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第127話 第25章 HOME 9 嘘

施設内の応接室。空気は凍りつき、校長の冷徹な視線がタツキを射抜いていた。


校長:「タツキ君! お前、こんなことをして、ただで済むと思っているのか! 本当にクルミちゃんとは無関係だと言うんだな!!」


激高する校長の横で、呼び出された父・ヨシロウが、いつになく厳しい顔でタツキの襟元を掴み上げた。


ヨシロウ:「タツキ! 貴様、何ということをしてくれたんだ! 申し訳ございません、校長先生。……この馬鹿息子め、家でこっぴどく説教します!」


ハル(母):「……ええ! 私からも厳しく言い聞かせますわ。もし、クルミさんの居場所が分かりましたら、すぐにご連絡いたします。……失礼! ほら、タツキ、来なさい!!」


ヨシロウはタツキの襟を引くようにして、逃げるように施設を後にした。


:::::::::::::::::::::


……その日の夕食。



自宅の食卓には、昼間の嵐のような険悪さは微塵も残っていなかった。


ヨシロウ:「ガハハハハ! タツキ、お前……勉強、勉強ばかりだと思っていたけれど、やるじゃないか! 男だな!! ガハハハハ!!」


タツキ:「……え?」


呆然とするタツキの横で、ハルもまた、楽しそうに笑いながら箸を動かしていた。


ハル:「タツキったら、少女漫画のヒーローみたいだったって。帰り道に図書のお姉さんから聞いたわ。素敵な男性に育ってくれて、お母さん、本当に嬉しい!! ……うふふ」


タツキ:「え……? 演技、だったの……?」


ヨシロウ:「当然だろう! あの校長はしつこいからな。ああでもしないと、いつまでも帰してくれないだろう? それに、あの図書館の職員さんも、きっとお前の味方だぞ。……お前のこと、ニコニコして見ていたからな。やるなあ、お前。この女たらしめ!カッコつけやがって! ガハハハハ。」


ハル:「演技しないと、あの場所からあなたを連れ出せなかったもの。だから、ね。 はあー 私も言われてみたいわー お姫様ならどうするんだって!って…」


あまりの上機嫌の両親にタツキは、少し照れながら、そして張り詰めていた糸が切れたように、深く息を吐いた。



(……ああ。よかった)



ヨシロウ:「でもな、タツキ。ちゃんと、お父さんとお母さんには事情を説明してほしい。……俺たちは、お前の気持ちを、何よりも一番に尊重してあげたいんだ」


タツキは静かに頷いた。


そして、あの静かな図書室で始まった物語を、ゆっくりと語り始めた。


ヨシロウ:「そうだな。一度、全日の子供たちに社会見学という形で外出を提案したが、どの親も反対でどうにもならんかったな」


ハル:「校長先生も本当はそう思っているけれど、親が認めない以上、方針を変えるには時間がかかる……そう言われていたの」


重い沈黙が食卓を包んだ時、タツキのタブレットが小さく震えた。


タツキ:「あ、クルミちゃんからだ。え? ……今から会いたい、大事な話があるって」


タツキは弾かれたように両親を見た。


ヨシロウ:「ダメだ、危険すぎる。今、外に出れば僕たちもマークされているはずだ」


タツキの顔が、一瞬で暗く沈む。


ハル:「あなた、使っていない研究所があるじゃない? あそこなら……」


ヨシロウ:「そうか。将来タツキに譲ろうと思っていたあの場所だな。よし、あそこなら誰の目も届かない」


ヨシロウはタツキに、その住所を複雑なある暗号にして送らせた。



:::::::::::::::::::::


ブンタ:「これ……なんだ? 文字化けか?」


クルミ:「うふふ、お兄ちゃん面白い! これ、ネコ文字だよ。お兄ちゃんと私で作ってたの。 他の人に見られるの嫌だし、、、で、、、


ええっと……ニャー、シャー、シャー、ミャオ、、、これは、、、『*****に来てほしい』って。パパ、いつ行く?」


ブンタ:「明後日にしよう。明日は……遊園地に行くからな!」


クルミ:「遊園地? って、なあに?」


ブンタ:「可愛いネズミさんがいるところだよ」


クルミ:「……楽しみ―――!!!!」


翌日。


現実世界の警察が血眼で探している中、二人は銀河系で一番幸せな時間を過ごしていた。


クルミ:「パパ見て!! ネズミさんの耳!」


ブンタは、何度も何度もシャッターを切った。デジカメのメモリーに、そして、決して消えることのない自分の心の奥底に。


クルミのあんな笑顔、生まれてから一度も見たことがなかった。


……そして、運命の翌朝。


指定された無機質な研究所の重いドアを、タツキが内側から開いた。


クルミ:「お兄ちゃん! 久しぶり!」


タツキ:「な、何? その格好は……」


そこには、頭に「ネズミの耳」をつけ、顔にはタツキとお揃いの「牛乳瓶の底のような眼鏡」をかけた、ちぐはぐで、最高に愛らしいクルミが立っていた。


タツキは、ネズミの耳よりも、自分を真似て変装した彼女の姿に、言葉を失い呆然と立ち尽くした。



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