第122話 第25章 HOME 4 家族の破綻
タツキ(がり勉猫):「お父様、どうして……! どうしてでしょうか! クルミはなぜ、外出許可が出ないのでしょうか!」
タツキの叫びが、静かな食卓に響く。
ヨシロウ(父):「……それが、クルミちゃんの『母親』から了解が出ないんだ。私ではどうしようもできない。すまない、タツキ」
ハル(母):「タツキ、これでもお父さんはだいぶ頑張ったのよ。わかってあげて」
タツキ:「そんなのおかしいですよ! 父上! 母上! ……そうだ、クルミの『お父さん』は? クルミのお父さんは、どう思っているんですか!」
タツキの問いに、両親は苦しげに視線を落とした。
その夜、タツキ家の夕食は、いつになく暗い沈黙に包まれていた。
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記憶の向こう側。かつての、あたたかなリビング。
ブンタ(クルミ父):「おおお、クルミ! クルミは天才だね! すごい! 本当にすごいぞ!」
クルミ:「パパ! パパは『天才』と『クルミ』、どっちが好きなの?」
ブンタ:「クルミに決まっているだろう!」
クルミ:「じゃあ、パパ! 世界一大きなダイヤモンドとクルミなら、どっちを選ぶ?」
ブンタ:「ダイヤモンド? あんなもの、クルミに比べればただの石ころだ! クルミに代わる宝石なんて……銀河系をひっくり返して1万年探したって見つかりゃしない。いや、永遠に見つからないな!」
クルミ:「パパ、大好き!!! 私、パパと結婚する!!」
幸せな家庭の、すぐ裏側で。
テレビの画面越しに、モトミ(母)の作り笑顔が部屋を照らす。
TV:「私がクルミを産んだ時、私の上に神様が降りてきて……」
TV:「クルミは発育障害で、ADHDで、それでも私は……」
TV:「クルミは私の遺伝子なのです。私は神様から信託を受けて……」
時折、画面の端で表情を失ったクルミが、見せしめのように立たされている。
ブンタ(父):「モトミ! お前、またクルミを利用して出演料を……! 最低な母親だ!」
モトミ:「何を! 私が母親よ! あなたなんて関係ないわ、離婚よ!」
ブンタ:「何を言ってる、クルミの世話なんて全くしていないじゃないか! 料理だって、毎日毎日冷しゃぶばかり……!」
モトミ:「クルミはADHDだから、冷しゃぶしか食べないのよ!」
ブンタ:「ふざけるな! テレビ出演も今すぐやめろ! クルミは晒しものじゃない、お前の私物じゃないんだ!」
クルミの耳には、絶え間ない罵声が響いていた。
そして、ブンタの出張中に、決定的な「事件」が起きた。
数日後。仕事を終えて帰宅したブンタを待っていたのは、冷え切った沈黙だった。
ブンタ:「……ただいま。クルミ?」
返事はない。
部屋の中は、まるで最初から誰も住んでいなかったかのように、もぬけの殻だった。
そこに、モトミとクルミの姿はなかった。
銀河系にたったひとつの宝石は、母親の手によって、闇の中へ「連れ去られた」のだ。




