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第106話 第21章 偽装結婚 4 偽装新婚旅行

ネコロボ!!!!


ヘリを降りたモチオは叫んだ。


ネコロボ「モチオさん! はい! チケット!! です!!」


モチオはバトンを受け取るリレー選手のようにチケットを奪い取り、ゲートへ向かってダッシュした。


医者「モチオさん、1時間が限界です! 1時間で戻りますよ!」


モチオ「了解!!!! ニャ!!」


モチタの声が響く。「モチオ、ここ!!!」


最前列を確保していたのはモチタだ。


看護師二人が練習通りカオルを抱き抱え、医者が点滴を持ち、モチオが医療装置を抱えて小舟に乗り込む。


ゆらゆらと揺れる小さな世界。


モチオ「カオル、どうだ……」


カオル「たの……しい」


モチオ「そっか。楽しいニャ」



モチオは再びダッシュする。


今度はモチクロが叫んだ。


「モチオ、こっち! こっち!!」


複雑な通路をベッドごと突っ込もうとするが、くねくねして進めない。


そこへキャストが駆け寄り、そっと告げる。

「近道、こちらです」


モチオは無言で頭を下げ、モチクロの元へ。


モチオ「ほら、あいつらもネコだから変装で帽子を被ってるんだニャ」


カオル「フフフ、本当だ……」


ついに順番が来た。


カオル「初めて見た……ネズミさん」


ネズミさん「こんにちは、ネズミだよ」


ネズミさんはカオルを優しくハグし、握手を交わす。


カメラスマイルで写真を一枚。


モチオ「バレてないみたいだニャ」


カオル「よかったニャ」


モチオ「さあ次ニャ!!!」



医者「もうこれ以上は! 移動時間を考えたら限界です!!」


看護師「モチオさん、もう戻らないと!!」


モチオ「ニャーーー! あと一つ! あと一つだけニャ!! 分かった! 帰る!!」


くそーーーーーーーーーー!!!! モチオは叫んだ!!


ルートを変え、出口へ向かって猛ダッシュする一行。


そこには、女ネズミさんの姿があった。


モチオ「奇跡ニャ! カオル! 女ネズミさんがわざわざ迎えに来てくれたニャ!」


カオルは女ネズミさん、さらにはアヒルさんにも会うことができた。


カオル「女ネズミさんも、アヒルさんにも会えた……」


モチオ「……全部、俺らの餌だけどニャ」


カオル「フフフ」



写真を撮り終え、出口へ。


モチタとモチクロがお土産をリレー方式で次々と手渡す。


モチタ「はい! モチオ! これ!!」

モチクロ「がんばれ!モチオ!!」


モチオ「おうよ!!!」


モチオ「あとは二匹でゆっくり楽しめ! バイト代は帰ってから渡すニャ!!」


後ろを振り返らず、手を振りながらモチオはヘリへと走り抜けた。


その凄まじい殺気と必死さに、周囲の客はモーゼの十戒のように道を譲っていった。




モチオ「……ネコロボ……あとは、頼むニャ……」


出口のゲートを越えた瞬間、モチオは糸が切れたように倒れ込んだ。


そのバトンを受け取ったネコロボは、一秒の猶予もなく医師と看護師を急かし、カオルを乗せたドクターヘリは病院へと全速力で飛び立った。


6時間後。


「モチオさん? モチオさん、起きてください」


目を覚ますと、モチオはいつの間にか事務所のソファにいた。


モチオ「あ! カオルは!? カオルはどうなったニャ!!」


がり勉猫「大丈夫ですよ。ギリギリ、セーフだったようです。カオルちゃん、本当に喜んでいたそうですよ。今はご両親が付き添っているので、安心してください」


モチオ「そっか……。よかった、安心したニャ……」


コツ勉猫「無理もないですわ、モチオさん ここ2,3日 一睡もしてないんですもん。」


ネコロボ、モチクロ、モチタも、疲れ切った顔をしながらも安堵の表情を浮かべていた。


モチオ「……急に腹が減ってきたニャ。朝から何も食ってない」


台所では、コツ勉猫がモチオの大好物、野菜ゴロゴロカレーを山盛りで用意していた。



翌日。


病室を訪ねると、そこにはカオルの姿があった。看護師が検診をしている最中だった。


看護師「カオルちゃん、このウエディング風に飾ったベッドがすっかり気に入っちゃって。どうしても外させてくれないのよ」


モチオ「……フン。まるで、ワガママな王女様だニャ」


カオルは、弱々しく、けれどとても優しく笑っていた。



しばらく、そんな穏やかな日が続いた。


人形を動かす力さえなくなったカオルの代わりに、モチオが一人で人形劇を演じる。


モチオ「なあ、カオル。次はマイホーム探しニャ」


カオル「……?」


モチオ「みんなで住むんだ。お父さんとお母さんと、俺と、カオル。みんなが一緒にいられる大きな家だニャ」


カオルは、静かに、優しく頷いた。


モチオ「次の休みはピクニックだ。また医者にいつがいいか、俺がガツンと聞いておいてやるからニャ」


しかし、流れる時間は、モチオが注ぐ優しさと反比例するように加速していく。



カオルには、もう二度と、外出の許可が出ることはなかった。


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