第105話 第21章 偽装結婚 3 偽装結婚
モチオは蝶ネクタイだけを締めていた。
モチオ「結納だ。こういうのはきっちりしないとダメニャ! たしか……あ、これだ」
テーブルには、茶封筒と売店で買ったスルメが置かれた。
カオル「結納? ってなに?」
モチオ「結婚しますのご挨拶ニャ。これが礼儀ニャ。……さあ、食事を一緒にするニャ」
正装した両親が入ってくる。
モチオ「お父様、お母様。モチオとカオルは結婚しますニャ。……これが結納金の300万(相当)ニャ」
差し出された茶封筒。中を覗いた両親の目に、カオルが描いた絵が何枚も重ねられているのが映った。
食事は、みんなでゼリー。
モチオ「カオル、食えるか?」
カオル「うん……少し……なら……」
モチオはカオルの口に、一口ずつ、宝物を運ぶようにゼリーを入れる。
モチオ「おいカオル! ご両親に挨拶タイムだ。『お世話になりました』だニャ! 一応そういう決まりニャ。俺は席を外す、やっとけよ!」
カオル「ふふふ……」
力ない、けれど幸せそうな笑い声。
両親も、涙を堪えて笑っている。
モチオはナースステーションへ爆走した!
モチオ「医者を呼べ! 明日は結婚式だ、外出許可を出せ! 出なくても外出する! そう伝えろ! 一択だ! 一択!!!」
必死に説得する看護師。首を横に振る医師。だが、その熱量に現場が動き出す。
ケイスケのもとへ走る!
モチオ「ケイスケ! 明日はプロの初仕事だ! パイプオルガン弾け! 明日は俺の結婚式だ、お前が演奏しろ! 許可? 俺が許可する!!!」」
次は事務所へ
モチオ「モチタ! モチクロ! バイトの時間だニャ!
一分一秒が、モチオの肺を焼く。
モチオは誓う
カオルに死神が迎えに来るのなら
死神よりも早い速度で逃げ切ってやる!
三途の川を渡るなら、
そんな川 飛び越えてやる!
真夜中まで続く会議
モチオ「こういうルートが最短か? ネコロボ!」
モチオ「モチタとモチクロはこことここだ、 そして ダッシュだ!」
モチオ「看護師1 看護師2 お前とお前はこうだ!そして俺はこう」
モチオ「がり勉猫! 準備は? 金? 知るか!!!」
モチオは一睡もしていなかった。
結婚式当日。
医師と看護師の厳戒態勢の中、父親がカオルのベッドを引き、バージンロードを進む。
ベッドそのものが、コツ勉猫の徹夜の刺繍で飾られ、巨大なウェディングドレスのようになっていた。
誓いの言葉の後、指輪交換……ならぬ、首輪交換。
モチオ「ネコの結婚はこうニャ」
カオル「ふふふ……ありが……と」
誓いのキス。
モチオ「ええええええええ!!!」
モチオには想定外だった。
カオルは笑っている。
会場のざわつきの中…
代わりにシスターがモチオの頬にキスをする。
モチオ「うげーーー最悪ニャ!!」
シスター「なんですって!!!!」
観衆は、笑いながら泣いていた。カオルも、最高に笑っていた。
花びらが2人を祝福する中、
がり勉猫が教会のドアを開ける。
「モチオさん! 準備できました!」
モチオ「おうよ! カオル、これから新婚旅行だニャ。さあ行くぞ」
ドクターヘリに乗り込む一行。
カオル「モチオ……私、どこに行くの?」
モチオ「もちろん、ネズミの遊園地だニャ!」
モチオは自分とかみの毛のないカオルにニット帽を深く被せる。
モチオ「ネコは変装しないと入れないからニャ」
カオル「だね……」
ヘリは空高く舞い上がった。
三途の川を超える高さで。死神さえも追いつけない速さで。




