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第104話 第21章 偽装結婚  2 偽装婚約

モチオは子供の人形を3匹連れてきた。


カオルは猫耳をつけてはしゃぐ。

「かわいい……これ、かわいいニャ」


モチオ「そうだろう。やっぱり家族には子供がいるニャ。こいつは小学生、こいつは幼稚園、こいつは赤ちゃんだニャ」


カオル「ありがとう! あなた!」


カオル人形が、モチオ人形にお礼を言う。


モチオ「おうよ」




その翌日


モチオは今度は、人形用の大きな家を持ってきた。


モチオ「おい、カオル猫。そろそろ我が家も手狭ニャ。お引越しニャ! 念願のマイホームだニャ!」


カオル人形「うれしいニャ」


子供人形「わーい!」


モチオ人形「ふん、これぞ日本の父ニャ! ローン40年ニャ! ……おっと、会社に行ってくるニャ」


カオル人形「いってらっしゃーい!」


「会社に行く」という言葉は、モチオがトイレや用事で席を外す時の合図だ。


カオルもそれを分かっている。


そして「お別れ」の時は、必ずこうだ。


モチオ人形「お、出張に行ってくるニャ。泊まりニャ。着替えを用意してほしいニャ」


カオル人形「はい、これね。いってらっしゃーーい」



廊下でモチオは、カオルの両親とすれ違う。


二人の目は真っ赤に腫れ上がっていた。


モチオ「そんなつらでカオルに会うな。顔ぐらい洗ってこい」


モチオはすぐ病室に戻り、扉を開ける。


モチオ人形「おう、忘れ物ニャ。パンツが入ってなかったニャ」


カオル人形「もう、おっちょこちょいなんだから……」


モチオは両親が落ち着いたのを確認して、再び告げる。


モチオ人形「すまんすまん。では、今度こそ行ってくるニャ」



翌日。


カオル「ねえモチオ。お父さんとお母さんの様子が変なの……」


モチオはとぼけた。「そうか?」


カオル「うん。もしかして……」


モチオ「よし、俺は相談所の社長だぞ。調査してやるニャ! おい、依頼金をよこせ」


カオル「はい」


プラスチックのおもちゃのお金が渡される。


モチオ「よし! 調査結果は明日ニャ。……そうだ、マイカーを買ってきたぞ。家族でピクニックだ! どこに行きたい?」


モチオは人形用の車を見せた。


カオル「ネズミの遊園地!」


モチオ「あそこはネコ立ち入り禁止ニャ! ……でもまあいい。変装していくか!」


カオル「うん!!!」


モチオ、カオル、そして人形たちは、みんなでニット帽をかぶって「ネズミの遊園地」に行く遊びを始めた。


モチオ人形「あそこのネズミ、狙うニャ!」


カオル人形「だめニャ、ここは遊園地ニャ!」



今日も廊下で両親とすれ違う。


モチオ「おい。カオルがお前らの様子が変だと言ってる。お前ら、俺の仕事の邪魔をしてるのか?」


父親「すみません……」


モチオ「調査すると約束した。なんて答えればいい?」


黙り込む両親。


モチオ「ふん。適当に言っておく。話は合わせとけよ」


次の日


モチオ「調査結果が出たぞニャ」


カオル「何? 何?」


モチオは人形を2体用意した。


モチオ人形「どうもお父さんとお母さんは同居したいらしい。つまり、ずっと一緒に住みたいらしいニャ」


カオル人形「いいよ!! で、これがパパとママね!」


モチオ人形「そうだ。でも、なかなか言い出せなくて困ってるらしいニャ」


カオル人形「なんだ、そんなことかー。なら言えばいいのに!」


モチオ人形「……フン、両親と同居なんて最悪だぞ!! 苦労するぞ!!」


カオル人形「???? 一緒がいい!!!」


モチオ人形「そっか。じゃあ俺が出張中の時、両親と話せ。家のことは任せたニャ」



そんな日々が続く。


だが、カオルの体は確実に衰弱していった。


もはや、人形を操る元気さえ残っていない。


カオル「ねえ、モチオ……。私、結婚してみたいな……きれいなドレス、着たいんだ」


モチオ「……人形にか?」


カオル「違うよ。本物」


モチオ「相手がいないからな、まず」


カオル「……モチオがいい」


モチオ「お前も珍しいな。俺があの遊び場に行ったら『帰れコール』だぞ。ギャン泣きする子だっている。カオルはまあ、男を見る目があるニャ」


カオル「だって、モチオ……ずっと一緒にいて……くれるもん」


モチオ「退院したら、お別れだニャ」


カオル「退院……なんて、できるのかな……。退院したら、また一人だし……」


モチオは弾かれたように立ち上がった。


モチオ「じゃあ、結婚すればいい! 結婚式を挙げればいいニャ!!」


モチオはナースステーションへ爆走した。


モチオ「おい!! 俺は今からカオルと婚約する。誰か指輪をよこせ!!」


看護師たちは一瞬でその意図を察し、身の回りのものを必死に探した。


看護師1「あ、これ! もう使わないし高くないから! これ使って!!」


看護師2「指にはつけられないから、これで手首に軽くね!」


指輪を髪ゴムで結んだ特製のリングが、モチオの手に託された。


モチオはカオルの病室に戻り、その細い手首に、壊れ物を扱うように優しくかけた。


モチオ「これからも一緒だ、カオル……。これ、婚約指輪だニャ」


カオル「きれーー……。私の? これ、本当に私の……?」


モチオ「そうだ!!!」


その日の交代時。


廊下で両親とすれ違う。


モチオ「おい、父親、母親。明日は正装して来い。必ずだ! 分かったな!!」


理由も分からぬまま、両親はただ深く頷いた。


モチオは中古のウェディングドレスを抱え、事務所へダッシュした。


暗い実験室で、何も手につかず呆然としていたがり勉猫とコツ勉猫。


モチオ「何をぼーっとしてる!! 結婚式は二日後だ! おいコツ勉猫、このドレスをカオルサイズに直せ! 徹夜でやれ!! あとそこの落ち込み眼鏡! あのババアの教会をすぐ押さえろ! メンバーも全員招集だ! 必須だニャ!!」


モチオはそれだけ言い放つと、嵐のようにまたどこかへ走り去った。

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