第119話 第25章 HOME 1 動き出した時計
最初に:作者より
作中に登場する「共同親権」や家族問題は、
制度としては美しく見えても、現実では“絵に描いた餅”になってしまうケースが多く存在します。
この物語が描く出来事が「ありえない話」なのかどうかは、
ぜひ読者の皆さまご自身が、日々のニュースや社会の動きを見ながら判断していただければと思います。
どうかフィクションとして、そして一つの“現実の影”として、
物語をお楽しみください。
ではスタート!
コツ勉猫:「うーん、どれも値段が高い……。物価高、困りますわ……。今日のメニューは……」
スーパーの棚を見つめるコツ勉猫の白衣の下で、傷痕のように疼いきはじめた。
魚屋:「コツ勉猫さん! 今日はアジが安いよ! 美人さんに買ってもらえれば、アジもうれしいってよ!」
コツ勉猫:「またそう言って! お世辞にはのりませんからね……じゃあ、2つもらいます」
魚屋:「まいどありー!」
そんな日常の喧騒の中、聞き覚えのないはずの声が、彼女の鼓動を打ち抜いた。
(……クルミ)
(クルミ、でしょ……?)
コツ勉猫は走り出した。
買い物袋を抱えたまま、人混みを裂くように。
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モチタ:「なんで今日も牛丼なの!!!」
モチクロ:「また!!!! 地獄の始まり??」
モチオ:「知らんがな……」
がり勉猫:「コツ勉猫、どうしたんでしょうか……。実験に行き詰まっているのでしょうか……」
がり勉猫は不安げに2階を見つめる。
モチタ:「絶対モチオのせいだ!! 謝って!!」
モチクロ:「そうだよ!! モチオ何かしたんでしょ! 謝ってきて!!」
モチオは思い当たることが多すぎて、黙り込んだ。
モチオ:「知らんわ―――!!!」
逆ギレしたものの、押し切られたモチオはコツ勉猫の部屋へ向かう。
モチオ:「おーーーい、コツ勉猫さんーーー。いますか? いや、いるな……」
だが、返事はない。
モチオ:「そうかいそうかい!! そんなに怒ってるのか! なんだ、お前のコスプレに俺の顔写真のワッペン付けたことか?それより、お前の白衣に『喧嘩上等』って刺繍を入れたことか? そこまで怒ることなかろう……」
部屋の中から、漏れ聞こえてくる声があった。
コツ勉猫:「ええ! そうなの! あ、本当だ!! もう、馬鹿!!! 向こう行け!!」
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がり勉猫:「さらに怒らせたと……」
ネコロボ:「墓穴を掘りましたね……」
しかし、この牛丼地獄は解消しなければならない。
モチクロ:「がり勉猫、行って確かめて……」
モチタ:「お願いだよ、マジで牛丼死ぬ……」
がり勉猫は、コツ勉猫の部屋の前へ立ち、ドア越しに語りかける。
がり勉猫:「コツ勉猫、実験に行き詰まることはよくあることです……。だが、お腹が空いては思考が止まります。夕食、置いておきますよ……」
がり勉猫がドアの前に牛丼を置いたとき、聞こえてきたのは、怒声ではなく、凍てつくような「シクシク」という泣き声だった。
がり勉猫:「……コツ勉猫? 泣いてるんですか……?」
返事はない。ただ、すすり泣く声だけが続く。
がり勉猫はドアに手を添え、声を震わせながら呼びかける。
がり勉猫:「コツ勉猫……開けてください。何があったんですか……?」
そのとき――
コツ勉猫:「……タツキお兄ちゃん……」
がり勉猫は息を呑む。
コツ勉猫が自分を“名前で、お兄ちゃん”と呼ぶことなど、今まで一度もなかった。
がり勉猫:「……クルミ……? 開けてください。お願いします」
コツ勉猫:「お兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃん……。私……」
がり勉猫の中で、強烈なデジャヴが起こる。
あの時と同じだ。何もできず、ただシクシクと泣いている少女の声を聞くことしかできなかった、あの日の記憶。
がり勉猫:「クルミ! お願いだから! お願いだから開けてください!!」
しかし、返事はない。
ただ、扉の向こうで震える気配だけが伝わってくる。
がり勉猫:「クルミ、お兄ちゃんがついてる。だから、もう安心して。お兄ちゃん、ずっとここにいるから」
がり勉猫はそう言って、コツ勉猫の部屋の前に力なく座り込んだ。
廊下の電気は切れかけていた。
ジジッ、ジジッ……という不快な音を立てて。
がり勉猫は、ただチカチカと消えそうなその灯を、ずっと見上げていた。




