第12話 第3章 夢の押しつけ 1 僕は誰のもの?
モチオは、事務所(ボロ倉庫)でイライラを爆発させていた。
「なんでニャ……なんで、なんで、なんでーーー!!!」
※注:モチオは、裏で回収された「500万円」の存在をまだ知らない。
モチオ「がり勉猫の実験室だけ、最新のエアコンがついてるの、おかしいニャ! ズルいニャ!」
がり勉猫「モチオさん。あなたは私の家に勝手に事務所を構えている居候ですよ。家賃も払わずによく言いますね」
ガタガタ、ピチャッ、ポタ……。
モチオの事務所では、隙間風と雨漏りの音が虚しくセッションしている。
モチオ「俺の社長の夢が……。美人秘書を侍らせて、タワマンに住んで、毎日飲み歩く計画が……!」
ふと、隣で爪を磨くコツ勉猫に視線をやる。
コツ勉猫「……何よ。秘書じゃないし! キモいし! 失礼しちゃうわ!!」
モチオは深い溜め息をついた。暇だ。あまりに、暇すぎる。
……その時。
「あのー、すみません……」
半分寝落ちしていたモチオの耳に、か細い声が届いた。
モチオ「……!! 客かニャ!?」
現れたのは、小学校4年生くらいの少年だった。
モチオ「……ガキじゃねーか。シッ、シッ! ガキに用はないニャ」
少年「……ちゃんとお金なら持ってるよ!」
少年――ショウタは、ずっしりと重い貯金箱を差し出した。
モチオ「ほう……。ガキのくせに、話が分かるじゃねーか。よし、いただくニャ」
モチオが肉球を伸ばした瞬間。
バシィイッ!!
がり勉猫「モチオさん! 最低です、子供からカツアゲですか!?」
ガリ勉猫はショウタをリビングへ案内した。
「まずはお話だけ。無料ですよ。暖かいミルクがいいかな? それともオレンジジュース?」
ショウタ「じゃあ、オレンジジュースで……」
モチオ「おい! 俺を無視するなニャ! 俺は社長、お前らは従業員だろニャ!!」
渋々リビングへ移動したモチオは、そこで「異変」に気づいた。
「……? なんでダイソンの温冷扇風機があるニャ?」
「……ドクターエアーもあるニャ」
「……エアコン、これ最新型じゃねーかニャ!?」
さらに、ネコロボのボディがメタリックに輝き、CPUの駆動音が異常に静かになっている。
モチオ「おかしい……おかしいニャ……!! なんで、どこにそんな金が……!?」
モチオは、ショウタの相談どころではなかった。
自分の家なのに、自分だけが知らない「成金」の気配に、戦慄していた。
がり勉猫「モチオさん! モチオさん!! 聞いてますか!?」
モチオ「え!? 『どこにそんな金があるんだ?』ってことニャ!?」
がり勉猫「違います! ショウタさんの話です!!」
ネコロボ「難しい問題です。」
コツ勉猫「……聞いてますの? モチオさん」
モチオ「あ、ああん? なんの話ニャ」
モチオは、ダイソンの扇風機の「羽根がないのに風が出る」仕組みを解明しようとしていた。
がり勉猫「ショウタさんは、将来プロ野球選手になりたいそうです。しかし、お父様が『医者になれ』と毎日塾通いを強いて、野球ができない。それが悩みです」
モチオ「ああああああああああ!! しょ、う、も、ねーーニャ!!」
ショウタ「野球もしたいけど……お父さんの期待にも応えたいんだ……っ!」
がり勉猫「わかります……その板挟みの苦しみ、胸が痛みます……」
モチオ「がーーー!! 悩むだけ時間の無駄ニャ!! 答えは出てるニャ!」
ショウタ「えっ……本当!?」
モチオ「まず、そのオレンジジュース代、1000円ニャ」
がり勉猫「私のジュースです! 勝手にボッタクらないでください! ……で、答えは!?」
モチオは鼻をほじりながら、最新のエアコンの風を浴びて言い放った。
モチオ「なーに、簡単ニャ。……『将来のことは、将来になればわかる』。以上にゃ!」
…………。
一同「「「「相変わらず、身も蓋もねーーーーー!!!」」」」




