」を演じるモトミ(母)が立っていた。


モトミ:「タツキ君、落ち着いて。私は確かにあの時、お金に目が眩みました。でも、今はクルミのこと、真実に向き合って……」


タツキ:「嘘をつくな!! 二度とその口で彼女の名を呼ぶな! 帰れと言っているんだ!!」


モチクロ:「そうよ! この嘘つき女! 帰って!!」


モチタ:「コツ勉猫のパパをあんな目に遭わせて……よくも来られたね!! 帰れ!!」


子供たちの必死の「帰れ」という叫びが、離れの空気を震わせる。


しかし、その喧騒を切り裂いたのは、背後から聞こえた、場違いに冷めた声だった。





モチオ:「……おい、通してやれ」





全員が耳を疑った。


タツキ:「……モチオさん? 何を言ってるんですか! 通してやれって……」


モチオ:「聞こえなかったか。通してやれと言ってるんだよ!!」




モチオはのっそりと前に出ると、モトミと正対した。


その瞳には、十二年前、警察を煙に巻いた時のあの「おどけ」は微塵もなかった。



モチオ:「本当にコツ勉猫、クルミを幸せにしてくれるのか? 今度は間違いねえな、モトミ」


モトミ:「……はい。絶対に」


タツキ:「モチオさん!! いつものあなたはどうしたんですか!! この女は嘘に決まってる!! モチオさん!!」



仲間たちの悲痛な叫びを、モチオは無視した。


モチオ:「モトミ、大人の話をしよう。ここで暴れても、次は警察が来る。……もう外で待機してんだろ? 違うか?」


モトミは「さあ」と皮肉な笑みを浮かべた。その余裕が、法という後ろ盾を物語っていた。


モチオ:「そうだな、お前も面倒だろう。じゃあ、ここは穏便に解決金でどうだ? ……依頼金は?」


モトミ:「200万円です」


モチオ:「いや、500万円だ。それなら飲む」


タツキ:「あなた、最低です!! 見損なましたよ!! 今回という今回は……!!」


モチクロ:「モチオ、やめて! お願いだから!!」


モチタ:「レアアイテム返すから、そんなこと言わないで!!」


阿鼻叫喚の「帰れ」が、今度は身内であるモチオに向けられる。けれど、モチオは一切の反論をせず、冷たく言い放った。


モチオ:「……ネコロボ。コツ勉猫を引っ張り出してこい」


ネコロボ:「……モチオさん……」


モチオ:「ネコロボ!! 俺の言うことが聞けねえのか!! とっとと早くコツ勉猫を引っ張り出してこい! 無理やりにでもだ!!!」


引きずり出されるように現れたコツ勉猫クルミを、モチオは一瞥もせず、警察車両を背にした母親の方へと突き飛ばした。


モチオ:「お前の大好きなお母様のお出迎えだ。行け。……さっさと行け!! 邪魔だ!!! お前の家はここじゃねえ!」


タツキの拳が、モチオの頬を打った。


タツキ:「モチオ!! お前を軽蔑する! 心からだ!!」


仲間たちが泣きながらモチオに罵声を浴びせる中、コツ勉猫はとうとう親の手へと渡される。その背中に、モチオが声をかけた。


モチオ:「なあ、コツ勉猫。お前が作ったサンマのかば焼きは、いつまでに食えばいい?」


コツ勉猫は下を向いたまま、消え入りそうな声で答えた。


コツ勉猫:「……4日はもつわ」


モチオ:「いや、俺は3日だな。半分分けてやる」


コツ勉猫:「……え?」


小さく、コツ勉猫が呟いた。


タツキ:「絶対離さない! クルミ! どんな時も一緒だ!! お前らどけ! どけ!!」

暴れるタツキは公務執行妨害で取り押さえられ、そのまま連行されていく。


コツ勉猫を乗せたパトカーの赤色灯は、夜の闇に溶け、どんどん小さくなっていった。


モチオは、殴られた頬を拭うこともせず、手渡された500万円をデスクの引き出しにしまった。



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