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第126話 第25章 HOME 8  「未成年者略取誘拐罪」

すみません、社長


ブンタは電話の前で謝っていた。


社長:「すまない、今までの給料はその日のうちに送っておいた。」


ブンタ「はい確認しました、、、でも少し多いような」


社長「それはまあ ボーナスってことで。 俺にはこれぐらいしかしてやれん、だいたいブンタ君の経歴、態度から事情はなんとなく察していた。 嫌な仕事も不満一つやってくれた。これぐらいさせてくれ。」


ブンタ「ありがとうございます。 これ以上 ご迷惑かけられないので、、、あの、、、」


社長「車は例の駐車場だな、鍵も確認したから、、、これ以上は関われないけど、、 本当はまじめなブンタ君には会社に残ってほしかったんだけどな。 すまん 俺が不満言っちまったわ。 じゃーな。」


ブンタは部屋を引き払い、クルミを連れてどこかに出かける。


ブンタ「クルミ? その恰好はなんだ? その牛乳眼鏡は?」


クルミ「お兄ちゃんと一緒の恰好しているの、 ほら変装」


ブンタ「クルミはやっぱりかしこいなー」


ブンタとクルミは姿をくらませた。


その夜、ニュース番組の画面は、ある「悲劇」一色に染まっていた。


モトミ(母):「……信じられませんわ! あの男、あんな汚い格好をして……うちのクルミを、あんなゴミ溜めのような場所に連れ去るなんて!」


スタジオの照明を浴びて、ミチコは高級なハンカチを目元に押し当てていた。その指先は怒りに震え、完璧にセットされた髪が激しい身振りでわずかに乱れる。


モトミ:「クルミは『神様からの授かりもの』なんですのよ! あの子の才能は、国の、いえ、人類の宝ですわ。それを、あんな前科者同然の父親が……! 皆様、どうかお願いです、あの子を……私の『商品』を……いえ、私の『愛する娘』を取り返して!」


言葉の端々に本音が漏れ、そのたびに彼女は過剰なほどに咽び泣いて見せた。


一方。


逃亡先の安宿で、ブンタとクルミは、音を消したテレビをじっと見つめていた。


クルミ:「……パパ。あの人、また嘘ついてる。クルミは『石ころ』じゃないって言ったのは、パパだけなのに」


ブンタは、娘の耳を塞ぐように強く抱きしめた。


画面の中の母親は、もはや一人の親ではなく、逃亡者たちを追い詰める「法と世論」という名の巨大な怪物そのものだった。


モトミ:「……絶対に逃がしませんわ。あの子は、私が作った最高傑作なんですもの!」


ブンタは知っている。


これまで、正論を並べても、涙を流しても、あの「法」という名の巨大で無機質な壁に、何度も、何度も、完膚なきまでに打ちのめされてきた。




「未成年者略取誘拐罪」



その忌々しい文字が、いま、自分と娘の背中にべったりと張り付いている。



警察も、じきに動く。


外のサイレンの音が、自分をとらえる音に聞こえる。


ブンタは、ふと横に座るクルミを見た。


クルミは、牛乳瓶の底のような眼鏡を少しずらし、鼻歌を歌いながらシュークリームを食べていた。


クリームが口元についても気にせず、窓の外に流れる夜景を楽しそうに眺めている。


クルミ:「んー、おいしい! パパ、楽しいね。 お兄ちゃんにも、これ食べさせてあげたかったな」


だからと言って、あの施設に戻せば もうこの笑顔は見られない。


ブンタは決断を迫られていた。

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